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揺れる東アジア

投稿日 : 2017年08月17日

■ 宮家邦彦 「東アジアの『勝ち組』に残れるのか」  Voice 8月号

 

外交政策研究所代表の宮家邦彦氏はVoiceの論文で、ミサイル発射実験と核開発を続ける北朝鮮について、「北朝鮮の望みは『生き残り』であって『挑発』ではない」と強調した。金正恩の目的は、核保有国として認知され、その軍事力を背景に米国と平和条約を締結することであり、北朝鮮は「常軌を逸しているどころか、実に合理的な戦略をもっている」と分析する。

 

また、宮家氏は、日米韓3カ国のこれまでの対北朝鮮政策が「宥和政策」であったと批判的に捉える。日米韓が圧力よりも対話を重視せざるを得なかったのは、「中韓共に朝鮮半島の現状変更を望まなかったからである」として、「こうした『宥和政策』はいつか破綻する運命にある」と論じた。

 

今後の留意点について、宮家氏は東アジアにおける「力の真空」の発生を懸念し、「北の内部崩壊にせよ、米海軍の活動縮小にせよ、東アジアでは『力の真空』は瞬時に生じ得る」と指摘する。その上で、日韓両国にとって、最悪のシナリオは、①米国が初動でしくじり、中国が最強部外者として「真空」の利益を独占し、半島北部を事実上併合すること②そこに至る前に、米国が核保有国北朝鮮を黙認し、現状維持で妥協を図ること、だとしている。

 

では、日本は戦略的に何をしなければならないか。宮家氏は「東アジア地域に自ら『力の真空』をつくらないこと」とし、同盟国や友好国との抑止力の維持・拡大を怠らないことだとする。また、万一「力の真空」が発生した場合、日本は「利害関係がある部外者」として関与し続けることだと論じている。その上で、「常に国際社会と共に、普遍的価値という大義とともにあり、よい意味での『勝ち組』として残ること」と結論付けている。

 

 

【対談】川島真 × 倉田徹 × 福田円  「民主と自由の最前線―香港・台湾から考える東アジアの未来」 世界8月号

 

今年7月、香港返還から20年を迎えた。川島真・東京大学教授は、「世界」での倉田徹・立教大学教授、福田円・法政大学教授との対談で、香港や台湾が東アジアや西太平洋全体の「民主と自由の最前線」であるにもかかわらず、日本が「果たしてどれだけ貢献できているかは疑問」と指摘した。特に川島氏は、日本の香港へのかかわりが過去10年間で急速に薄れ、台湾についても「親日かどうかという単純な理解にどんどん向かっている」と懸念を示した。

 

また、トランプ米大統領は就任直後に「一つの中国」政策の見直しを示唆したが、川島氏は、台湾問題に対する米国の姿勢は、「北朝鮮問題等をめぐって中国の出方を見るためのテストを課している」ことから、当面、米国が台湾に対して何かを具体的に仕掛けことはないと分析する。同時に、米国の台湾政策の不透明感は、オバマ前政権が進めてきた西太平洋の同盟国同士の関係構築である〝横の連携″について、「トランプ大統領がどこまで関心を持っているかわからない」ためだとしている。一方、川島氏は香港に対する米国の対応について「人権問題はともかく、国際政治的な『ディール』の材料にはならない」と断言した。

 

一方、「1国2制度」の香港では、制度の〝50年不変″期限である2047年を見据え若者を中心に「民主自決」を目指す動きがあるのに対し、中国は2049年が「建国100年」あたることから、香港の〝中国化″を推し進めようとしている。倉田氏は、こうした状況について「香港は、中国と一番真正面で向き合っている『前線』の社会である」と強調し、日本にとって香港問題は「中国の台頭のなかで日本が東アジアでどのような存在を目指すか」を考える上での重要な参考点になると論じた。

 

 

写真:地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」 ロイター/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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