【ジャパン・ブリーフ / FPCJ,No. 0857】
2008年8月28日
◎北朝鮮の核施設無能力化中断声明
8月26日、北朝鮮外務報道官は、北朝鮮が6者協議の合意に基づいて寧辺の核施設で進めていた無能力化作業を中断したとの声明を発表した。さらに同声明では、米国がテロ支援国家指定解除を先送りし続ければ、核燃料棒の原子炉への再装着や、爆破した冷却塔の再建などの強硬措置をとる可能性を示唆しており、10月末までの核施設の無能力化作業の完了を目指している6者協議の行方が危ぶまれる様相を呈してきた。
北朝鮮側の声明では、北朝鮮が核計画の申告書を提出したことで「自らの義務を履行した」と主張。同時に、米国がテロ支援国家指定を解除しなかったことは、「合意に対する明白な違反」であり、米国の求める検証手順が核拡散防止条約(NPT)脱退を招いた「特別査察」に等しいと反発しており、「『行動対行動』の原則に従って、対応措置を取らざるを得なくなった」と強調した。
これに対し、米国のウッド副報道官は26日、北朝鮮の声明を「後ろ向きの一歩。6者協議での約束に対する明確な違反」と非難した。福田康夫首相は同日、首相官邸で記者団に「核放棄に向け、検証を確実にやってほしい。米国などと協議したい」と述べたほか、日朝で合意した拉致問題の再調査への影響については、「どういう影響があるかわからないが、着実に進めていきたい」と語った。
◆各紙論調――納得できない北朝鮮の動き 北朝鮮による一方的な核無能力化中断の声明に対し、主要紙は27日および28日に社説を掲載し、今回の動きには米国によるテロ支援国家指定解除を早期に迫る狙いがあり、脅しを加える北朝鮮の常とう手段であるとする論調を示した。
読売新聞(8月28日)は、「北朝鮮の駆け引きに乗るな」との見出しで、「相手を恫喝 (どうかつ)し、危機的状況を作り出すことによって、譲歩を引き出そうとする常套(じょうとう)戦術だ。……北朝鮮の核廃棄に向けた6か国協議のプロセスを再び逆戻りさせる無責任な行動である。北朝鮮は無条件で作業を再開すべきだ」と論評した。また、「北朝鮮がこのまま作業中断を続ければ、(無能力化完了の)期限はさらに延びることになりかねない。核施設の『原状復旧』を検討する、と第二の対抗措置をとる構えも見せている。任期満了まであと5か月を切ったブッシュ米政権を揺さぶり、譲歩を迫る狙いがあるのだろう。ブッシュ政権は、実績作りを急ぐ余り、安易な妥協をしてはならない。厳密な検証手続きを受け入れるよう、毅然(きぜん)として北朝鮮と交渉すべきだ」と指摘した。
朝日新聞(8月27日)は、「瀬戸際作戦は通用せぬ」との見出しで、「またもや、お得意の瀬戸際作戦ということなのだろうか」、「これは、筋の通らない身勝手な言い訳というほかない」と論評。「北朝鮮が米国の足元を見て、いい加減な申告でお茶を濁せると思いこんだとすれば、大きな誤解というほかない」と指摘。さらに、「6者合意は、日米との国交正常化や経済・エネルギー支援など北朝鮮にも多くのメリットを約束する枠組みだ。これを壊すのは北朝鮮にとっても得策ではないはずだ。北朝鮮は今回の声明で、この合意全体の有効性には触れなかった。なんとか見返り措置を実行させようとの作戦のようにも見える。だが、それには検証を受け入れるしかないのだ。北朝鮮に影響力を持つ中国をはじめ日本を含む5カ国は、そのことを北朝鮮に対して粘り強く、はっきりと伝えていかねばならない」と主張した。
毎日新聞(8月28日)は、「非核化への歩みを止めるな」との見出しで、北朝鮮が米国に対して主張する「明白な合意違反」に対して「この論法はおかしい」と指摘。そのうえで、「厳密な検証なしに脅威の除去は不可能である。『検証は6カ国協議の合意事項であり、北朝鮮が合意に違反している』と米国務省が反論したのは、もっともだ。ただ、米朝の対立が長引けば、来年1月までのブッシュ政権下では、非核化に向けた大きな進展は望めまい。米国の次期政権がどんな北朝鮮政策を打ち出すかも流動的だ。このまま事態がこう着して、北朝鮮が持つとされる核爆弾や核兵器関連施設が、ほぼ手つかずで残されるのなら、日本にとって大きな打撃となるのは言うまでもない。大切なのは非核化への歩みを止めないことだ」と主張した。
日本経済新聞(8月28日)は、「北朝鮮の脅しは通用しない」との見出しで「不満があると国際社会を威嚇して揺さぶり、相手の譲歩を得ようとする。北朝鮮の常とう手段である」と論評。「北朝鮮が厳格な核検証に応じない限り、米国が指定解除を見送るのは当たり前である。北朝鮮の揺さぶりに惑わされ、安易に譲歩すべきではない。関係国は北朝鮮への経済・エネルギー支援の凍結も視野に入れながら、北朝鮮が検証に応じるよう協調して圧力をかけるべきだ。拉致被害者の再調査の行方も気掛かりになってきた。日本政府は拉致問題の早期解決を促す意味でも関係国との連携を強め、北朝鮮の脅しともいえる常とう手段がもはや通用しないことを悟らせる必要がある」と強調した。
産経新聞(8月28日)は、「米国は検証手順で譲るな」との見出しで、「北の言い分は明らかに筋違いである。……初めから不完全な申告の中身を公正な検証に委ねるのは当然だ。日、韓、中国なども検証を求めており、米国の対応は間違っていない。しかも、核施設の無能力化は核申告の検証とは別ものだ」と指摘。そのうえで、「声明は6カ国合意の破棄や協議終結には触れていない。テロ支援国家指定解除はのどから手が出るほどほしいはずだ。強硬な要求を突きつけて米国に譲歩させ、検証手順の大幅省略を狙っている可能性もある」、「北は拉致の再調査問題でも日本を揺さぶってくる可能性がある。そうした戦術に乗らないように、日米が結束して北に合意を守らせる必要がある。とくに核の検証は重要だ。米国は決して譲らずに、原則を貫いてもらいたい」と主張した。
(了)
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