社説読みくらべ

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現天皇の退位日が決定。2019年4月30日に

投稿日 : 2017年12月22日

日本の主要な全国紙5紙(朝日、産経、日経、毎日、読売)から、同じテーマについて論じた社説を選び、その論調を分かりやすく比較しながら紹介します。

 

産経新聞:譲位日程固まる 国民はこぞって寿ぎたい

日本経済新聞(日経):退位・改元の準備を滞りなく進めよう

毎日新聞:天皇陛下退位日を閣議決定 積み残しの課題を丁寧に

    :天皇陛下の退位日決まる 国民本位を貫く姿勢こそ

読売新聞:天皇退位日 代替わりへ遺漏のない準備を

 

皇族と三権の長(首相、衆参両院議長、最高裁長官)らが出席した「皇室会議」が12月1日、宮内庁で開かれ、その後の同8日の閣議で、政府は、陛下が2019年4月30日に退位し、皇太子さまが翌5月1日に即位することを正式に決定した。天皇陛下の“生前退位”は、江戸時代の1817年に退位した光格天皇以来約200年ぶりで、生涯天皇であり続ける制度(一世一元)が導入された明治時代以降(1868年以降)では初めてとなる。再来年5月からは天皇陛下が「上皇」、皇后さまが歴史上使われたことがない「上皇后」となり、秋篠宮さまが皇位継承順位第1位を意味する「皇嗣」となる。

 

全国紙は、朝日を除く4が「退位日決定」を社説で取り上げ、天皇陛下の意向を踏まえた今回の特例法による退位を歓迎するとともに、円滑な退位へ向けた準備に万全を期すように求めた。同時に各紙は、退位の儀式の在り方や新元号の決定についての議論を深めるように求め、先細る皇族の現状を前に安定的な「皇位継承」のあり方を前向きに検討する必要性を指摘した。

 

■ 退位日決定を歓迎、「女性宮家創設」検討を

 

読売122日付)は、退位日決定について、最終的に「静かな環境」を優先して決定されたことを歓迎し、「円滑な代替わりに向けて、準備に万全を期したい」と強調した。しかし、天皇陛下の退位に伴う元号の改元について、「平成31年度は1か月で終了する。改元による国民生活の混乱を最小限に抑える必要がある」として、新元号を極力早い時期に公表するよう求めた。

 

読売はまた、退位に伴う儀式について、「陛下の退位を実現する特例法」に基づくことから「儀式を国事行為とすべきかどうか。この点も慎重に考えるべきだ」として、菅官房長官をトップとする検討委員会で多角的に議論すべきだと指摘した。退位後の「上皇」の位置づけについても、「上皇が『日本国の象徴』である天皇と並び立つような印象を与えることは、好ましくあるまい」と指摘し、政府に対し上皇の活動のあり方について見解を明らかにするよう求めた。

 

さらに読売は、特例法で付帯決議された安定的な皇位継承の実現に向けた「女性宮家の創出」を前向きに検討することを求める一方、退位後は皇太子が不在になり、皇位継承順位1位の皇嗣となって皇太子の公務を引き継ぐ秋篠宮様の公務についても「過剰負担を避ける工夫が大切」と指摘した。

 

日経(同2日付)も、日程決定は「極力、静かな環境のもとで、国民生活への影響を最小限にすることを考慮したもの」と歓迎し、儀式のあり方について「皇室に連綿と続く伝統を踏まえつつも、象徴天皇にふさわしい形式にすることが必要だ」と主張した。また、日経は「女性宮家の創設の検討」など、皇位の安定的な継承に向けた対策に「本腰を入れる」べきだと論じた。

 

産経(同2日付)は、「立憲君主である天皇の譲位は、日本にとっての重要事である。一連の日程が決まったことを喜びたい」とするとともに、「国民統合の象徴である天皇にふさわしい代替わりを実現することが大切である」と主張した。退位の日程決定についても、天皇陛下の国事行為や政治日程を勘案したうえでの判断だとして「バランスがとれているといえよう」と評価した。

 

■ “国民本位の退位”を求めた毎日

 

毎日は、方針決定後(同2日付)と閣議決定後(同9日付)の2回に分けて社説でこのテーマを扱った。まず方針決定後の社説では、皇室典範の特例法に基づく退位について、「長い天皇制の歴史で画期的なことだ」と強調した。ただし、退位をめぐり首相官邸と宮内庁の間に駆け引きや主導権争いが水面下で続いたことを挙げ、「天皇の代替わりに関わる手続きは、あくまで国民本位で進められなければならない」と主張した。皇室会議の議事録の公表も求め、新元号の決定についても「最終的にはオープンにすべきだろう」と主張した。年度が替わった後の「4月末退位」について、「戸惑う人も少なくないのではないか。(中略)政府には国民生活への影響を最小限にとどめることが求められる」と指摘した。

 

また、閣議決定後の社説では、退位の儀式について「伝統を生かしつつ、簡素で国民が身近に感じる形式がふさわしい」とするとともに、「祝賀ムードの盛り上げだけでなく、天皇制を国民が考える機会とするなど目的をはっきりさせるべきだ」、「象徴の二分化が生じない配慮が求められる」と主張した。

 

さらに、安定的な皇位継承問題について、女性宮家の創設は検討に値するとしながらも、「それだけでは皇位継承は安定しない。女性天皇や女系天皇まで幅を広げて議論すべきだ」と従来の主張を繰り返した。その上で、今回の退位決定で、「天皇制を自由に議論できる雰囲気が醸成された」との認識を強調し、「天皇制の将来を見据えた国民的な議論を始めるべきではないか」と論じた。

 

 

写真: AP/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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