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教育・入試改革のゆくえ

投稿日 : 2018年03月05日

■林芳正、藤原和博「大臣に改革の本義を質す」中央公論2月号

 

林芳正文部科学相は、「中央公論」における藤原和博奈良市立一条高等学校校長との対談で、2020年度から実施される大学入試制度改革など一連の教育改革について基本的な考え方を明らかにした。特に、今回の「高大接続改革」について、〝ゆとり教育″の反省を踏まえて基礎学力の向上を図るため、①十分な知識・技能の習得を促す②答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力など能力の向上を図る③主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ、という「学力の3要素」に基づいて、育成・評価することを目指していると強調した。

 

また、林文科相は、大学入試改革についても「重要なのは、各大学が入学者受け入れの方針、すなわちアドミッション・ポリシーを明確化することだと思う」と指摘。その上で、従来の東大を頂点とする「富士山型」の体制から、「こういう人材を育てたい」というカリキュラムを組んだ大学による「連峰型」の体制への転換を志向するとしている。さらに、林文科相は、「大学改革を進めるときに非常に大事になるのは、社会とのかかわり方だ」として、大学が受け入れた学生の育成について「大学は社会、産業界との『共創』関係を意識すべきです」と求めた。

 

 

■和田秀樹「ふたたび学力が低下する」中央公論2月号

 

精神科医の和田秀樹氏は「中央公論」の論文で、教育改革について「日本の受験生の学力とメンタルヘルスに危険な影響を与えかねない」としていくつかの問題点を指摘した。その第1は、センター試験から新たな「大学入学者学力評価テスト(仮称)」に切り替えられるが、「記述式」を重視する方式は「模範解答ばかりが求められて、ユニークな回答が排除される可能性ある」とする。

 

2は、「思考力・判断力・表現力」を踏まえた多面的な選抜方式について、「学力は高いが、表現力、面接力などに劣る『従来型』の生徒の逃げ場がない」とするとともに、改革が成功すればいいが「学力低下やその他の問題が生じた際のリスクヘッジがない」と批判した。

 

3は、〝主体的な学び″を重視する改革は、『ゆとり』派の巻き返しであるとするとともに、関心や意欲、思考や判断などの〝観点評価″、さらに面接、小論文の重視は客観的評価が難しく、最大の問題点は「公平性が担保されないことだろう」と指摘した。その上で、和田氏は「世界で評価の低い大学の制度が変わることのないまま、(中略)日本中の受験生にこのような『実験』を課すことが許されるとは思わない」と断じた。

 

 

■倉部史記「悩める高大、攻める企業 入試の外注化はなぜ進むのか?」中央公論2月号 

 

高大共創コーディネーターの倉部史記氏は「中央公論」のレポートで、教育改革の方針に賛同するとしながらも、教育現場は「改革疲れ」が蔓延しており、入試をめぐる民間企業への外注が加速していると懸念を表明した。特に、全国の大学における「中退者増加」が深刻化していることを例に挙げ、高校側はその実情を知らないままに、進路指導などを「民間サービスに依存していることが問題を根深くしている」と指摘した。具体的な中退者は、全国の大学・短大・専門学校で毎年1112万人に上り、中退率は年間3.3%、4年制大学では卒業までの中退率が12.6%に上昇しているという。しかも、中退者の多くが非正規雇用やニート状態に陥るとしている。

 

背景にあるのは「大学側の深刻な予算不足、人手不足である」とする。倉部氏は多くの大学が既に「学生募集業務のかなりの部分を民間企業のサービスに依存している」と指摘するとともに、企業依存はさらに進む傾向があり「民間サービスへの過度な依存は高校・大学にとっても、社会にとってもリスクになりかねない」と強調した。

 

 

■竹内洋、齋藤孝「求められるべきは『人間性』ではない」中央公論2月号

 

明治大学の齋藤孝教授は、竹内洋・関西大学東京センター長との「中央公論」での対談で、新しい学力として問題発見・問題解決型の学力が求められているが、「知識重視・暗記中心型の従来型の学力も大事」と強調している。その例として医学部での6年間の教育は「実習を除けば90%以上が暗記に費やされている」とする。

 

さらに、齋藤氏は大学入試改革で心配な問題点は「入試の多様性によってフェアネスが失われること」と指摘するとともに、個性重視で「AO入試」が導入されたが「一般入試で入ってくる学生に個性がないかと言いうと、そんなことはありません」と強調した。、齋藤氏は「改革がかえって大きなロスを生むことは少なくはありません」として、センター試験をあえて廃止するのだから「代わって登場する大学入学共通テストの責任は重い」と論じた。        

 

 

写真:Photoshot/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

                     

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