社説読みくらべ

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日韓国交50年

投稿日 : 2015年07月03日

Vol.6  2015年7月3日

  

 朝日:正面から向き合う契機に /  産経:未来志向今こそ具現化を

日経:協力の芽を育み強固な日韓関係を / 毎日:「違い」認め、前へ進もう

読売:「歴史」克服して未来に進もう 東アジア安定へ責任を共有せよ

 

 

日本と韓国の国交を正常化した日韓基本条約調印から、6月22日で50年を迎えた。前日には、韓国の外相としては4年ぶりに尹炳世外相が来日し、岸田文雄外相と会談した。会談では、韓国側が「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録に反対していた問題で歩み寄り、韓国推薦の「百済歴史地区」とともに、日韓がそれぞれの登録に協力することで一致した。さらに、日韓両政府は22日、東京とソウルでそれぞれ50周年式典を開き、安倍晋三首相と朴槿恵大統領が自国開催の式典で祝辞を述べた。

 

両国の関係は近年、歴史や領土問題のあつれきから大きく冷え込んだ。安倍首相と朴大統領の首脳会談が一度も実現していないなど停滞が続き、国交正常化以降で最悪の状態とも言われるほどだ。日韓関係の節目で、韓国の対日政策に柔軟化の兆しが出てきたとも指摘されているが、日韓両政府がこれを真の関係改善につなげていけるかどうかが注目されている。

 

日韓国交正常化50年について、朝日新聞は6月19日付、日本経済新聞は21日付、読売新聞と毎日新聞は22日付、産経新聞は23日付の社説でそれぞれ論評している。

 

各紙とも、両国関係について「政治的にきしんだ関係を打開し、未来を見据えた長期的な協力関係を築いていく必要がある」(日経)などと、関係再構築の必要性を説いているが、その道筋については違いも見せている。

 

■  歴史問題

1965年の国交正常化から、日韓関係は急速に緊密になり、相互依存を深めてきたが、それが暗転したのは2012年8月の李明博大統領の竹島訪問と天皇陛下への謝罪要求があったからだ。13年2月に就任した朴大統領は、慰安婦問題の解決を両国の首脳会談の条件に掲げ、日韓関係はさらに冷え込んでいる。

 

毎日は「近年の状況で際立つのは、慰安婦問題が日韓関係全般を止めるほどの影響力を持つようになったことだ」と指摘し、「感情的対立がここまで深まった以上、両国が納得できる解決策をすぐに見いだすのは困難だろう。両国の共通利益を優先させ、そのプロセスで慰安婦問題に向きあう冷静さが求められる」と説いている。

 

日経も、「仮に慰安婦問題が決着しても、韓国では戦時中に日本に強制徴用された韓国人への損害賠償を求める訴訟などが相次いでいる。植民地支配という過去を抱えた日韓の間では、歴史問題の対立の根はなお深い」と、問題の根深さを指摘した。

 

歴史問題について、読売は、韓国側のこれまでの対応を非難している。「慰安婦の賠償問題は本来、請求権協定で法的に解決済みだ。それでも、日本政府が設立したアジア女性基金は、韓国の元慰安婦61人に首相のお詫びの手紙とともに『償い金』を支給している」と指摘し、「朴氏が、こうした事実関係を無視し、安倍政権に一方的な譲歩を迫る姿勢を改めない限り、日本側も歩み寄るのは難しいだろう」と強調している。

 

■  今後の道筋

読売と産経は、歴史問題について韓国側に姿勢を改めることを求めている。一方、日経、朝日は、日本側の姿勢にも問題があり両国の歩み寄りが必要としている。毎日は、二国間を取り巻く「構造的な変化」に問題の背景があるとして、双方の対話が不可欠と説いている。

 

産経は、朴大統領に「慰安婦問題の解決が首脳会談開催の前提になるといった、従来の条件を取り下げるよう決断してほしい」と求め、日本政府に対しては、「関係改善を焦るあまり、原則的な立場をゆるがせにしてはならない」と釘を刺した。

 

読売は、朴大統領が反日的な世論に迎合する姿勢が「日本側の『嫌韓』感情をあおり、悪循環を招いている」として、「領土問題や歴史認識で意見の相違があっても、日韓関係全体への影響を極小化することこそが、外交本来の役割ではないか」と疑問を呈した。

 

一方で、日経は、韓国側の「かたくなともいえる対日強硬姿勢が、関係をさらに冷え込ませたことは否定できない」としつつ、「反面、日本側の歴史修正主義とも受け取られかねない姿勢が韓国を刺激したのも事実だ」と指摘。関係改善に向けて必要なのは「日韓で協力できる分野や幅を広げ、結果的に『歴史』の比重を下げていくことではないだろうか」と述べ、経済分野での協力を促した。

 

朝日も、産経新聞特派員が朴大統領に対する名誉棄損で起訴された事件などを例にあげ、「韓国の司法や検察の判断には、首をかしげざるを得ないことが多い」としたうえで、日本の安全保障関連法案の憲法解釈をめぐる議論を例にあげ、「日本で法治が徹底されているかといえば、これまた心もとない」と主張。「50年の節目を契機に、今こそ責任ある主権国家として互いに正面から向き合うべき時ではないか」と述べ、「狭隘なナショナリズムや勝ち負けを競うかのような不毛な対抗意識にとらわれている限り、政治と外交を縛る負の連鎖は、今後も断ち切れない」と強調した。

 

毎日は、「日韓はこれまでの50年間、紆余曲折を経ながらも協力し、関係を発展させてきた。しかし、旧来の枠組みは機能不全を起こしつつある」と指摘。「お互いに『違い』を認めた上で、協力の枠組みを再構築しなければならない」と、両国に外交努力を促した。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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