社説読みくらべ

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高浜原子力発電所

投稿日 : 2015年04月24日

Vol.2  2015年4月24日

 

福井地裁は4月14日、関西電力高浜原子力発電所3・4号機(福井県)について、再稼働を差し止める仮処分を決定した。2基は、原子力規制委員会の新基準による審査に合格し、11月の再稼働を目指していたが、住民らが、安全対策が不十分として差し止めの仮処分を申し立てていた。樋口英明裁判長は、新基準は「合理性がない」との判断を示した。同裁判長は昨年5月、大飯原発(福井県)をめぐる裁判でも再稼働差し止めの判決を出したが、判決は確定しておらず、法的に即効力のある仮処分で再稼働が差し止められるのは初めて。

 

この決定について、全国紙5紙は4月15日付の社説で一斉に論評したが、その論調は大きく分かれた。読売新聞や産経新聞が、「合理性を欠く決定」(読売)、「重大な負の影響をもたらす」(産経)と指弾する一方で、朝日新聞は「裁判所の目線は終始、住民に寄り添っていて、説得力がある」と評価している。

 

日経新聞は、読売や産経に比べてトーンは弱いものの、差し止めの決定について「疑問点が多い」とし、司法は安全性のみならず、電力の安定供給や経済への影響などを考慮して総合的に判断すべきだと主張した。

 

毎日新聞は、この社説の見出しで「司法が発した重い警告」と一定の評価をしているが、ゼロリスクを求めて一切の原発再稼働を認めないのは「性急に過ぎる」として、決定については玉虫色の論調だった。

 

新規制基準は不十分か

 

関電に再稼働の差し止めを命じるにあたって、樋口裁判長は、「新基準は緩やかにすぎ、これに適合しても安全性は確保されていない」と断じている。

この点に関して、読売は「新基準は、地震や津波の想定を拡大し、これを大幅に上回った際の対策を求めている」と説明したうえで、同裁判長が新基準を否定したことについて、「ゼロリスクを求めた非現実的なものだ」と主張した。

 

産経も、今回の決定の中で、新基準について「合理性を欠く」との判断が示されたことについて、「あまりにも乱暴だ」と論じている。「原発の安全性をめぐって規制委の審査との間に齟齬を来し、国民は何をよりどころにすべきか迷ってしまう」との理由からだ。

 

日経は、規制委が専門的な見地から約1年半かけて審査し、基準を満たしていると判断したにもかかわらず、司法が「安全性について専門的な領域に踏み込み、独自に判断した」ことを疑問点の一つに挙げた。また、大飯原発3・4号機をめぐり同裁判長が「万一の事故への備えが不十分」として運転差し止めを命じたことにもふれ、「原発に絶対の安全を求め、そうでなければ運転を認めないという考え方は、現実的といえるのか」とも指摘している。

 

一方、朝日は、地裁が新基準に疑義を呈した点を評価している。地裁が、安全対策の柱となる「基準地震動」を超える地震が、4つの原発で10年ほどの間に5回も起きた事実を重く見たと指摘し、判断には「国民に強く残る原発への不安を行政がすくい上げないとき、司法こそが住民の利益にしっかり目を向ける役割を果たす」という意図がよみとれるとした。

 

毎日は、「(できるだけ早く原発をゼロにすべきとの前提で)最小限の再稼働は容認できる」との社論を提示したたうえで、原発の再稼働にゼロリスクを求める今回の決定は「性急に過ぎる」ものの、「いくつもの問題を先送りにしたまま、見切り発車で再稼働をすべきではないという(司法の)警鐘は軽くない」とまとめた。

 

 

今後の影響

 

現在、日本で稼働可能な原子炉48基はすべて運転を停止している。産経は、今回の決定は電力安定供給や国のエネルギー安全保障、二酸化炭素排出削減計画に「負の影響」が及ぶとしている。「原発の再稼働に遅れが生じると、電力会社の経営を圧迫し、電気代のさらなる値上げが不可避となる。中小企業は耐えられなくなっていく」と指摘している。

 

同じく日経も、原発の停止が電気料金の上昇を招いているばかりでなく、「原発ゼロが続けば、天然ガスなど化石燃料の輸入に頼らざるを得ず、日本のエネルギー安全保障を脅かす」と懸念を示した。

 

読売は、規制委の結論を覆した今回の決定が、1992年の四国電力伊方原発訴訟で出された、原発の安全性の審査は「行政側の合理的な判断に委ねられている」とした最高裁の判例を「大きく逸脱している」と指摘。また、福島第一原発の事故後、原発の再稼働差し止めを認めたのは樋口裁判長による2件のみであることにもふれ「事実に基づく公正性が欠かせない司法への信頼を損ないかねない」と主張した。

 

毎日は、11月の再稼働を見込んでいた関電は「日程の見直しを迫られかねない」としている。

 

朝日は、「決定を突出した裁判官による特異な判断と軽んじることは避けたい」とし、各電力会社には、「原発に向ける国民のまなざしは『福島以前』より格段に厳しいことを自覚するべきではないか」と促した。また、安倍政権に対しては、「司法による警告に、政権も耳を傾けるべきだ」と呼びかけている。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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