今月の雑誌から

一覧に戻る

都市の住宅問題

投稿日 : 2017年04月20日

都市の住宅問題

 

◆野澤千絵 東洋大学教授

「産官民がつくり出した『住宅過剰社会』の歪み」  中央公論4月号

 

東洋大学の野澤千絵教授は「中央公論」4月号の論文で、人口減少の中で「空き家」が急増しているにもかかわらず、野放図に住宅が作り続けられている「住宅過剰社会」の歪みについて説明している。日本の住宅総数は6063万戸(2013年度)で、総世帯数5245万世帯に対し16%も上回り、空き家も全国で820万戸(空家率13・5%)に達している。しかも、野澤氏は「東京都や愛知県などの大都市でも2025年ごろには世帯数が減少に転じる」と同時に、団塊世代と団塊ジュニア世代の実家の相続という「大量相続時代」を迎えることで、空き家の増加に拍車がかかるとする。

 

また、住宅・建設業界が、賃貸ではなく分譲のマンションを建て続けていることについて、野澤氏は、は初期投資が短期で回収できるうえに、維持管理責任も入居者に移行する点を挙げ、「売りっぱなしで済むからである」とその無責任な対応を批判。同時に、タワーマンションの林立を助長する背景には、「都市計画や住宅政策としての丁寧な検討や調整を行える仕組み自体がない」ことを指摘し、こうした住宅過剰社会の転換のためには、①住宅総量と居住地面積拡大の抑制②新築住宅の立地誘導や中古住宅市場の成熟化③国民が「『更にもう一歩先』の将来リスクや資本価値」を見極めることだと論じている。

 

 

◆藻谷浩介 日本総合研究所主席研究員

「お台場の超高層マンションが『負け組』になる日」  中央公論4月号

 

日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は「中央公論」4月号で、「『空き家問題』は田舎ではなく都市部の問題、もっと言えば大都市圏の問題である」と指摘。東京都(82万軒)をはじめ神奈川・千葉・埼玉の一都三県で全国の約4分の1にあたる200万軒以上の空き家があるとしたうえで、「ただでさえ空き家が多いところに新築物件の供給を続ければ、家賃水準の下落→不動産価値の下落→固定資産税収の下落」という負の連鎖が起きると説明する。また、特に都心の高層マンションは、将来的に住居者の高齢化や管理組合の運営などに不安要素があるとし、大都市圏では、家を買うのではなく「そのお金で家を借りた方がいい」と持論を展開している。

 

住宅の過剰供給への対策として藻谷氏は、「空き家問題に対処するには供給を制約するのが本道」と主張。「供給規制は、税収の維持増加と空き家の増加抑制を、一挙両得でもたらす」とし、具体的な事例として、マンション等の高さ制限がある東京都国立市、長野県軽井沢町では、規制がブランドの維持や高い地価につながっていると紹介している。

 

写真:ロイター/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信