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緊張高まる北朝鮮情勢と日米外交

投稿日 : 2017年05月16日

緊張高まる北朝鮮情勢と日米外交

 


■評論家  船橋洋一 「第三次朝鮮半島核危機」 文藝春秋5月号

 

評論家の船橋洋一氏は『文藝春秋』のコラムで、緊迫化した北朝鮮情勢について「北朝鮮は2020年までに100個の核を保有し、また2、3年以内に米国西海岸に届く大陸間弾道弾(ICBM)を開発する、と予測されている」としながらも、実際問題としては米国などによる「核能力を無力化する先制的軍事攻撃は極めて難しい」と分析する。米国は“軍事的葛藤”を望んでいないにもかかわらず軍事的オプションをチラつかせるのは、「中国が対北朝鮮制裁に中途半端な姿勢を取り続けるならば、軍事手段も辞さないという脅しである」と見立てている。

 

船橋氏は、対北朝鮮への「制裁は戦略でない」と断言する。その理由は、制裁が体制転換なのか、北朝鮮を交渉の場に引き出すためなのか、判然としていないからだと指摘する。結論的には「もう一度、北朝鮮を『非核化』の交渉のテーブルに引っ張り出すことを考えなければいけない」と強調する。その場合、「米朝協議」と「5者協議」(米、中、韓、日、露)を立ち上げ北朝鮮制裁を強化し、交渉に応じなければ「制裁強化を伴った『封じ込め』協調政策を実施する」よう提案する。もし北朝鮮が体制崩壊したら「5者協議を危機対応装置に切り替える」ことを求めている。

 

 

■薮中三十二 立命館大学特別招聘教授(元外務省事務次官)

 白石隆 政策研究大学院大学学長

 飯塚恵子 読売新聞編集局国際部長 

鼎談「日本はアジアとのパイプ役を担え」 外交42号

 

元外務省事務次官で立命館大学特別招聘教授の薮中三十二氏は『外交』の鼎談で、トランプ米政権の国務省予算カットについて「軍事力を重視する一方、外交を軽視しているのではないか」との懸念を示す。緊張が高まる北朝鮮情勢についても、米国の当面の対応は「中国に対して圧力をかけるよう働きかける」ことと分析しながらも、“対話路線”か“軍事的懲罰”かについては、将来的には「どちらの対応もあり得る」と強調した。一方、薮中氏は貿易赤字と為替操作問題などで揺れる米中経済関係について、米中経済は密接な関係にあり、最終的には「中国がトランプ大統領に花を持たせる材料を準備することで、夏ごろまでには問題が収束すると見ている」と指摘した。

 

政策研究大学院大学学長の白石隆氏は、歴代米政権はアジアを「面」としてとらえ多国間外交と二国間外交を同時並行に進めてきたが、トランプ政権は「そういう観点で考えていない」と分析する。このため、米国のリバランシング(アジア回帰)やアジア太平洋における「ハブとスポーク」の海洋同盟がどのようになるのか不透明だと指摘した。また、白石氏は米国の環太平洋経済連携協定(TPP)離脱に関連し、東南アジア諸国連合(ASEAN)は「中心性を維持するためにも東アジア地域包括的経済連携(RCEP)をとりまとめたいと思っている」とした上で、「RCEPに加え、AIIB(アジアインフラ投資銀行)もどう利用するかを考えるときが来ている」との見方を示した。

 

 

■小原雅博 東京大学大学院教授 「国益とは何か」 中央公論5月号

 

東大大学院教授の小原雅博氏は『中央公論』の論文で、トランプ時代における日本の戦略について、①揺るぎない日米同盟の構築②日中関係の改善③強靭なリベラル日本の再生―を提言した。小原氏は、トランプ政権誕生で国際関係に生じている“2つの危機”が「安全と繁栄と秩序という日本の国益を直撃する」と指摘した。その危機とは、「大国間のパワーシフトの過程で引き起こされる戦争の危機」であり、法の支配や自由で開かれた国際経済システムによって支えられている「リベラル秩序の瓦解の危機」であるとする。

 

小原氏は、この危機を乗り越えるためには、第1に「厳しさを増す安全保障環境の中で、(中略)有事を含む日米連携を強化する努力がこれまで以上に求められる」として、揺るぎない日米同盟の構築努力を挙げる。第2に、「日中関係を安定させ、ウィン・ウィンの協力関係を発展させる」ことを挙げ、「対話の場として日米中三国首脳会合を立ち上げられれば、緊張緩和や信頼醸成に資する」と提言した。第3は、日本が長期衰退から脱するために力強い経済成長を取り戻すとともに、「強靭でリベラルな国家として、志を同じくする諸国と結束して、『自由で開かれた、法の支配に基づく国際秩序』の擁護に立ち上がるべきだ」と主張した。

 

写真:AP/アフロ

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません

 

 

                 

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