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ジャパン・ブリーフ

【ジャパン・ブリーフ】海賊対策、海上自衛隊をソマリア沖に派遣  
【ジャパン・ブリーフ FPCJ / No.0916】
2009年3月15日


◎海賊対策、海上自衛隊をソマリア沖に派遣

政府は3月13日の閣議で、ソマリア沖の海賊への当面の対処策として自衛隊法に基づく「海上警備行動」の発令を承認した。これを受け浜田靖一防衛相は同日、海上警備行動を発令し海上自衛隊の派遣を命じた。翌14日に海上自衛隊の呉基地(広島県呉市)から護衛艦「さざなみ」、「さみだれ」の2隻がソマリア沖に向けて出港した。また政府は13日の閣議で、海賊対策のための新法と位置付ける海賊対処法案を決定し国会に提出した。

麻生太郎首相は13日、海上自衛隊派遣に関する談話を発表し、ソマリア沖での海賊問題は「日本のみならず国際社会にとっての脅威であり、緊急に対応すべき課題だ」と強調した。さらに首相は、海上警備行動による自衛隊派遣が当面の応急措置であるとした上で、本格的な海賊対策の法的根拠となる海賊対処法案の成立に「全力を傾注する」と述べた。日本の主要紙報道によると、海上自衛隊派遣までには、次のような経緯があった。

◆国際協力による海賊対策

ソマリアを覆う無政府状態が深刻化するにつれ、ソマリア沖で海賊が民間船舶を襲撃する事件が急増している。外務、防衛両省などによると、昨年は111件の海賊事件が発生し、いまだに10隻以上が拘束されている。年間2000隻が通る日本関係船舶も3隻が被害にあった。この海域では現在、米国、英国、ロシア、中国など十数カ国と欧州連合(EU)が護衛艦や哨戒機を派遣し、海賊取締り策を強化している。

輸入原油のほぼ9割をペルシア湾岸の産油諸国に依存する日本にとって、ソマリア海域の安全航行は死活的な重要性をもっている。しかし国内法の制約などのため、主要先進8カ国(G8)のなかで日本だけが具体的な海賊対策に着手してこなかった。こうした状況下で政府は、現行法の枠内での海賊対策を探ってきた。マスコミ報道によれば、海上自衛隊派遣への主導役を演じたのは麻生首相だった。首相は昨年12月28日、浜田防衛相に現行法のもとでの海上自衛隊派遣の検討を命じた。朝日新聞(08年12月29日)は、「首相主導し防衛相説得」との見出しを添えた長文の解説記事を掲載した。

◆2段構えの海賊対策――海上警備行動から新法制定へ

関係当局による検討の結果、政府は現時点での海賊対策の法的根拠として自衛隊法82条による海上警備行動を発令することになった。海上警備行動はこれまで、99年3月の能登半島沖の不審船事件と、04年11月の中国潜水艦の領海侵犯事件と2度にわたって発令された。いずれも日本領海内の出来事であり、海上警備活動のために海上自衛隊が遠洋に派遣されたり、海賊対策目的で出動するのは初めてである。

自衛隊法による海上警備行動は、保護対象となる船舶を日本関係船に限り、武器使用については警告射撃や正当防衛、緊急避難の船体射撃は認めてはいるが、海賊行為制止を目的とする船体射撃は認められていない。それゆえ海上警備行動では、外国船は保護対象とならず、制止警告に従わない海賊船への船体射撃もできないことになる。

政府が国会に提出した新法案(海賊対処法案)は、◇「海賊罪」-海賊に無期か5年以上の懲役刑を課し、死亡させた場合には死刑か無期懲役に処する、◇「武器使用権限」-制止に従わない場合には、海賊船を止めるため武器を使用できる、◇「海賊対処行動」-防衛相が首相の承認を得て、自衛隊に対処行動を命令する、◇「国会の関与」-首相は対処行動の承認時と終了時に国会に報告する――などの諸点を骨子としている。

呉基地を出港した護衛艦2隻は4月上旬からソマリア沖で海上警備行動に入る予定である。その後、海賊対処法案の成立とともに、同法に基づく活動に切り替える。日本の海賊対策は、いわば2段構えの形をとって進められることになる。内閣府が3月14日に公表した「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」(今年1月実施)結果によると、回答者の63.2%が「海賊対処に自衛隊が取り組むべきだ」と答えている。

◆海上自衛隊派遣への主要紙論調

全国紙5紙のうち4紙が、海上自衛隊のソマリア沖派遣を社説で取り上げた。各紙論調は今回の海賊対策を原則的に前向き評価しつつも、長期的な対応策については異なった視点からの論調を提示している。

読売新聞社説(3月14日)は、「今回の派遣は、海自にとって新しい種類の海外任務であり、活動の場を広げる意義は大きい」と述べ、「自衛隊は近年、日本防衛だけでなく、様々な事態に適切に対処する能力が求められている。自衛隊という公共財を有効活用する時代だ。海自は、新任務を立派に遂行し、より強健で、国民に信頼される組織を目指してほしい」と論じる。

毎日新聞社説(3月14日)は、新法案の最大焦点が武器使用基準の緩和であると指摘し、「重要なのは、今回の緩和が自衛隊の海外活動全体の武器使用の無原則な拡大に結びつかないようにすることだ」と書く。さらに「もともと昨年の臨時国会で海賊対策の必要を主張したのは民主党議員だった。新法で与野党合意の素地はあるはずだ。知恵を尽くして有効な海賊対策を打ち立てるべきである」と主張する。

日本経済新聞社説(3月14日)は、「法案提出も、出港も、あまりに遅いが、海賊対処法案の成立は、危険な作業にあたる自衛官や海上保安官の心理的負担を軽減する。早期成立が望まれる」と書く。その一方で国会での法案審議とりわけ民主党の対応が焦点になると述べつつ「民主党内にはもともと安全保障政策をめぐる意見対立がある。小沢一郎代表の秘書逮捕をめぐる混乱もあり、賛成で一本化できる見通しはない」ことを危惧する。

産経新聞社説(3月15日)は、「自国の関連船舶や海上交通路(シーレーン)を海賊から守るという国家として当然の行為にようやく日本も乗り出した」と、海上自衛隊の護衛艦2隻がソマリア海域に向けて出港した意義を高く評価する。
(了)

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