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天皇陛下の「生前退位」 | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)

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天皇陛下の「生前退位」

投稿日 : 2016年09月06日

aflo_LKGG740578天皇陛下は8月8日、ビデオメッセージを通じ、「生前退位」を希望されていると受けとめられる意向を示唆された。天皇として即位されてから28年を経て、現在82歳の天皇陛下が、政治的発言を禁じている憲法に抵触しない範囲でこのような意向を表明されたことは、国民に大きな驚きを与えるとともに、改めて象徴天皇、皇室の在り方などについて様々な議論を呼んだ。

 

 

 

写真:代表撮影/AP/アフロ

 

 ・半藤一利、保阪正康 「われらが見た人間天皇」 文藝春秋9月号

作家の半藤一利氏は文藝春秋におけるノンフィクション作家・保阪正康氏との対談の中で、天皇陛下の意向について「お気持ちを素直に受け止めるべきではないでしょうか」と述べるとともに、歴史を俯瞰された意向表明を主権者の国民が「大いに議論を重ねていかなければならない」と求めた。

 

さらに半藤氏は、今回の意向表明に至った背景について「陛下は新憲法下で自分たちが考え作り上げた『新しい天皇像』を次世代の皇室の方々が、しっかり受け継いでいってくれる自信がついたのではないでしょうか」と分析。一方で、半藤氏は憲法が規定している基本的人権について、「天皇には規定されていない」として、「ここに憲法と皇室典範の間の大きなズレがあると思うんです。天皇には個人の権利がない上に、個人の意見を自由におっしゃることも自由に行動することも認められていません」と、“象徴天皇”が内包する根源的な問題点を改めて指摘した。

 

・原武史 「象徴天皇制の“次の代”」 世界9月号

放送大学教授の原武史氏世界の論文で、明治時代から第2次世界大戦敗戦までの天皇制は「天皇個人の意思よりもシステムの刷新のほうが優先される場合があった」との認識に立ち、天皇陛下が2013年に明治以降大規模化した天皇陵の縮小を発表したように、今回の意向表明も、「このような近代天皇制の残滓の見直しと同じ流れにある」と指摘した。歴史的にも、天皇の生前退位は飛鳥時代から江戸時代までしばしば行われていたことであり、「明治以前の長い天皇制の伝統に立ち返ろうとする面もある」としている。

 

原氏は、生前退位が実現した場合について、天皇、上皇、皇太弟が並立する「非常に変則的な状態になる」としながらも、「そのうえであえて生前退位が示されたのは、やはり天皇制の将来に関する強い不安、危機意識があるということだと思います」と強調した。

 

原氏はまた、今回の報道が安倍政権の目指す「改憲」とリンクしているのではないかとの見方についても、「即位当初から護憲のメッセージを発してきた現天皇自身は、あくまでも象徴天皇制に合わせて身の丈にあったサイズへと縮小していく方向性を示そうとしたのかもしれません」としている。

 

・山崎正和 「古来天皇は一貫して『象徴』であった」 中央公論9月号

劇作家で評論家の山崎正和氏は中央公論の論文で、天皇制の歴史について「日本の天皇はきわめて早い段階で権力と権威の分離を行ないました」とするとともに「歴史的に見て、天皇が持つ権威が否定されたことはほぼありません」と、“権威”と”権力”の分離が天皇制の根幹であるとしている。

 

その上で、山崎氏は天皇が“権力”であったならば第2次世界大戦の敗戦で天皇制は最大の危機に見舞われたはずだが、「日本は、敗戦ではあくまで権力が倒れたのであり、権威は倒れていないという論理により、その危機を切り抜けました」と分析。その結果、純粋な権威としての「象徴天皇」制が生まれたとしている。つまり、象徴天皇は戦後の米国による占領政策の産物ではないとの認識を示し、「近代の象徴天皇として、その権威の『形』は、今上天皇の30年近くで完成の域に達したと思われます」と論じている。今後の天皇制の在り方についても、山崎氏は「現在では、天皇を誹謗したり、天皇制を廃止しようとする政治活動を見ることはありません」と指摘した。

 

山崎氏は、今回の天皇の意向表明についての賛否に直接言及していないが、「日本国民は、私を含めて、現在の天皇家の姿を受け入れ、敬愛しています」とするとともに、個人的な考え方として「継承者を直系男子に限り、しかも一夫一婦制を守る。これは生物学的に不可能に近い話です。(中略)女子も継承者に入れるというのが、これからの天皇と皇室のあり方において、順当ではないか」と強調した。

 

竹田恒泰 「なぜ明治以降に『譲位』がなかったのか」 正論9月号

保守系や右派の論者には生前退位への慎重論、消極論が根強いが、作家の竹田恒泰氏は正論の論文で、「生前退位」という言葉について、「生前」とは「死」を意識した言葉であって陛下に対して用いるのは避けるべきであり、また「退位」も「単に位を退くことであり実に無味乾燥な言葉」として「譲位」という語が使われるべきだと主張している。

 

しかし、天皇陛下のお気持ちを忖度して「譲位」する方法については、現在の皇室典範に規定がない。「譲位制度」導入については明治維新以降、過去3回検討さているが、竹田氏は「譲位制度」導入のための皇室典範改正には慎重に対処すべきだと述べる。竹田氏は、その理由として1984年当時(昭和天皇)に「譲位」制度化が見送られた根拠である、①譲位を認めると歴史上見られるような「上皇」の弊害が生じる恐れがある②天皇の自由意志に基づかない強制退位の可能性がある③天皇が恣意的に譲位することは「象徴」という立場に馴染まない―を挙げ、「一度譲位が制度化されると、その制度が恣意的に運用される危険がある」と指摘。その上で、「(譲位を)制度化せずに特措法(特別措置法)で実行すれば、その心配はない」と主張した。

 

・八木秀次 「皇室典範改正の必要はない」 正論9月号

麗澤大学教授の八木秀次氏も正論のコラムで、「皇室典範は恒久法であり、ご生前での譲位・退位を制度化して認める規定を設けると、今後の皇位継承や皇室の在り方に混乱をもたらす可能性もある」、「皇室典範改正については慎重でなければならない」として、皇室典範改正による「譲位・退位」の制度化に反対の立場を鮮明にした。

 

また、特別措置法により、今上天皇だけに生前の「譲位・退位」を認めるという案についても、「特別措置法でも譲位・退位の前例をつくることになり、譲位・退位後の法的な位置付けなどの大掛かりな検討が必要である」と否定的な見解を示した。

 

・渡部昇一 「悠久なる皇室」 正論9月号

上智大学の渡部昇一教授は正論の論文で、今回の問題について「問題は本質的にはそれほど難しい問題ではない」として、「ことは皇室の慣習、伝統に従って、単純に決めればいい話で、それを内閣が、皇室会議が承認する形で進めていけばいい」との考え方を示した。具体的には、「皇室典範改正などで相当の時間を要する譲位よりも、摂政を置くほうがいいのは明らか」として、“摂政”制度の活用を強く求めた。歴史的事実として、昭和天皇は即位前の皇太子時代に摂政になられているが、渡部氏は「規則がなければ慣習に従えばいい」と強調した。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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