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日ロ関係の新展開 

投稿日 : 2018年12月28日

■東郷和彦、佐藤優 『中央公論12月号    


安倍首相は20181114日、シンガポールでのプーチン大統領との日ロ首脳会談で日ロ平和条約交渉を加速することで合意した。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏京都産業大学教授の東郷和彦氏との『中央公論』12月号での対談「北方領土返還、これが最後のチャンスだ」で、日ロ平和条約締結について「平和条約をるのが現実的だし、それを逃したら歯舞・色丹も失いゼロになる」として、今回の交渉が最後のチャンスになるとの見方を示した。

 

佐藤氏は、プーチン大統領の一連の発言から「少なくとも歯舞、色丹の二つは引き渡すことを示唆している」と分析し、ロシア側が動き出した三つの理由を挙げている。第一は、ウクライナの「クリミア併合」問題との関連で、「日ロ平和条約が実現すれば、日本がクリミアをロシア領として承認する効果をもたらす」とする。第二は、朝鮮半島情勢の中で、日ロが協力すれば現在の南北両朝鮮、米中両国による4か国協議の流れを変え「六者協議」によって北東アジアの安定に関与できる。第三は、ロシア側が北方シーレンの確保のため、平和条約締結により宗谷、津軽、対馬などの日本の海峡をロシア艦船が通航できるようになるからだとしている。

 

東郷氏は、米中両国の覇権争いが激化する中で「いまロシアと手を結ぶことこそ、間違いなく日本の外交力を高める」と述べ、険しさを増す国際情勢が日ロ平和条約交渉の“後ろ盾”になるとの認識を示した。特にロシアは習近平・中国との関係維持に配慮しながらも、中長期的に中国がロシアの安全保障上の脅威となることを回避しようとしているとして「これだけ日ロ両国を近づける磁力が働いている機会はめったにない」と強調した。

 

問題は平和条約締結後に残る「国後」、「択捉」2島の返還だが、佐藤氏は「平和条約を締結した後でも、両国が合意すれば帰属替えは国際法的に可能だ。歯舞、色丹二島で平和条約を締結しても、日本が四島を完全に諦めるわけではない」としている。

 

 

■兵頭慎治 『外交Vol. 51 


防衛省防衛研究所地域研究部長の兵頭慎治氏『外交Vol. 51の論文「安全保障から見た日ロ関係の現状と展望」で、プーチン大統領の「平和条約締結」発言について、「ロシアが中国のジュニア・パートナーに堕することを望んでいない」ためで、「反米親中」路線を修正する観点から「日本を相対的に重視する姿勢が強まっている」と分析する。20173月から再開された日ロ外務・防衛閣僚協議(2プラス2)やインド、ベトナム、日本との関係改善の動きは中国の台頭がロシアの脅威となりかねないからで、「安全保障面を含むロシアの対日重視姿勢は引き続き強まるであろう」との見方を示した。

 

ただ兵頭氏は、日本が進めようとしている北方四島における経済協力について「経済協力を行えば島が戻ってくるという見方は、領土問題の本質は安全保障だと考えるロシアにはなかなか通用しない」と指摘した。                                                    

 

さらに兵頭氏は近年の日露首脳会談で、重要問題の一つとして北朝鮮問題が取り上げられるようになったことに言及しつつ、米ロ関係や中ロ関係が刻一刻と変化する中、「日ロ間で安保対話を積み重ね、東アジアの安全保障に共通の利害を見出していくことが、平和条約交渉を加速させるカギ」と述べた。

 

 

写真:ロイター/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。 

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