【ジャパン・ブリーフ/FPCJ, No. 0930】 2009年6月5日
◎GM破産手続き 日本の自動車業界も深刻に受け止める
ゼネラル・モーターズ(GM)が6月2日、米連邦破産法による破綻手続きを申請したことは、日本人にとっても深刻な状況にある日本および世界の自動車業界の今後について深く考えさせるニュースとなった。世界に冠たる競争力を持つ日本の自動車メーカーも苦境を免れないからである。もっとも、長らくアメリカの産業と経済の力の象徴だったGMの終わりによって、日本の関連業界が直ちに重大な打撃を受けるというわけではない。
GMと資本関係にある日本の自動車メーカーはトヨタ自動車、いすゞ自動車、スズキの3社だが、いずれもそうした関係を絶つ意思はないとしている。トヨタの渡辺捷昭社長は6月1日、東京で記者団に、1984年からカリフォルニアで運営しているGMとの合弁会社NUMMI は「しっかり続ける方針である」と述べた。
新生GMが大きく規模を縮小する結果、より直接的な影響を受けそうなのはGMに部品を供給している日本の部品メーカー133社。このうち102社はGMを主たる顧客としており、これら企業にはGMとの取引がストップすると、数億円規模のビジネスを失うところも出てくる可能性がある(日本経済新聞による)。さらに、GM破たんの波及効果で同社に部品を供給しているアメリカのメーカーが倒産すると、それらメーカーから部品を購入していた日本の自動車メーカーも影響を受けそうだといわれる。
しかしより大きな懸念は、世界経済危機で需要の壊滅的な落ち込みに苦しんでいる、世界の自動車業界全体の状況である。生産、雇用などでみた再生GMの事業規模は以前の6割程度に縮小するが、これは世界の自動車産業の現状にほぼ対応するものである。2009年の新車販売台数は5040万台に落ち込む見込みである一方、生産能力は8760万台で、40%近い過剰生産能力が存在する。
日本の自動車業界もこうした状況から免れない。例えばトヨタの年産能力は900万台を突破したが、2009年度(2010年3月まで)の販売台数は650万台と予想されている。間もなくトヨタの社長に就任する豊田章男副社長は「2、3年後にはトヨタだってGMになる恐れはある」と警告している(日本経済新聞)。
こうした状況を生き抜くために、各社とも縮小する需要に見合った生産規模でも利益を上げることのできる体制を目指そうとしている。先進国、特にアメリカ市場への大きな依存を改めることが大きな課題である一方、途上国市場ではインド、中国など新興国のメーカーによる挑戦があり、何事も当然視することはできないと言われる。縮小する市場をめぐり競争が激化する中で、もうひとつの焦点は環境にやさしい車、ハイブリッド車、電気自動車などの開発である。
◆短時日での競争力回復には懐疑的
日本のメディアは、GMが連邦破産法11条の適用を申請したことに安堵の気持ちを表したが、実質的に国有化された新生GMが短時日のうちに消費者に受け入れられる競争力のある車を作り出せるかどうかには懐疑的な見方が多い。さらに、オバマ政権がGM救済に巨額のコミットメントをした結果、同社の再生が計画通りにいかなかった場合の経済的、その他の帰結への懸念も見られる(抜粋はすべて6月2日付の社説から)。
朝日新聞 「世界市場が縮む中で、米政府のてこ入れが保護主義を招くような事態は防がなければならない」、「政府主導で事業の縮小均衡はできても、収益性をよみがえらせる事業再生までは困難だ」、「燃費のいい小型車やハイブリッド車、電気自動車などの新製品をいかに開発し、効率的につくるか。その鍵を握るのは、経営陣と働く人々の意識変革だ」。
毎日新聞 「GM破綻の究極的な原因は、魅力のある車をつくることができなかったところにあるわけだが、この点には日本の自動車産業も留意してもらいたい。かつては多くの人が自動車に夢を感じていた。しかし、最近は若い人を中心に自動車への興味が薄れている。魅力ある車づくりへの感性の劣化がないか、自らの足元を見直すことも必要だ」。
日本経済新聞 「GMの破産法申請は、歴史的にみれば、70年代に始まったデトロイトの競争力喪失の終着点ともいえる」、「こうなった理由の一つは『強すぎる労組』だろう。全米自動車労組はグローバル競争の現実を直視せず、譲歩を拒み、退職者向け年金負担などレガシーコスト(負の遺産)は膨らんだ」、「労使一体でコスト削減する日本的慣行があれば、事態はここまで悪化しなかったに違いない」、「自動車会社の復活は『売れるクルマ』があってこそ可能になる。時代に対応した魅力的な新車の開発が、再建には欠かせない」。
産経新聞 「今後重要なのは裁判所の管理下から早期に抜け出して自ら利益を生み出す企業として再生できるかどうかだ。創業100年のGMの破綻は時代の変化に乗り遅れた経営の結果である。それは日米貿易摩擦が激しかった1980年代からすでに浮上していた課題だったはずだ。日本車の攻勢に対して米政府による対日圧力に頼り、『覇者のおごり』といわれた体質が染みついてはいなかったか」。
読売新聞 「大規模なリストラでGMをスリム化しても、速やかに再建できるかどうかは楽観できない。巨額の公的資金投入に対して、米国民の視線も厳しい。最大の問題は、エコカーなどの『売れる車』を開発し、競争力を回復することができるかどうかだ。世界各社との競争は激しい。北米での販売台数も急減している。新GMにはいばらの道だ」。 (了)
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