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「平成」という時代

投稿日 : 2018年01月30日

■北岡伸一 猪木武徳 「這い上がろうとしては滑り落ちた30年」中央公論1月号

 

北岡伸一国際協力機構(JICA)理事長は『中央公論』の猪木武徳大阪大学名誉教授との対談で、改元(1989年)から30年を迎える「平成」という時代について、政治改革や行政改革を断行しながら効果が出せないままに流れていってしまうような「努力はするのだけれど、滑り落ちるという」時代だったと評した。

 

これに対し、猪木氏は「統合と分離を繰り返してきた」時代だとして、政治的には1993年の細川政権、2009年の民主党政権という2度の政権交代、経済的にはバブル崩壊、アジア通貨危機、リーマンショックの3度の混乱を経ながら、結果的には「その限界だけが露呈して、むしろトラウマになった」時代だったと強調した。

 

特に北岡氏は、安全保障問題では日本を自立した〝普通の国″にしようとしてきたが、「あまり実現しませんでした」と言明するとともに、その根幹ともいえる憲法9条をめぐる日本国内の〝精神的分断″は「いまだに解消されていません」と断じた。猪木氏も、日本人の安全保障に対する認識について「現実遊離のメンタリティーという点では戦前と変わっていない」と指摘した。

 

北岡氏は総体として、日本は「平成」時代を通じて本質的改革を怠り小手先の対応を繰り返したため「国際社会では、一流国から二流国になった」と指摘し、その国民意識を象徴する言葉が、新党さきがけ代表の武村正義氏の言葉である「小さくともきらりと光る国」だったと強調した。しかし、北岡氏は二流国になっても日本が世界に影響力のある〝大きな国″であることには変わりなく、これからは「我々独自の判断をして、もっと自立することを考えるべきだ」と論じた。

 

 

五木寛之 井出英策 「日本は本当に貧しくなったのか」中央公論1月号

 

慶応義塾大学の井出英策教授は『中央公論』の作家・五木寛之氏との対談で、最近の日本人は「貧しさ」を自覚しなくなっていると論じている。井出氏によると、日本人の所得は経済協力開発機構(OECD)加盟35ヵ国のうち20番目くらいであるにもかかわらず、内閣府の暮らしぶりに関する調査では「中流」回答が92.1%に対し、「下流」回答は4.8%と少なく、明らかに貧しさの〝自覚”がないと指摘した。相対貧困率でも日本は15.6%となっているが、実際には生活が貧しい世帯収入「300万円未満」が33%にも上っていることを挙げ、日本では「中の下で踏ん張っていると信じたい人が大勢いる」と強調した。

 

井出氏は、「貧しさ」を自覚しない理由として、日本のかなりの世代に「貧乏の記憶」がないことを挙げた。井出氏によれば高度成長期にはまだ「貧乏の記憶」があったが、今はそうした記憶が消えたため「生活水準がどんどん諸外国に追い越されているのに(中略)今の状況がなんなのか分かっていないという問題がある」と指摘した。しかも、日本は格差社会になりつつあるにかかわらず、日本人はその格差を減らそうとしていないと指摘する。

 

なぜならば、最近の日本人は「自分たちの生活防衛に必死だから、社会の格差をなくしていこうとか、社会をもっとよくしていこうというふうにエネルギーが外に向かわない」と〝内向き志向”に懸念を示した。その上で、井出氏は人口急減時代を迎えた日本は、「連帯」や「互助」の仕組みづくりを急がないと「手遅れになってしまう」と主張した。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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