【ジャパン・ブリーフ / FPCJ,No.0772】 2007年10月4日
◎6者協議で「次の段階」のロードマップ定まる
北朝鮮の核問題をめぐる6者協議で、10月3日夜、議長の武大偉中国外務次官は、北朝鮮の非核化に向けた「次の段階」(第2段階)の具体的な内容を定めた合意文書を発表した。9月27日から30日まで北京で開かれた6者協議では、北朝鮮の核の完全廃棄へ向けた「次の段階」の措置を履行するための具体的行程表(ロードマップ)を確定することが最大の焦点だった。その後、各国首席代表は本国の承認を得るため、合意文書をいったん本国へ持ち帰り、2日間の休会後に正式な文書を発表することで一致していた。
◆曖昧な点も残す合意 今回の合意文書の骨子には(1)北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の原子炉など3核施設を年内に無能力化。米国は当初資金を提供し、2週間以内に専門家を派遣、(2)北朝鮮はすべての核計画を年内に申告、(3)北朝鮮は核物資や核技術を移転しないことを再確認、(4)米国は北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除する作業を開始。北朝鮮の行動と並行して約束を履行、(5)日朝は国交正常化に向けて誠実に努力、(6)北朝鮮に重油100万トン(供給済みの10万トンを含む)相当を支援、等が含まれた。これで年内の北朝鮮核施設の無能力化とすべての核施設の申告を行うとするロードマップが示されたことになる。
一方、申告対象となる核計画では核兵器や抽出済みプルトニウム、ウラン濃縮への言及はなく、「すべての核計画の完全かつ正確な申告」という表現にとどまった。また、これらの見返りとして北朝鮮が求めているテロ支援国家指定と対敵国通商法の制裁解除については時期を具体的に示さないままになった。
町村信孝官房長官は3日夜、6者協議の合意文書を「最終的に評価できるものになった。北朝鮮が年末までにすべての核計画を申告することになった」と評価した。高村正彦外相も同日夜、「途中経過よりいい結果になった。ただ、北朝鮮が約束どおりやってもらうことが大切だ」と述べた。日本の対北朝鮮経済制裁については、「解除の動きはすぐには出ない。北朝鮮の行動を見ないといけない」と当分日本政府の方針を継続する考えを改めて強調した。
◆各紙論調――「一歩前進」と「多くの問題」に分かれる 合意文書の正式発表前後、日本の主要各紙社説はそれぞれ異なった論調を掲載した。合意文書が発表される前の10月1日付日本経済新聞は、「北朝鮮になお『対話と圧力』を」との見出しで「日本は、拉致問題の進展なしに(テロ支援国家指定を)解除しないよう米国に働き掛けている。佐々江(賢一郎外務省アジア大洋州)局長は今回の協議で、北朝鮮と拉致問題に関し『真剣に話し合っていくことについて基本的了解があったと思う』と述べた。福田康夫首相は『対話』の必要性に言及しているが、北朝鮮を本気で動かすには『圧力』が必要な場合もあろう。その意味で、日本政府が30日、北朝鮮船舶の入港全面禁止や全品目輸入禁止など10月中旬で期限が切れる北朝鮮に対する日本独自の経済制裁措置について半年間再延長する方針を固めたことは適切な対応だ。町村信孝官房長官が『拉致問題に何ら進展がなく、(制裁を)やめるとか緩和するとの結論を出す客観情勢にはない』と表明したことに、北朝鮮は応えなければならない」と主張した。
1日付産経新聞は、「曖昧な合意では禍根残す」との見出しで「福田康夫首相は北朝鮮との対話を重視する姿勢だが、北とは圧力なくして対話も生まれない。……今月期限がくる日本の対北独自制裁の延長は当然だ。拉致問題には時間がない。制裁強化の必要性すら出てこよう」と強調した。
2日付毎日新聞は、「核『無能力化』で妥協するな」との見出しで「無能力化と完全申告の年内実施がうたわれたのは前進と言っていい」と評価しつつ、「最終的には関係する全施設を無能力化すべきだ。……要は、中途半端な無能力化で妥協しないことである。核計画の全容報告も同様だ。高濃縮ウランによる核開発は存在しないと北朝鮮が主張するなら、疑惑が残らないような措置を考えるべきだ。将来に禍根を残してはならない」と指摘した。
4日付朝日新聞は、「核廃棄へ一歩進んだ」との見出しで無能力化の対象施設は「すでに停止・封印されているものだが、それを再び動かせないようにするのは、核放棄に向けた重要な一歩である」、 「今の段階における必要最小限の合意はできたのではないか。核兵器をつくる材料がこれ以上増えるのを止めることができるからだ。 6者協議の今年2月の合意に基づき、稼働停止など最初の措置は終えた」、「一挙に完全を求めるよりも、まず現実の緊急性を優先させたということだろう。今回の合意を約束通りに実行することが大切だ」とおおむね評価した。他方、テロ支援国家の指定解除を米国に強く求めている北朝鮮が今回の合意で、「具体的な期日は明記されていないが、北朝鮮は年内解除が確認されたとしている。新たな火種になりかねない」と危惧も示した。「この問題は拉致問題を抱える日本にも影響する。米国は日本と緊密に協議しながら進めてもらいたい」、「拉致問題の解決を含め、日朝の国交正常化を進められるよう、より具体的な協議に入る必要もある」と主張した。
4日付読売新聞は「日本にとって多くの問題が残る」との見出しで「北朝鮮の完全な核廃棄を求める日本にとって、問題も、不満も多い合意である」、「この合意を北朝鮮に実行させるための担保が明確ではない。この合意自体に、あいまいな点が多い」と論評。「申告内容を検証する仕組みが明記されていないのも、極めて不安な材料だ。北朝鮮の『申告』に、抜け道や漏れを許せば、完全な核廃棄という目標を達成することはできない」と指摘。一方、「日本としては、拉致問題の解決へ北朝鮮が具体的行動を取らない現状では、指定解除に引き続き反対するしかない。厳格に対応すべきだ」と論じ、さらに核兵器やプルトニウムなどの完全廃棄という最終段階に至るまでの間、「日本にとって、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に直接さらされ続ける安全保障環境に変化はない。輸入禁止や船舶入港禁止など、独自制裁を継続するのは当然である」と主張した。
(了) |
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