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ジャパン・ブリーフ

【ジャパン・ブリーフ】11.7兆円規模の緊急総合対策  
【ジャパン・ブリーフ / FPCJ,No. 0858】

2008年9月1日


◎政府、国民の安心と経済成長強化を目指し11.7兆円規模の緊急総合対策を発表

高まるインフレと需要の不振に伴い景気が減速の兆しを見せるなか、政府は8月29日、事業規模11.7兆円の景気刺激策を発表した。低迷する福田内閣の支持率を好転させる政治的なねらいもある。しかし、原油など物価上昇の打撃を受けている業界や消費者を救済する“応急措置”主体の対策は、一年以内にいつあるかもしれない総選挙における票目当てで、経済を長期にわたり強化する効果には乏しいという批判が強い。

「安心実現のための緊急総合対策」と呼ばれる今回の総合経済対策は、生活者の不安解消、持続可能な社会への改革、成長力強化を目標としている。中小企業の信用保証の拡大、高速道路料金の引き下げ、太陽光発電設備の導入支援、公立学校施設の耐震化、高齢者の健康保険料引き下げ、住宅ローン減税などが含まれている。事業規模11.7兆円のうち、財政支出は2兆円で、補正予算などで賄うことにしている。

福田内閣の支持率も低迷するなか、連立与党は総選挙を念頭に、原材料や食品など物価上昇に苦しむ企業や消費者の当面の痛みを和らげる施策を打ち出すことに焦点を当てた。しかし、規制緩和など経済を強化する根本的、構造的問題への対応は不十分だと批判されている。それだけでなく、小泉政権以来の自民党の政策の表看板となってきた、財政の均衡回復を目指す歳出抑制路線も脅かされている。

こうした「ばらまき」政策のさらなる表れが、今年度内に実施されることになった定額減税である。これは連立与党である公明党が自民党の強い反対を押し切った結果、実現することになったもので、実施時期や規模など詳細は未定だが、所得額に関係なく一定の減税となるため、低所得者にとって恩恵が大きいとされている。しかし、歳出がそれだけ減る一方、景気刺激効果はあまり見込めないといわれている。減税のための財源をどこに求めるかも決まっていない。

結局、高まる歳出圧力や定額減税は、国債の追加発行を不可避にする可能性がある。福田康夫首相は、国債の追加発行を嫌っている。2011年度までに“基礎収支”を均衡させる目標に向けこの数年間維持してきた財政規律の原則が崩れることがはっきりするからだ。

◆新聞論調
各紙の社説はいずれも「ばらまき」政策に対する懸念を表明し、特に定額減税には一致して反対した(いずれも8月30日付。毎日のみ同31日付。)

【総合経済対策 国民の安心につながるか】(読売新聞)
「所得税・住民税の定額減税について、今年度中の実施を決めたのはいただけない。定額減税は、所得金額にかかわらず税金を一律に軽減する、典型的なばらまき型の減税だ」、「増大する社会保障費を支える安定財源のメドも立たない中で、国債増発による安易な減税を行うようでは、国民はかえって安心できないのではないか。定額減税は取りやめるべきである」。

【定額減税 ばらまきに踏み出すのか】(朝日新聞)
「いま日本の財政は、先進国で最悪の状態にある。年金や医療、介護、教育、政府の途上国援助などにもっと予算が必要だと指摘されながら、十分に手当てできずにいる。それは、バブル崩壊後の10年間に歴代政権が実施した合計130兆円規模の経済対策で、国債を財源に減税や公共事業をばらまいてきたことが原因だ」、「低所得層への手助けは考えるべきだが、それを定額減税のような手法で行う余裕は、いまはない」。

【定額減税 人気取り策に惑わされるな】(毎日新聞)
「緊急対策は生活者の不安解消、持続可能社会への変革加速、新価格体系への移行と成長力強化の三つの目標のもと、総花的な施策を集め、事業規模を11兆5000億円まで膨らました。これぞばらまきである。加えて、税制の抜本改正にそぐわない定額減税だ。こうした人気取りの手法に惑わされてはならない」。

【目先の負担軽減を優先した経済対策】(日本経済新聞)
「今回の対策は全体として一時的な負担の軽減による痛み止めの色彩が濃い内容となった。構造改革や体質改善を促す長期的な効果が期待できるものとは言えず、近づく総選挙への対応が優先されたように見える」、「持続可能な年金の姿を示すなど将来への不安を解消していく改革が求められる。規制改革などにより成長力を高める環境を整備し、日本経済を強じんな体質にしていくことも重要である」。

【予算編成 財政再建頓挫させるのか】(産経新聞)
「総合経済対策はそもそも高止まりするであろう原油など原材料の新価格体系に経済社会を適合させる構造転換策であるはずだった。しかし、盛られたメニューが目的に沿ったとは言いがたい。燃料費負担軽減を理由とした運送業支援や中小企業向け信用保証制度の拡充は一時しのぎどころか、モラルハザードを招く懸念がある。さらに経済対策とはほど遠い学校耐震化なども含まれ、事業規模は約11兆円に膨らんだ。とりわけ問題なのは公明党が強く求めた所得・住民税定額減税の年度内実施だ」、「首相は選挙ではなく日本のために財政規律を徹底してほしい」。

(了)
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