社説読みくらべ

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辺野古の埋め立て承認取り消し

投稿日 : 2015年10月30日

 

朝日: 沖縄の苦悩に向き合え

産経:知事の職責放棄するのか

日経: 沖縄の基地のあり方にもっと目を向けよ

毎日:やむを得ない知事判断

読売: 翁長氏は政府との対立煽るな

 

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐり、沖縄県の翁長雄志知事は10月13 日、移設先の名護市辺野古の埋め立て承認に瑕疵()があったとして承認を取り消した。これに対して、防衛省は翌日、国土交通省に行政不服審査法に基づく不服審査請求を申し立てた。取り消し処分の効力停止が認められれば、政府は11月中にも埋め立ての本体工事に着手する考えだが、翁長知事は効力停止の取り消しや差し止めを求める訴訟を起こすとみられる。

 

この埋め立て承認取り消しについて、全国紙5紙は10月14日付の社説でそれぞれ論評したが、その論調は各紙で大きく割れている。

 

読売新聞と産経新聞は、「翁長氏が政府との対立を煽るだけでは、普天間飛行場の移設が遠のくうえ、米海兵隊グアム移転なども頓挫しかねない」(読売)などと翁長知事の対応を鋭く非難した。

 

一方、朝日新聞は、埋め立ての法的根拠を失ったとして、政府に計画の白紙撤回を求め、全国の米軍専用施設面積の7割以上が集中する沖縄の苦悩に向き合うよう促した。

 

毎日新聞は、「今回のことは、安倍政権が県の主張に耳を傾けず、移設を強行しようとした結果ではないか。県の取り消し判断はやむを得ないものと考える」と、政府の「強引」な手法を批判した。

 

日本経済新聞は、「(普天間基地を)人口が比較的少ない同県名護市辺野古に移すという政府の方針は妥当である」としながらも、「沖縄の基地負担の軽減にもっと務める必要がある」と、政府に一層の努力を促した。

 

■ 安全保障vs民意

 

産経と読売は、国家安全保障を優先すべきだという立場だ。

 

産経は、安全保障に加え、安全の観点からも翁長知事の対応を批判している。「辺野古移設が頓挫すれば、尖閣諸島周辺などで野心的な海洋進出を繰り返す中国の脅威に対し、抑止力を維持することができない。市街地の中心部にある普天間飛行場の危険性も除去できない」と強調したうえで、「いずれも危険に直面するのは沖縄県民である。地方行政トップとして、こうした判断が本当に許されるのか」と、翁長知事を指弾した。

 

読売も「ヘリコプター部隊を県外に移せば、米軍の即応力は確実に低下する」と懸念を表明し、「辺野古移設は、日米両政府と地元自治体が長年の検討の末、唯一の現実な選択肢と結論づけられたものだ。翁長氏は、代案を一切示さない頑なな姿勢でいる」と批判している。

 

これに対して、朝日は、沖縄県民の民意を尊重する重要性を説いている。「政府と県が行政手続き上、司法上の対抗策を打ち合うなかで、民意に反した基地建設が進む。そんな異常事態は、何としても避けなければならない」と論じた。

 

一方、日経と毎日は、政府の沖縄に対する姿勢について問題点を指摘し、論説を展開している。

 

日経は、「沖縄にはどれぐらいの防衛力があればよいのか。日米両政府や与野党が基地のあり方にもっと目を向け、真剣な議論を展開すれば、沖縄県民も自分たちが置かれた立場を理解するようになるはずだ」と指摘し、「本土のわがままで沖縄がひどい目にあっている。県民がそう思っている限り、たとえ最高裁が名護市への移設にお墨付きを与えても摩擦はなくならない」ことから、「本土側の真摯な取り組み」が必要であるとした。

 

毎日も、「翁長氏が知事に就任して10カ月。この間、安倍政権は辺野古移設を進めるにあたり、県の意向をくみとろうとする姿勢に乏しかった。一時期は、翁長氏と会おうともしなかった」と苦言を呈し、「政府が今すべきは、強引に辺野古移設を進めることではなく、移設作業を中止し、これらの疑問に答えることではないだろうか」と促した。

 

■ 沖縄の基地問題は人権問題か

 

読売、産経、朝日の3紙は、翁長知事が先月、ジュネーブでの国連人権委員会の演説で、「沖縄の人々は自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えたことについて言及した。

 

読売は、「違和感を禁じ得ない。沖縄の『先住民性』や、独裁国家の人権抑圧を連想させ、国際社会に誤ったメッセージを送る恐れがある」と述べた上で、同じ場で、辺野古移設に賛成する名護市の女性が「教育、生活などで最も高い水準の人権を享受している。(翁長氏の)プロバガンダを信じないで」と反論したことを紹介した。

 

産経も、「日本の防衛にかかわるテーマだけに、国内の混乱を対外的に印象づけるような手法は国益を損なう行為といえた」と指摘している。

 

一方、朝日は翁長知事の主張に共鳴している。

 

「戦後70年、米軍による犯罪や事故に巻き込まれる危険、航空機の騒音などの『基地被害』と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた歴史」を経験してきた沖縄が、いまなお過重な負担を負わされていると指摘し、「これはまさに、沖縄に対する『差別』ではないか」と訴えた。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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