【ジャパン・ブリーフ / FPCJ,No. 0909】 2009年2月20日
◎クリントン米国務長官の日本訪問
ヒラリー・クリントン米国務長官はアジア4カ国歴訪の第一歩として、2月16日夕刻、東京に到着した。長官就任後の初の訪問国に日本を選んだクリントン氏は、17日は早朝から夜まで中曽根弘文外相、浜田靖一防衛相、麻生太郎首相、小沢一郎民主党代表と相次いで会談し、さらに北朝鮮による拉致被害者の家族との面会、東京大学で学生との対話集会への参加など超過密スケジュールを精力的にこなし、18日朝に次の訪問国インドネシアに向かった。
◆日米同盟強化の重要性を確認
中曽根外相との会談では、今月24日に麻生首相がワシントンでオバマ大統領と日米首脳会談を開くことで合意した。外相会談後の記者会見で、クリントン長官はオバマ政権下で「外国首脳として最初にホワイトハウスを訪れるのが麻生首相になる」と述べた。また会見冒頭で中曽根外相が「初の外国訪問に日本を選んだことは、対日重視、日米同盟重視の表れとして歓迎する。日米同盟の強化で一致した」と語ったのに対し、クリントン長官は「日米同盟は米国外交の要だ。アジアだけでなく世界全体に影響を与える問題に協力して対処することは、オバマ政権にとって重要だ」と応えた。
麻生首相はクリントン長官との会談で、オバマ大統領からの招待に謝意を表明した。この会談では首相が「アジア太平洋地域に普遍的価値を根付かせ、自由で繁栄した安定的、予見可能な地域を築くことは日米両国の利益で責務だ」と述べ、さらにクリントン長官との間で「東アジアの諸課題に、日米同盟を基軸に対処することを確認した」と述べた(毎日新聞2月18日)。
◆日米協議の主要成果
日米外相会談では日米両国が当面する広範な諸問題が議論された。読売新聞(2月18日)は、同会談の主要成果として次の諸点を列挙した。 ◇[パキスタン支援]日本側が国際会議の東京開催を打診。米側も賛成。 ◇[日米安保]核抑止を含む米国の対日防衛への関与で一致。在日米軍再編の推進で同意。 ◇[北朝鮮問題]6か国協議の重要性と日米両国の連携を確認。 ◇[拉致問題]米側が「拉致問題は6か国協議の一部を形成すべきものだ」と表明。 ◇[中国]国際的な諸問題について、「建設的な形で関与させていくことが重要だ」とする認識で一致。 ◇[気候変動]実務者による協議加速で合意。 ◇[経済]日米連携を確認。保護主義に対処する必要性で一致。 ◇[海賊対策]日本側が海上自衛隊を派遣する方針を説明。米側は歓迎。
また小沢民主党代表との会談で、クリントン長官は1960年の日米安保条約改定から来年で50周年になることを引き合いに「日米同盟をさらに強固に」と語り、従来の日米安保体制の延長線上での協力を求めた。これに対し小沢氏は「私は日米同盟が何よりも大切だとずっと以前から唱えていた。だが、同盟は従属の関係であってはならない。対等なパートナーシップでもって初めて同盟だ」と応えたという。
◆クリントン長官訪日への主要紙論調
全国紙5紙は2月18日、クリントン長官訪問を社説で取り上げた。いずれの論旨もほぼ共通して、オバマ政権の対日重視を示すものとしてクリントン長官訪日を原則的に歓迎しつつも、日米双方が行動を通じて協力関係の充実化をはかる必要を強調する。
読売新聞社説は「より大切なのは、日米対話の内容を充実させ、戦略的な外交を展開することだ。当面の試金石は北朝鮮だ」と書き、「日米両国は、中国や韓国とも足並みをそろえ、(北朝鮮に)核計画の厳密な検証作業を迫る必要がある。日本人拉致問題について、クリントン長官は『米国として優先すべき問題』と強調した。日米協力を、拉致被害者の再調査の実現など具体的な進展につなげたい」と述べる。
朝日新聞社説は「米政権の関心からすると、世界同時不況の克服に日本の力を借りるのが喫緊の課題だろう。加えてイラク、アフガニスタンの治安安定から、北朝鮮の核・ミサイル問題、中国の軍拡、地球温暖化問題まで、日米が緊密に協力すべき課題は山積している」と述べつつ、オバマ政権の日本重視姿勢について「我々が『重視』という日本語から想像するような、日本に甘く、大切にしてくれるということではない。 米国の利益や戦略のために、日本を活用していくというドライな側面もあるのだ」と日本が難しい自主判断を迫られる状況を予想する。
毎日新聞社説は「オバマ政権は外交方針として、ブッシュ前政権の単独行動主義と決別し多国間対話重視の国際協調路線を打ち出している。協調路線とは、言葉を換えれば役割と責任の分担ともいえる。両外相はさまざまなレベルで対話を進め、政策調整を強化していくことで一致した。日本は米新政権の発足を好機ととらえ、能動的な外交に取り組むべきだ」と提唱する。
日本経済新聞社説は、日米外相会談で署名された沖縄海兵隊のグアム移転に関する協定について、「自民党、共和党政権下の2006年5月、外務、防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した在日米軍再編に関する合意を協定にまとめたものであり、日本政府は今国会に提出し、承認を得る考えである。日米間の政治的合意を国会審議を経て法的合意に格上げするのは適切である」と評価する。
一方で産経新聞社説は「(米軍再編の) 成否は普天間飛行場移設にかかっている。辺野古地区の代替施設建設に関して日米合意修正を求める地元との調整は難航中だ」と書き、米軍再編問題で日米間に不協和音が生まれる可能性を危惧する。 (了)
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