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グローバリズムの危機と東アジアの危機

投稿日 : 2017年07月12日

グローバリズムの危機と東アジアの危機



●グローバリズムの危機

 

・伊藤元重 「選択的グローバリズムの潮流」 外交 Vol.43 

 

東京大学名誉教授で学習院大学教授の伊藤元重氏は、「外交」の論文で、英国の欧州連合(EU)離脱や「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領の登場など国際的にはグローバリズム批判の潮流が強まっているとしながらも、「日本は、日米経済対話、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉などを通じ、世界を正しい方向にリードする役割を担っている」と主張した。その上で、「モノ」「カネ」「人」が自由に移動するグローバル化には「良し悪しの両方がある」として、「現時点で望ましいグローバル化とは何か」を真剣に検討する時期に来ていると論じた。

 

伊藤氏は、トランプ政権の経済政策について、「市場の反応は『様子見』というところでしょう」としながらも、同政権が経済活性化の政策を掲げたことを「世界経済の流れとも調和し、実行されれば景気上昇の可能性は高い」と評価した。特に米国がTPPを離脱したことについて「米国が二国間交渉に方針転換したことと保護主義であるかどうかは、基本的には別問題」であって「これまでのところ、米国が保護主義の政策を行っているわけではない」と指摘した。

 

また、伊藤氏は日米経済対話スタートについて「両国が前向きに交渉に臨めること自体を評価してもよい」とする一方で、TPPについても、「続けていれば、交渉がまとまるかどうかはともかく、保護主義的な動きの防波堤になる」としてTPP交渉継続の必要性を強調した。

 

また、2015年秋の株価暴落で露呈した「チャイナ・リスク」について伊藤氏は、「コントロールされながら小康状態を保っている」としつつ、日本としては「米中のバーゲン」により、「ドル高を警戒するトランプ政権と、人民元安を止めたい中国の思惑が一致して、政治決断で一気に事態が動くリスク」に警鐘を鳴らした。

 

 

・船橋洋一 「リべラル・インターナショナル・オーダー」 文藝春秋 7月号

 

ジャーナリストの船橋洋一氏は文藝春秋のコラムで、トランプ政権誕生後の米国について「米国が戦後、果たしてきた『自由で開かれた国際協調主義』(リベラル・インターナショナル・オーダー=LIO)を守る役割を放棄してしまったように振舞っている」との懸念を示した。その上でTPP離脱、NAFTA改悪交渉、反グローバル主義的主張、二国間貿易交渉推進などを挙げ、「アメリカ・ファーストのトランプ政治はおそらく失敗に終わるだろう」と予測した。

 

船橋氏は、こうした状況下において、日本は「米国不在を歴史的機会と捉え、積極的なアジア外交を探求するときである」と主張した。アジアの秩序に“LIO”を根付かせることが「日本の通商と安全保障と地域秩序の長期的な戦略を構築する上で、不可欠である」とするとともに、そのためには「中国と張り合うのではなく、中国をも包み込む長期ビジョンを描くときである」と論じた。

 

 


●東アジア情勢、日本の外交力

 

・河野洋平 「東アジアの危機をどう克服するか」  世界 7月号

 

河野洋平元衆議院議長は、「世界」のインタビューで、北朝鮮の核・ミサイル開発で朝鮮半島の緊張が高まっていることに関連して、「こういう状況だからこそ外交が重視されなければならない」と強調した。しかし、日中、日韓の個別相互訪問が近年、実現していないこと指摘し、「関係各国と協議して共同歩調をとる、そのための基盤となる信頼関係の醸成ができていない」と懸念を示した。

 

特に、河野氏は日韓関係について、「過去において日韓関係が良好だった時代は、韓国がリベラル政権の時代」と指摘した上で、「新政権においては前政権で停滞した状況を新しく動かし始めるわけですから、日本側が誠意をもって向き合うことが重要ではないか」と強調した。さらに河野氏は、今から40年前、福田総理がアジア歴訪時に表明した福田ドクトリンの精神が「北東アジアについても当然当てはまる」と主張した。

 

 

・二階俊博 「自民党幹事長 すべての疑問に答える」 文藝春秋 7月号

 

自民党の二階俊博幹事長は、「文藝春秋」のインタビューで、日中関係について、「若干首脳会談が途絶えていますから、まずは首脳会談を早くやるべきです」と、日中シャトル外交を再開し日中関係の再構築を図るべきだとの考えを強調した。同幹事長が5月に訪中した際、安倍晋三首相の親書を手渡したことについても「非常に丁寧な、行き届いた親書を届けました。本気度は十分伝わったと思います」と述べた。

 

また同幹事長は、韓国新政権による「慰安婦合意」への対応についても、「日本は堂々と、『日本としては不満である。こんなことは国民に説明できない』というべきです。そういうことを言うためにも、緊密に会えばいい」として、今後、日韓間で緊密な協議を重ねれば「自ずと解決する」との見方を示した。  




写真:独ハンブルクでのG20首脳会議(2017年7月7日) ロイター/アフロ



※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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