社説読みくらべ

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1億総活躍

投稿日 : 2015年12月11日

 

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朝日: 分配とバラマキは違う

産経: 政策阻む原因に向き合え

日経: 道筋も財源も不透明な「一億総活躍」対策

毎日: 実現の具体策を示せ

読売: 財源と人材をどう確保する

 

 

写真:杉本哲大/アフロ

 

 

 

政府の「1億総活躍国民会議」(議長・安倍晋三首相)は11月26日、1億総活躍社会実現に向けた緊急対策を決定した。緊急対策は首相が「アベノミクス新3本の矢」と位置付ける名目国内総生産 (GDP) 600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロについて、達成のための政策を軸にまとめた。関連経費は15年度補正予算案に計上する。

 

1億総活躍対策について、毎日新聞は発表前の11月25日付、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞は11月27日付、朝日新聞は11月28日付の社説でそれぞれ論評している。

 

読売と毎日は、「子育てや介護への支援を強化し、女性や若者、高齢者の働き手を増やす。中長期的には人口減に歯止めをかける。それにより、日本経済の成長につなげる。方向性としては妥当である」(読売)と、対策の方向性そのものは支持する一方、「問題は、実現するための財源と人材確保の具体策がほとんど見られないことだ」(毎日)として、政府に具体策を示すように求めている。

 

産経は、「保育の受け皿拡充や介護休業給付金の引き上げなど、高齢者に偏りがちな社会保障のあり方の是正に向けた姿勢は評価できる」としながらも、「実現可能性を考えると、いささか乱暴な印象が拭えない」と評した。

 

日経は、「緊急対策は各省庁の従来施策を寄せ集めた印象が強い。目標の達成に向けた道筋や財源も不透明だ。来夏の参院選対策とみられてもおかしくない。来春の『一億総活躍プラン』策定に向け、改めて真摯な議論を望みたい」と辛口の評価をした。

 

一方、朝日は緊急対策について、「政策展開の柱の一つとして『分配』をしっかりと位置づけたことは歓迎する」としつつも、「デフレ脱却と経済成長に向けた政策総動員をうたう中で、場当たり的な対応が目についたのも否定できまい」と論評した。

 

■ 社会保障と財源確保

 

日経は、政府が打ち出した「希望出生率 1.8」「介護離職ゼロ」に向けた施策について、「目標実現の一助になろう。だが、長らく低迷する出生率を回復に向かわせたり、介護保険を導入してもなお解決しない介護問題を解消したりするには、力不足ではないか」と、課題解決の困難さを強調した。その上で、少子化対策として、「長時間労働を是正し仕事と家庭を両立できるような働き方の改革も欠かせない」と述べ、「保育にしても介護にしても、それらを担う人材を確保しないことにはすべてが絵に描いた餅となりかねない」と指摘した。

 

産経も、財源が最大の課題だとした。「財務省は来年度予算で社会保障費の伸びを1700億円抑制する方針だ。一方で緊急対策による予算の上乗せに動くのでは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ」と指摘した。その上で「新たな政策を始めるからには、当面の景気浮揚策や参院選対策といった一過性のものであってはならない」と強調した。

 

毎日も、介護や保育の職員の給与問題を指摘しつつ、来年度予算編成で社会保障費が抑制される方針についても言及し、「その中で介護や保育を充実させるには、税や保険料の負担増や経済的に余裕のある層の年金給付の抑制など、国民に不人気な政策も語らねばなるまい」と安倍政権の覚悟を問うた。

 

読売は、「緊急対策の多くは、以前から必要性が指摘されながら、財源不足などから先送りされてきた。政府は、優先度の高い施策について、今年度補正予算案に盛り込む方針だ。着実に実施してほしい」と述べた。しかし来年度以降の財源については見通しが立っていないとし、政府が来春にまとめる「1億総活躍」の中長期プランで実行可能な確保策を示すべきだと強調した。

 

■ 低年金者への分配政策

 

朝日は、緊急対策とそれに盛り込まれる予定の低年金者への給付金について歓迎したが、「税・財政政策を通じて政府が目指すべき分配は、けっしてバラマキではない」と、政府には釘を刺している。分配政策として、政府は約1千万人を対象に一人当たり3万円を配ることを検討しているが、「所得や資産を巡る状況は一人ひとり異なる」と指摘し、「そうした事情にできるだけきめ細かく対応し、社会保障を中心とする予算や税制を工夫して、生活が苦しい人を支える。そんな仕組み作りこそが、政府が考えるべき分配政策である」とし、本格的な対策を求めた。

 

産経も、低年金者への分配政策について言及しているが、「年金をめぐっては支給額を抑制する『マクロ経済スライド』を発動させたばかりであり、チグハグな対応と言わざるを得ない」と評している。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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