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北朝鮮をめぐる米中の思惑と日本の対応

投稿日 : 2017年06月09日

北朝鮮をめぐる米中の思惑と日本の対応

 

 

■【対談】 川島真  東京大学教授 x 平岩俊司  南山大学教授 

 「日韓を窮地に追いやる米朝協調シナリオ」 中央公論6月号

 

平岩俊司・南山大教授は、『中央公論』6月号の川島真・東大教授との対談で、北朝鮮の核・ミサイル開発問題について、米国が北朝鮮を軍事的に叩くという選択肢がある一方で、米国内にミサイルが飛来しないという条件であれば、トランプ米政権が「北の核保有を容認するという選択肢もあることに注意が必要」と指摘した。これに対する北朝鮮の対応についても、平岩氏は状況が切迫すれば「攻撃するか、どこかで手を握るかの両極端の話に、容易になる」として、「北にとっても『凍結』はあり得る選択」と強調した。つまり、北朝鮮は米国に到達する長距離ミサイル(ICBM)の開発を凍結し、一方で日本が射程内である中距離ミサイルを容認することになるが、平岩氏は「そんな風に手を握られたら、非常に困ったことになる」として、米朝妥協は日本にとっての“悪夢”になりかねないとの懸念を示した。

 

川島氏は、北朝鮮情勢のカギを握る中国の動向について、今年は習近平政権にとって“人事の年”であり、「北朝鮮に対して踏み込み過ぎても退きすぎても、国内から揚げ足を取られる可能性がある」と指摘し、中国が本格的に動き出すのは「今年の秋以降ということになるだろう」との見通しを述べた。具体的には7月の米中包括戦略、同月のG20首脳会議と再度の米中首脳会談、10月の中国共産党大会を経て動き出すとしている。平岩氏も「当面は今の緊張状態が続く公算が大きい」とするとともに、米朝が対話を模索する場面が出てくる可能性もあり、その際には「やはり、中国が仲介役となって米朝接近というシナリオが一番あり得ると思う」と強調した。

 

また、川島氏は日本の対応について、安倍政権がスタートした2012年当時より状況はやりやすくなっているとしながらも、最近の北朝鮮情勢に対する「対応がやや単純化している感が否めない」として、「もう少し国際社会で具体的なイニシアチブを発揮したりトランプ政権にもっと肉薄するとか、あるいは中国ともう少し対話ができないか」と指摘した。

 

 

■【対談】船橋洋一(ジャーナリスト) x 半藤一利(作家) 「太平洋戦争の失敗に学べ」 文藝春秋6月号

 

ジャーナリストの船橋洋一氏は、『文藝春秋』6月号の作家・半藤一利氏との対談で、北朝鮮情勢について、「中朝関係が可分か不可分か。そこが今回これまでといちばん性質が異なるところかもしれない」と指摘した上で、「金正恩と中国との関係は微妙」と分析する。中国は従来、安全保障上の緩衝地帯として、北朝鮮政権の崩壊を回避することを優先してきたが、船橋氏は中国政権内に「ここにきて同盟によるプラスよりマイナスの方が大きいと見始めている人々が指導部層に生まれ始めている」と分析し、「おそらく習近平もそちらではないか」との見方を示した。半藤氏も「中国はいま、北朝鮮可分論に傾きつつあると私は思うんです。そしてトランプ政権も中朝可分と見ている節がある」と同調した。

 

船橋氏は今後の展開について、大きな2つの選択肢があるとする。1つは北朝鮮体制転換の「レジーム・チェンジ」、できれば金正恩排除の「リーダーシップ・チェンジ」だが、中国はレジーム・チェンジには応じないとする。もう1つの選択肢は米国が北朝鮮を強引にテーブルにつかせ交渉することだが、その場合、米国は「非核」にこだわるのか、核・ミサイル開発の「凍結」で行くのか、トランプ政権はまだそのことを検討していないと指摘した。これに対し半藤氏は「凍結でいいと思う」と明言し、その理由として第二次世界大戦における「満州事変の教訓」を挙げ、「『満州は日本の生命線』、同様に『核とミサイルは北朝鮮の生命線』、ここまで来たらゼロに戻すことはもう不可能」とし、北朝鮮が“ポイント・オブ・ノー・リターン”を超えてしまっている以上、核・ミサイル開発の凍結論でやむを得ないと強調した。

 

 

写真:ロイター/アフロ


※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません

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