今月の論壇から

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日中国交正常化45年の日本とアジア

投稿日 : 2018年02月08日

 高村正彦「国交正常化45年 日中協調の道を展望する」外交 Vol. 46

 

自民党の高村正彦副総裁は『外交』のインタビューで、日中国交正常化から45周年を迎えた日中外交関係を振り返り、国交正常化という偉業を成し遂げた先人たちの大志に立ち戻り、「戦略的互恵関係という良い言葉を活かすような」両国のさらなる外交努力を求めた。日中間の大きな問題として未だに対立を続ける「歴史問題」についても、小泉純一郎元首相の靖国神社参拝(2001年8月)が日中関係に緊張をもたらしたとした上で、「小泉さんの靖国参拝は、結果として未来志向を重視する中国国内の動きであった『新思考』の出鼻をくじき、比較的親日派と目されていた胡錦濤主席の立場を弱めることになったしまったのは、残念なことでした」と振り返った。

 

また高村氏は、「戦略的互恵関係」は日中両国が協力してアジア地域や国際社会に貢献していこうということであるとして、中国が推進するアジアインフラ投資銀行(AIIB)や「一帯一路」構想について、「構想の根底には国際社会に貢献していこうという姿勢もあるわけですから、積極的なところは評価して、我が国も協力する姿勢を見せることは重要」と指摘した。特に高村氏は、現時点では日本が枠組みの外にいるAIIBについて、「中国が国際的スタンダードを備えてくれる可能性があるとすれば、日本の参加を排除するものではない」との考えを示した。

 

 

馬立誠、栄剣、宮本雄二、高原明生 「日中国交正常化の『初心』に還れ」中央公論 1月号

 

宮本雄二元駐中国大使は、『中央公論』の日中知識人座談会で、日中国交正常化45周年について「積極的に評価すべきであり、将来についても悲観的になる必要はない」との認識を示した。宮本氏は、1972年の「日中共同声明」、78年の「日中平和友好条約」、98年の「日中共同宣言」、2008年の「『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明」を、日中関係の基礎に位置づけられる重要な「4つの政治文書」と説明。その上で、今日の両国を取り巻く情勢を踏まえて「今後の45年を見据えた新しい枠組みを作ってもいい」と述べ、新たな両国関係の方向を示す第5の文書作りの必要性を指摘した。

 

宮本氏は「第5文書」の具体的な内容について、「安全保障の問題を一つの大きな柱として盛り込み、両国関係を中長期的に安定させる戦略的枠組みを構築すべきだ」と提言した。

 

これに対し馬立誠元『人民日報』論説委員も、この45年の最大の成果は「4つの政治文書」ができたこととし、その存在は「心強いものでした。これからも大事にしていかなければなりません」と応じた。第5文書の作成についても賛意を示し、その理由として① グローバリゼーションが退化している②朝鮮半島の核の問題で日中両国には安全保障面での共通の利害がある③日中経済交流や貿易の新たな問題が出てきている―との考えを示した。

 

これに対し高原明生東京大学教授は、最近の日中関係について「両国民の間の誤解、理解の欠如はとてもひどい状況にあり、私は危険なレベルに達しているように思います」との懸念を表明した。また、尖閣や靖国の問題が数十年にわたり解決しないままになっていることについても、「私たちはしっかりと振り返って、どこに問題があるのかを分析し、反省すべき点はしっかり反省しなければなりません」と強調した。

 

また尖閣、靖国、歴史の3つの問題について北京錦都芸術センター事長の栄剣氏は、過去10年間の日中関係を振り返り、これら3つと最近中国国内で大きな反発を生んでいる憲法改正問題を解決しなければ「単なる抽象的な友好論にとどまってしまう」と指摘し、中国にとって最も重要な経験は「平和と発展であり、これはまさに時代のテーマである」と強調した。

 

 

福田康夫 「政治家は将来の姿を語れ」文藝春秋 1月号

 

福田康夫元首相は『文藝春秋』のインタビューで、日中関係の改善について「中国経済が今後もどんどん大きくなるから仲良くしなければ」というような態度で接するべきではなく、「あらゆる面で意思疎通を密にし、お互いに協力し合うのが当たり前と自然に考えるような関係になりたい」とするとともに、地理的なことからも「日本は『緊密な日米関係だけ』ではやっていけません」と強調した。

 

福田氏は北朝鮮問題について、「現状では安倍首相の訪朝はないでしょう」との見方を示す一方で、問題解決のカギは中国の出方次第であり、韓国に駐留米軍を派遣する米国との協議により米中両国が「方向性を見出さないと何も進まないのが現状です」と述べた。

 

また現在の日韓関係については、北朝鮮情勢が危機的な状況の中で「日韓がお互いに不毛な争いを続け、政治的なお付き合いもうまくできないような状況は極めて残念なこと」と指摘した。さらに韓国側から事あるごとに期待の声が上がる天皇陛下の訪韓については、こうした日韓間の関係改善が進まない状況下ではありえないとし、「安心してそうした議論ができる状況を作るのが政治の責任であり、順序が逆になってはいけない」と明言した。

 

 

写真:新華社/アフロ


※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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