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韓国の対日政策の変化と日韓関係

投稿日 : 2018年12月28日

■木村幹『Voice12月号


神戸大学教授の木村幹氏は『Voice』の論文「なぜ対日政策が『雑』なのか」で、近年、日韓の経済格差は大幅に縮小し、韓国の貿易に占める日本のシェアはピーク時の40%から7%に、また韓国の軍事費は日本の水準に急接近しているとし、「彼らの日本に対する依存度は低下」しており、「韓国における日本の影響力の顕著な減少」を指摘している。そのうえで木村氏は、今日の韓国の問題は、彼らが「国家を挙げて反日政策に取り組んでいる」ことではなく、「むしろかつてのような日本への関心を失ったことで、まとまった方針や見通しなく場当たり的に対日政策を行ない、結果として日韓関係をかく乱してしまっている点にある」と分析する。

 

歴代の韓国政府は政権発足直後に対日政策を含む外交方針を提示してきたが、木村氏はそもそも「文在寅政権には対日政策の基本方針は存在しない」とする。同政権が望むのは南北や米韓、さらには中韓関係において、「日本が韓国の足を引っ張らないこと。日本は何もしてくれなければそれで良いという立場である」と分析、だから「この政権の対日政策は時に雑なものになりがちだ」と論じている。その上で、木村氏は韓国が“雑”な対日政策を行っている現状に対して、「韓国の対日政策に一定の秩序と規律を取り戻させるためには、日本からのメッセージこそが重要なのだ」と強調した。

 

 

■武藤正敏 『文藝春秋』12月号

 

元在大韓民国大使の武藤正敏氏は『文藝春秋』の論文「韓国『徴用工判決』文在寅は一線を越えた」で、“徴用工判決”が日韓関係に与えた衝撃度は「慰安婦問題などと比べ格段に大きい。韓国は、越えてはならない一線を越えてしまった」と強調した。特に、2005年当時に歴史の見直しを主張していた廬武鉉政権でさえ、徴用工の請求権について「個人の請求権は消滅」との認識を示しているが、文在寅大統領は当時の政府高官として談話作成にかかわっていただけに「驚くべき豹変ぶり」と断じている。

 

武藤氏は、韓国の反日姿勢について「国益を考えた反日ではない」とするが、その理由は、対中関係では強硬姿勢をとれないが、対日関係では「何をしてもいい」という感覚があるためで、「感情にまかせて『反日をしている』だけ」と批判した。また、武藤氏は韓国の司法界の現状についても構造的な問題を抱えているとし、「司法界には進歩派の人物が多く、そういう人たちが裁判官になっていると言われて」おり、「“左寄りな判決”が出る傾向が非常に強い」と指摘した。

 

 

写真:YONHAP NEWS/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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