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日ロ首脳会談の評価/孫正義という存在

投稿日 : 2017年02月06日

■ 日ロ首脳会談の評価

  

  

・遠藤乾『プーチン来日 宴の後に日本に訪れた自問の冬』中央公論2月号

 

aflo_OWDG753127国際政治学者の遠藤乾氏は中央公論2月号の時評で、2016年12月末の日ロ首脳会談に成果がなかったと受け止められたことに関して「それは過剰な期待のなせる業である」と論評した。遠藤氏は、今回の来日で強硬な姿勢を貫いたプーチン大統領は、「最大限甘く見積もって二島の帰属はともかく引き渡しまでは仕方ないとして、それをどう高く日本に売るか」を考えていると指摘。これに対して、日本は「いかにその対価を抑えるかを考えねばならない」とする。

 

両国の立場については、日中関係が対立的になるほど「日露関係を改善する誘因は日本側で高まる」と見る一方で、親ロ的なトランプ米政権の誕生など昨今の情勢を考えると、「プーチン大統領に領土問題を解決する誘因が高まっていくのかは疑問」と分析。このため、「日本にとり、領土問題妥結の対価は高くなっていくだろう」と分析する。

 

ただ、遠藤氏は、プーチン政権のように安定し、アジアへの関心を持つロシア政権が今後も現れるかは不透明であることから、日本側は「このまま現状を放置するのか、それともそれなりの対価を払い、限定的な成果でよしとするのか」という自問をさらに引きずることになったとしている。

 

山内昌之 佐藤優『プーチンは、国境は動くと言ったのだ』 中央公論2月号

 

作家・評論家の佐藤優氏は、中央公論2月号の山内昌之東大名誉教授との対談で、日ロ首脳会談について、「両国は大きな成果を得た」と評価するとともに、「一~二年のうちには、道筋が見えて来るのではないでしょうか」と日ロ交渉の進展に期待を寄せた。

 

佐藤氏のスタンスは1956年の日ロ共同宣言(歯舞、色丹の2島返還)に基づく交渉を優先すべきだとの立場。交渉を評価する理由は、従来の北方領土問題を解決して平和条約を締結する従来の“古典的な”手法ではなく「(両首脳が)もっと大きな戦略的な視点、思考の中にこの問題を組み入れていた」ことだとする。

 

さらに、佐藤氏は、プーチン大統領が記者会見で北方領土問題について、1855年の日露和親条約まで遡って歴史認識を表明したことについて「いままで国境線はこんなに動いてきましたよ。今のだって動かせるのです」というメッセージを発したものだと前向きに解釈した。

 

山内氏は、ウクライナやシリアをはじめ様々な要因でユーラシアが不安定化するなか、日本という国が、ロシアにとって「潜在的に領土問題、平和条約締結問題を抱えながら、事実上の平和状態を築けるような、頼りになるパートナー」であると主張。山内氏は、「日本との関係を壊すことは得策ではない」と考えるプーチン大統領が、地球儀を俯瞰する外交を提唱する安倍首相の戦略的思考に共通点を見出しているとし、「図らずも日露のリーダーに戦略性を持った長期政権が築かれているという『歴史の狡知』を、生かさない手はありません」と論じている。

 

・山口敬之『安倍・プーチン「密室の攻防劇」』 文藝春秋2月号

 

ジャーナリストの山口敬之氏は、文藝春秋2月号で、日ロ首脳会談の舞台裏の攻防をレポートし、「プーチンは今回の会談で、安倍のデザインした新しい交渉の土俵に乗ってきた」と日本側にとって成果があったとしている。会談後発表された「プレス向け声明」は5項目から成るが、山口氏は「四島」「特別な制度」「決意」の3項目が重要なポイントであり、「目指していた三つの項目を、安倍は力技でもぎ取った」と評価した。

 

特に、山口氏は領土交渉と対ロ経済協力をめぐって、首相官邸や外務省に「経済協力先行やむなし」派と「経済協力食い逃げ阻止」派の厳しい対立があったとした上で、「安倍は結局、『新しいアプロ―チ』を止めない方を選んだ」としている。だからこそ、山口氏は、三項目の中で「決意」こそ、安倍首相がこだわった部分であると強調する。

 

山口氏は、「安倍はプーチンに何度も『決意』という言葉を投げかけた。その言葉に『領土と主権という難題を乗り越え、私とあなたで平和条約の調印をしよう』という思いを込め続けた」と強調した。ちなみに、発表された声明の5項目には「両首脳は、上記の諸島における共同経済活動に関する交渉を進めることに合意し、また、平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明した」と記されている。

 

■ 孫正義という存在

 

・大鹿靖明 「孫正義500億ドル投資の銭勘定」文藝春秋2月号

 

ソフトバンク会長の孫正義氏は2016年12月6日、米大統領就任前のトランプ氏と会談し、500億ドルの投資と5万人の雇用創出を提案し世界を驚かせた。ジャーナリストの大鹿靖明氏は文藝春秋2月号で、孫氏が2016年だけでも英国のメイ首相、韓国の朴槿恵大統領と面会して投資や雇用創出を提案し、年末に来日したプーチン大統領にも会ったとし、「これだけ行動力のある人物はなかなかいない」とその手腕を評価している。

 

また大鹿氏は、孫氏がトランプ氏に約束した投資について、台湾の鴻海との「共同提案の側面」があり、また中東オイルマネーを原資としたファンドから拠出される予定であることを指摘。さらに、孫氏と鴻海が、トランプ大統領から敵対視されているアップルのおかげで成長したことにふれ、「(トランプ大統領の)中東イスラムへの偏狭な見方を和らげてもらう。それとともにトランプとアップルなど先端企業との『冷戦』をデタント化(緊張緩和)する。さらに、台湾の企業が重要なポジションを占めることで、アメリカの対中戦略のカードとさせる」といった期待があるのではないかと分析している。

 

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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