Warning: date() expects parameter 2 to be int, string given in /home/wujapan/www/fpcj.jp/wp/wp-content/themes/fpcj_new/single.php on line 13

Warning: date() expects parameter 2 to be int, string given in /home/wujapan/www/fpcj.jp/wp/wp-content/themes/fpcj_new/single.php on line 13

Warning: date() expects parameter 2 to be int, string given in /home/wujapan/www/fpcj.jp/wp/wp-content/themes/fpcj_new/single.php on line 13

Warning: date() expects parameter 2 to be int, string given in /home/wujapan/www/fpcj.jp/wp/wp-content/themes/fpcj_new/single.php on line 13
最低賃金、2年連続「3%」引き上げ。それでも残る課題とは? | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)

社説読みくらべ

一覧に戻る

最低賃金、2年連続「3%」引き上げ。それでも残る課題とは?

投稿日 : 2017年08月04日

日本の主要な全国紙4紙(朝日、日経、毎日、読売)から、同じテーマについて論じた社説を選び、その論調を分かりやすく比較しながら紹介します。

 

朝日新聞: 底上げを早く広く

日本経済新聞(日経):生産性向上が伴う最低賃金引き上げに

毎日新聞: それでもまだ低い水準だ

読売新聞:継続できる環境整備が重要だ        (50音順)

 

企業が働き手に支払う賃金の最低限度を国が定める「最低賃金」(時給)について、厚生労働省は、2017年度の改定の目安を全国平均で25円引き上げ、848円とすることを7月26日に決めた。引き上げ幅は、比較できる2002年以降で最大であり、安倍内閣の目標通り2年連続で「3%」の引き上げとなった。。

 

全国紙4紙は同月27日付の社説でこの問題を取りあげ、引き上げを「一歩前進」と評価する一方で、もともと先進諸国のなかで日本の最低賃金は低く、「それでもまだ低い水準」であることや、最低賃金の急上昇が中小企業の経営を圧迫しかねないことを指摘。大企業が中小企業に過度の値下げを要求するなどの〝下請け企業いじめ″に対する監視強化や、地域間格差の是正などさらなる改善を行うよう注文を付けた。

 

■ 最賃引き上げでも、月収12万円の低水準

 

朝日は、最低賃金が最大の上げ幅となったことを評価しながらも、「主要国の中では1千円を超えるフランス、ドイツなどと比べてまだまだ見劣りする」と指摘した。欧米諸国では、フランスの場合、労働者の平均賃金に対して最低賃金は6割、英国も5割であるのに対して、日本は4割にとどまっている。経済が好調で人手不足感が強まっていることから、「引き上げの好機だ。もっとペースを速めたい」と強調した。

 

しかし、今回の引き上げでも、実際に最低賃金が全国平均の848円を上回るのは大都市部(最高額の東京で現在932円)に限られており、最低額の宮崎県、沖縄県のような時給700円台前半では、1日8時間、月20日働いても、月給12万円弱にしかならない。朝日は、このような現状について、「これで生活を支えるのに十分な水準と言えるだろうか」と疑念を呈した。大都市部と地方との差は大きく、引き上げによってさらに格差は拡大するとして、改善策を講じるよう求めた。

 

毎日(6月2日付)は、安倍内閣が掲げる「ニッポン1億総活躍プラン」に最低最賃の「毎年3%程度の引き上げ」が盛り込まれており、「中期目標である『全国平均1000円』の実現へ向け一歩前進した」と評価した。しかし、政府の「働き方改革」で残業代が抑制されようとしていることから、「働く時間が減ることで手取り収入は増えないという人は多いだろう」と指摘した。同紙は、「(最低賃金の)引き上げは必要だが、それより少し高い賃金を得ている非正規労働者の賃上げに直接つながるわけではない」として、「生活が苦しい『ワーキングプア』を解消するために従業員全体の賃上げに波及させる必要がある」と論じた。

 

読売も、最低賃金引き上げは「賃金を底上げし、非正規雇用の待遇改善とデフレ脱却を確実にする」として、2年連続で20円以上の値上げが決まったことを歓迎した。大幅引き上げを企業サイドが受け入れたのは、「(経営側の)採用難への危機感の表れだろう」としている。

 

■ 課題は中小企業いじめに対する監視強化、生産性向上への支援

 

待機児童解消のための個別の課題については、全紙がほぼ共通して、保育士不足と新プランの財源確保を問題として挙げた。

 

日経は、第2次安倍内閣が発足した2012年末以降、今回の値上げを含め最低賃金が100円近く引き上げられたことについて、「消費を刺激し、景気の拡大を後押しする効果がある」と評価したが、同時に中小企業の倒産が増加する懸念があるとも指摘した。特に日経が政府に対して求めたのは、「生産性向上支援」対策の推進で、「求められるのは最低賃金の引き上げと企業の生産性の向上が歩調を合わせて進むことだ」と強調した。具体的には、成長分野への企業進出を阻む制度の見直しやIT(情報技術)活用の支援、職業訓練の充実を求めた。大企業による中小企業への過度の値下げ要求などの不公正取引に対する監視強化も課題だとしている。

 

読売も、経営体力の弱い中小・零細企業にとって「最低賃金の急上昇は打撃だ。人件費負担が雇用縮小を招く事態は避けなければならない」とするとともに、「大企業による不当な値引き要求といった〝下請けいじめ″への監視」を強め、取引慣行の改善を図るよう求めた。生産性向上支援についても、政府の「設備投資費用の助成制度」があるにもかかわらず利用状況は低調だとして、「使途が限定され、使い勝手が悪い、との指摘がある。現場の実情に応じた有効な方策を検討すべきだ」と要望した。

 

また、朝日は中小・零細企業の経営支援に関連し、公正取引委員会が2016年度に指導した「下請けいじめ」件数は過去最多の6302件に上ったことを挙げ、監視体制の強化が不可欠だと論じた。毎日も、「中小企業に生産性向上の努力が求められるのはもちろんだが、大企業に適正な取引慣行を守らせることも必要だ」と強調した。

 

 

写真: Rodrigo Reyes Marin/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信