【ジャパン・ブリーフ / FPCJ,No. 0908】 2009年2月16日
◎イスラエル総選挙での右派勢力躍進
2月10日のイスラエル国会(クネセト)総選挙は、与党の中道派勢力が後退し、野党の右派諸政党が躍進する結果に終わった。12日に公式発表された各党議席獲得数によれば、国会(総議席120)の第1党(29議席)として連立政権を担ってきた「カディマ」は28議席を守りきり、かろうじて第1党の地位を保った。しかし連立与党の労働党は19議席を15議席へと減らし、国会の第4党に転落した。与党側議席数は67から52へと激減し、国会での過半数を失った。
野党勢力は「リクード」(12議席)が倍増以上の27議席を獲得し、わずか1議席差でカディマに迫る国会第2党へと躍進した。さらに極右政党「我が家イスラエル」が議席数を11から15へと伸ばし、国会第3党にのし上がった。野党5政党が獲得した議席総数は68に達し、国会過半数を大きく超えた。
◆主要紙の報道振り
主要紙の2月12日朝刊は、1面や国際面で現地エルサレムからの特派員記事を大きく扱った。その大見出しには「右派躍進、かすむ和平」(朝日新聞)、「1、2位党で連立か カギ握る強硬右派」(読売新聞)、「右派が過半数、中東和平停滞か」(毎日新聞)といった字句が用いられた。朝日新聞特派員は「右派が躍進した背景には、世論の右傾化がある。140人を超す兵士や市民を失った06年のレバノン紛争や、パレスチナ自治区ガザからのロケット弾攻撃。国民は『和平よりも治安』を最優先するようになった」と伝える。
また各紙ともワシントン特派員を動員して、米政府の反応を伝えた。「右派伸長 米政府に試練」(読売新聞)、「オバマ戦略に痛手」(毎日新聞)という見出しが示すように、いずれもイスラエル総選挙の結果がオバマ政権に新たな難問を突きつけるだろうとの見方を打ち出している。
◆イスラエル総選挙結果への主要紙論調
主要紙の社説はほぼ共通して、イスラエル総選挙結果が中東和平への歩みを頓挫させかねないことを不安視する。そしてイスラエル次期政権に対し、オバマ米政権の中東和平工作への協力を強く呼びかける。
読売新聞社説(2月13日)は「ただでさえ停滞している中東和平プロセスの行方が、一層困難な見通しとなった。イスラエル総選挙で、パレスチナとの和平実現に消極的な右派勢力が大きく議席を伸ばしたからだ」と書き出し、「(オバマ氏の)大統領としてメディアとの最初の会見は、アラブ首長国連邦の衛星テレビ局との間で行われた。会見の中で大統領は、『領土と和平の交換』を内容とするアラブ側の和平案を高く評価した。和平実現へ向けた大統領の強い意欲を示すものと受け取られている。イスラエルは、強固な対米関係維持のため、オバマ政権の和平への取り組みをじっくり見守る必要に迫られるだろう」とイスラエル新政権の対応に注目する。
朝日新聞社説(2月12日)は「イスラエルは年末からイスラム過激派ハマスが支配するガザに大規模な攻撃をかけ、国際的な非難を浴びた。それにもかかわらず、この攻撃をユダヤ系国民の9割以上が支持する。核疑惑のあるイランに対する軍事攻撃を支持する空気も広がっている」、「右派主軸の政権となれば、中東和平に積極姿勢を見せているオバマ米大統領にはショックだろう。(オバマ大統領が)イランに対話を呼びかけたのも、この地域の安定に欠かせないと見たからだ。イスラエルとイランの関係が険しくなれば、中東戦略全体が難しくなりかねない」と、イスラエル次期政権の政策が中東全体に及ぼす影響に懸念を表明する。
毎日新聞社説(2月12日)は「今回の選挙は、イスラエル軍の激しいガザ(パレスチナ自治区)攻撃の熱が冷めやらぬ中で行われた」と述べつつ、「確かにイスラエル国民の安全は大切である。ハマスのロケット弾が空から降ってこない生活を、と国民が願うのは当然だ。だが、イスラエルが民主国家であり人権を尊重する国ならパレスチナ人の命も大切にすべきである。いかにハマスを悪者にしようと、イスラエル自身の占領による問題が消えるわけでもない」と書く。同社説はさらに「アラブ系を排斥する一方、国際社会が『和平への障害』と憂慮するユダヤ人入植地の建設は続ける。それが極右政党などの主張であり、こうした勢力との連立が新政権を強硬にするのではないかという懸念がある」と、どんな形態の連立政権が生まれるかに重大な関心を寄せる。 (了)
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