【ジャパン・ブリーフ FPCJ / No.0980】 2010年1月5日
◎政府、2020年度までに年平均3%の名目成長率めざす
日本政府は2020年度までに年平均で名目3%、実質2%を上回る経済成長率を目指すとする新成長戦略の基本方針を昨年12月30日発表した。基本方針はこの目標の達成に向け、(1)環境・エネルギー、(2)健康、(3)アジア、(4)観光・地域活性化、(5)科学・技術、(6)雇用・人材の6つを戦略分野とした。
この成長戦略が実現すれば、日本の名目GDPは650兆円(今年度推定473兆円)に拡大する。物価変動を調整した実質成長率を重視するのが過去の通例だったが、新成長戦略が名目成長率を重視していることは、日銀が2011年まで続くとしているデフレに対する政府の危機感を表わしている。
6つの戦略分野のなかでも特に重視しているのはまず環境・エネルギー分野で、太陽光発電など再生可能エネルギーの利用促進を中心に、50兆円超の新規需要と140万人の雇用を生み出す。健康分野では医療サービス、介護、健康関連産業の振興で約45兆円の需要と280万人の雇用創出を見込んでいる。観光では訪日外国人を現在の3倍の年間2500万人に増やし、56万人の新規雇用につなげる。
アジア市場戦略については、鳩山由紀夫総理は成長戦略発表後の記者会見で、日本が2020年までにアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築を目指し、アジアの急速な経済成長を活用するために必要な国内改革を促進する方針を明らかにした。
新成長戦略により、現在5%台の高水準にある失業率を中期的(向こう4年間)に3%台に低下させる。
主要紙報道によれば、政府が新成長戦略の基本方針を急遽年末に発表したのは、鳩山政権には日本経済を長期的な成長軌道にしっかり乗せる政策が欠如しているという批判が高まっていることに応える必要を認識したためである。鳩山総理とともに新成長戦略を発表した菅直人副総理兼国家戦略室担当相は、「鳩山内閣が反転攻勢するという意味だ。(新年から)先手、先手を打っていく」と語った(12月31日付朝日新聞)。
鳩山総理は成長戦略の発表にあたり、「経済のために人間が動かされるのではなく、人間のための経済でなければならない。供給サイドに偏っていた考えを改め、需要をしっかり創出していく」と語り、供給側(企業など)ではなく需要側(消費者など)をより重視する政策に転換することを明確にした(12月31日付朝日新聞)。鳩山総理は、自身の政権の政策は公共事業や財政資金への依存(第一の道)でも、過剰な市場原理主義(第二の道)でもない、新需要の創造という「第三の道」であると表現した。鳩山総理は会見で、「計画をいくら作っても実行力が無ければ絵に描いた餅である。何としてもやりきる」と語った。
新成長戦略の目標は野心的であるものの、それを達成する具体策は先送りされた格好となっており、政府は具体的な「工程表」の策定は6月までに行うとしている。
◆主要紙論調
12月31日付の日本経済新聞は、今回発表された基本方針について、消費者や家計に配分できる利益と富を創出できるのは企業であるという視点を欠いていると指摘。同日付社説でも、鳩山内閣が中長期的な経済戦略を初めて示し、重点分野と目標を明示したことには一定の評価をしながらも、「持続的な成長と雇用創出の原動力となるのは民間の投資である。来年6月に正式な『工程表』を示すというが、それまでに予算や税制、規制改革といった政策の肉付けを徹底し、民間の投資を導き出す環境を整えなければならない」と論じた。
他の新聞は日本経済を苦しめているデフレ解消の戦いが不十分であることを問題にした。
読売新聞12月31日の社説は「目標実現の具体策が見えない」と題し、「景気の底割れを防ぎ、デフレを解消しないと、どんな立派な成長戦略も絵に描いたモチになる」と主張、さらに「政府は来年度予算の公共事業を前年度より2割近く減らし、小中学校の耐震化など急ぐべき事業も削った。これらを復活して、景気回復に役立てるべきだ」と付け加えた。
産経新聞も同日の社説で「肝心のデフレ脱却の目標もない」と新成長戦略を批判、「デフレ脱却目標を設定しなければ中長期の成長戦略の意味がない」と論じ、「成長戦略が『生活者重視』という需要サイドだけを掲げ、企業支援を軽視している点も問題だ」と指摘した。 (了)
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※ジャパン・ブリーフは、(財)フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており政府やその他の団体の見解を示すものではありません。
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