社説読みくらべ

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TPP合意

投稿日 : 2015年10月16日

朝日:域内の繁栄と安定の礎に

産経:「自由」基盤の秩序築いた

日経:TPPテコに世界経済の活性化を

毎日:新「貿易立国」の姿描け

読売:巨大貿易圏で成長底上げ図れ

 

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する12か国は10月5日、米アトランタで開催されていた閣僚会議後の記者会見で、交渉が大筋で合意に達したと発表した。5年半に及ぶ交渉を経て、人口8億人、世界の国内総生産(GDP)の4割近くを占める最大の自由貿易圏が誕生することになった。

 

今回の大筋合意について、朝日新聞、日本経済新聞、産経新聞、読売新聞は10月6日付の社説で、毎日新聞は翌日の社説でそれぞれ論評し、歓迎の意を表明したが、日経を除く各紙はその内容について、国民への情報公開と説明が必須になっていくと述べた。

 

日経は「歴史的な成果だ」と称え、読売は「経済活動の自由度が高まり、生産拡大や雇用創出など、様々な恩恵を享受できよう」と述べた。産経も、「高水準の自由化と、域内の共通基盤となるルールを確立するTPPは、21世紀の国際標準となり得る野心的な協定だ」と、期待感を示した。

 

毎日も、「日本にとっても意義は大きい。人口減で内需が伸び悩む中、成長著しいアジア太平洋地域の活力を取り込む基盤が整うからだ」と述べ、今回の合意を高く評価した。

 

朝日は、「これを域内の繁栄と安定の礎としなければならない」と述べる一方、「日々の生活にどんな影響があるのか、根強い不安や疑念と向き合わなければならない」ため、国民への説明責任が欠かせないとした。

 

■ 中国への牽制か、取り込みか

 

今回TPP交渉メンバーに入っていない中国への対応については、各紙の論評が分かれている。

 

産経と読売は、TPPには中国を牽制する効果があると、主張している。

 

産経は、中国の覇権主義的な動きには問題が多く、「TPPはこれを牽制するものだ」と述べた。その上で、「無論、参加各国にとって対中経済関係の重要性は合意後も変わるまい。それでも、中国経済の減速など流動的要因が多い中、新たな経済圏を構築することはリスク分散の観点でも意味がある」と解説した。

 

読売は、「TPPを主導する日米が結束し、同盟関係を深化させる効果も見逃せない。覇権主義的動きを強める中国への牽制となろう」としながらも、「世界最大の経済協定であるTPPの原則は『国際標準』となる。公正、透明なルールに従うよう中国に改革を迫り、世界2位の経済力を世界の繁栄に生かしたい」と、中国側の変革の必要性を説いた。

 

一方、朝日と毎日は、中国を自由貿易圏へ取り込むべきだと強調した。

 

朝日は、「自由化の効果を高めるには、世界第2の経済大国である中国、さらには韓国を巻き込むことが欠かせない。それが地域の政治的安定にもつながるはずだ」と強調した。

 

毎日も、「アジア太平洋地域の発展は中国抜きでは考えられない。TPPは排他的な経済圏ではないはずだ。存在感を高め、公平で透明なルールに基づく高水準の自由貿易圏に中国を取り込んでいくべきだろう」と述べた。

 

日経は、中国の取り込みについて直接的には触れなかったものの、「TPP、日中インドを含む16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日中韓自由貿易協定(FTA)のすべての交渉に参加しているのは日本だけだ。この地域の自由貿易圏づくりを主導してほしい」と、日本の役割を指摘した。

 

■ 国内の農業対策

各紙は、TPP締結後に焦点となる、国内農畜産分野への対策についても論評した。

 

日経は、「安易なバラマキは慎み、コメの生産調整(減反)廃止や、農協改革との相乗効果で農業の生産性を高める対策にお金を重点配分すべきだ」と、バラマキに終わった、1990年代のウルグアイ・ラウンド合意を受けた国内対策の二の舞にならないよう呼びかけた。

 

朝日も、ウルグアイ・ラウンド対策と「同じ過ちを繰り返す余裕は、借金が1千兆円を超す日本の財政にはない」と述べた。

 

読売は、「来年夏の参院選を意識し、自民党内からは、TPP対策を名目に農業予算の大幅増を求める声が出ている。バラマキを排し、農業再生に資する事業に予算を重点配分できるかどうかが問われよう」と、政府・自民党に釘を刺した。

 

産経も、強い農業の実現は急務だと述べている。「(国内対策は)農業の生産性を改善し、競争力を強化するものでなければならない。これを通じて経営体力を高め、所得向上を実現することこそが本筋である」と強調した。

 

毎日は「高齢化に伴う農業の衰退は著しい。高関税で保護する『守り』だけでは、未来は開けない。TPPを『攻めの農業』に転じる好機と捉えるべきだ」と述べた。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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