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北朝鮮情勢と日本の安全保障

投稿日 : 2017年09月07日

※北朝鮮のミサイル発射及び核実験が、各誌9月号発行後も続いています。
 以下は、8月上旬までの段階での議論です。

 

■小野寺五典 「ミサイル防衛は新たな段階に」 外交Vol.44

 

小野寺五典防衛相は『外交』のインタビュー(防衛相就任前に実施)で、核・ミサイル開発を進め大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に至った北朝鮮情勢について、「北朝鮮は24時間365日、どこから撃つかわからない状況で、これを日本の現状の装備で警戒体制を続けることは、かなりの無理がある」として、「日本のミサイル防衛をもう一段進める」ために陸上イージス(イージス・アショア)の導入やイージス艦「4隻」から「8隻」態勢への増強の必要性を強調した。

 

また小野寺氏は、自民党が今年3月にまとめた「ミサイル防衛提言書」に盛り込まれた「敵基地反撃能力の保有」について、北朝鮮に対し「一発目を撃たれたら二発目は撃たせない」という反撃力の抑止効果は大きいと指摘。その法的根拠についても、政府が1956年に「急迫不正の侵害に万やむを得ない必要最小限の措置を取ること、例えば誘導弾等の敵基地の攻撃は認められる」とする政府見解を出していることを挙げ、「状況の整理さえきちんとできれば、憲法に抵触するような問題はありません」と明言した。

 

さらに、小野寺氏は、日本は専守防衛に徹してそれ以外の安全保障上の行動は米国が担うべきだとの従来からの役割分担論について「そのような線引きは、あまり有効ではない」との認識を示し、「日本を取り巻く国際環境が悪化するなか、日米がさまざまなレベルで協力して初めて、日本の安全保障が保たれるのが現実」と強調した。ミサイル防衛体制強化のため日本独自の早期警戒衛星の保有についても、米側には「日本が独自の技術を持って、米国を無視した行動をとるという懸念は、彼らにほとんどありません」と述べ、独自の早期警戒衛星の保有など攻撃に耐える「抗堪性」を高めるため議論を日米間で開始すべきであるとの考えを示した。なお小野寺氏は、このインタビューが行われた時には、自民党がまとめた報告書「ミサイル防衛提言書」の座長を務めていた。

 

 

■秋山昌廣 「新しい『封じ込め』への戦略――北朝鮮をめぐる『不都合な真実』を超えて」 外交Vol.44

 

元防衛省事務次官で安全保障・外交政策研究会代表の秋山昌廣氏は『外交』の論文で、核武装がほとんど既成事実と化した北朝鮮情勢について、「いまやわれわれの選択肢は、それを事実上黙認するか、それとも10年、20年の長期的な時間をかけてでも何とかして朝鮮半島の非核化を実現するか、二者択一の状況になった」と厳しく分析している。その上で秋山氏は、①北朝鮮に対する宥和策は当面取るべきでない②戦争の引き金になり得るこちらからの軍事行動をとってはならないし、韓国と日本の安全保障を考慮すれば取りえない③北朝鮮の今後の核実験とミサイル発射の続行に対する措置に対しては、韓国内の米軍基地に戦術核兵器を再配備することが望ましく、それは南北間の相互抑止への信頼性を増大させ、対等な南北対話を促進する土台となる――と論じた。

 

秋山氏は、日本の対応について、ミサイル防衛体制の強化などは「北朝鮮に核抑止力の限界を知らしめ、対話に引き出すことを目的にしている」との認識を示し、当面「日本は北朝鮮を対話路線に引き戻すための中国の行動を支持すべきである」と強調した。そうでなければ、米中ないし米朝が接近し直接対話が進み「日本は出番なしということになる」と指摘した。

 

日韓関係でも、秋山氏は韓国の文在寅政権も対話路線を模索しており、「その対話手法や内容を十分チェックしたうえで、日本としても、対話政策を積極的に評価し、これに合わせて日朝対話の再開を真剣に考えるべきである」と主張した。秋山氏は、北朝鮮の非核化について「対話を通じ、南北朝鮮の平和的共存から平和的統一に向かっていくなかで初めて実現できる」としている。

 

 

■遠藤乾 「核保有国北朝鮮と相対する覚悟」 中央公論9月号


国際政治学者の遠藤乾氏は、『中央公論』の時評で、北朝鮮の核開発・ミサイル発射実験に対して、「同盟国の多大なる犠牲を覚悟することなく、戦争など起こせないのが実情だ」として、日米韓3カ国が軍事的な“外科手術”を起こすことは困難だとの見方を強調した。トランプ米大統領の強硬姿勢についても「開戦に至らないということが、誰の――なかんずく金正恩氏の――目にも明らかになった」と、北朝鮮への「圧力」の底が見えてしまったとしている。

 

また、日米韓が中国に対して牽制するというシナリオについても、「中国は、本音では北をどんなに疎んじていても、地政学的な考慮から息止めるようなことはしない」と分析、韓国へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備で悪化した中韓関係修復のために、「韓国は、日米主導の対中圧力にいずれついていけなくなるのではないか」と指摘した。
安倍首相が、南北対話に動こうとしている文韓国政権に対して「いまは最大限圧力をかけるときで対話の時期ではない」と牽制していることについても、「いまや空虚に響く。北にとって、圧力は怖くなく、もともと対話への誘因とはならないからだ」と断じた。

 

こうした流れの中で、遠藤氏は「(日本は)ポジションを考え直す準備を今からしておかねばならない。不愉快でも、北の核を認め、それと共に生きねばならぬ可能性。その現実を今一度見つめる時期かもしれない」と結論付けている。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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