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消費税増税/田中角栄元首相ブーム

投稿日 : 2016年05月25日

■ 消費税増税

 

・本田悦朗「消費税増税は凍結すべし」 『Voice』5月号 

 

File photo shows Paul Krugman, Nobel Prize-winning economist and professor emeritus at Princeton University, greeted by Japan's Prime Minister Shinzo Abe at a meeting discussing global economy hosted by Abe in Tokyo4月中旬に発生した熊本地震の影響で、政治・経済的な日程の変更が余儀なくされているなか、最大の関心事は2017年4月に実施予定の消費税増税(8%から10%)だ。実施の是非や時期について様々な発言が相次いでいるが、内閣官房参与で財務省OBの本田悦朗氏は、「デフレからの完全脱却を果たし、二%程度のインフレ率が安定して持続するようになるまで、消費税を断じて引き上げてはならない」と凍結論を主張している。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 

凍結を主張する理由は、個人消費の想定外の下落である。本田氏は、2015年第3四半期(10月-12月)の個人消費が前期比マイナス0.5%だったことについて、「消費の落ち込みは自動車や家電製品等の耐久財から衣類や靴のような半耐久財にまで広く及んでおり、暖冬の影響では説明がつかない」と指摘。考えられる理由は、14年4月に実施された消費税増税(5%から8%)であるとし、「消費マインドが落ち込み、そこから日本の景気が一向に回復しないことが致命的な問題なのだ」と主張。さらに、「長期デフレの影響で、いまや日本人の所得構造と消費行動が大きく変わってしまったということを、われわれは二年前の消費税増税の教訓として学ばなければならない」と論じている。

 

本田氏は、3月16日に行われた第1回国際金融経済分析会合で、米コロンビア大学のスティグリッツ教授が、2015年の経済は08年の金融危機以降で最悪だったが、「16年はさらに弱体化する」と述べたことを紹介。その上で、消費税増税について、「期間を定めた『延期』では、『どうせ来年また増税するのだから』というふうに消費者が考えてしまい、買い控えや節約行動に流れる可能性がある」とし、「安倍総理には、消費税再増税は一年や二年と言った期間を定めずに『凍結』することをできるだけ早く決断し、国民に『安心してください』というメッセージを送っていただくことを期待したい」とまで言い切っている。

 

同時に、本田氏は今後の経済運営について、「実質GDPの増加は政府の役割であり、インフレ率の上昇は日銀の役割」として、「政府と日銀が一体となって経済成長に取り組まなければ,名目GDP 六〇〇兆円の目標達成はあり得ない」と強調した。

 

・若田部昌澄 「緊縮では財政再建ができない」 『Voice』5月号

早稲田大教授の若田部昌澄氏も、「アベノミクスはまだ失敗していない」と前置きしたうえで、このまま消費税増税を実施すれば、「アベノミクスは終焉を迎えるだろう」と述べている。本田氏と同様、消費の低迷が続いていることを考えれば「たんなる延期では効果は小さい」として、「何よりも必要なのは消費税増税の凍結ないしは減税である」と論じている。

 

さらに、若田部氏は、「消費税を社会保障目的税とすることを止めるべきだ」として、2012年の野田民主党政権時代に旧民主(民進党)、自民、公明3党が行った社会保障と税の一体改革に関する「三党合意」を破棄するよう求めている。その理由は「低所得者層がより多く負担するという、逆進性の強い消費税は、そもそも社会保障の財源に馴染まない」からであり、「社会保障料、直接税、資産税を中心とした計画を策定すべきである」と提言している。

 

 

■ 田中角栄元首相

 ・屋山太郎「田中角栄の増長と妄想」『Voice』5月号

 

今年は、田中角栄元首相(在任期間1972-74年)の没後23年にあたり、ロッキード事件での逮捕から40年ということで、出版界に“角栄ブーム”が再来している。しかし、政治評論家の屋山太郎氏は、「石原慎太郎氏が近著『天才』(幻冬舎)のなかで、田中角栄を偉大な政治家と評価しているのには仰天した。田中氏は悪徳の衣を着た大政治家」であったと、角栄ブームに異論をはさんでいる。

 

一般的に、田中元首相は『日本列島改造論』を提唱し、高速道路や新幹線、空港整備などの公共事業を、地元・新潟を中心とした各地で推し進めて「『国土の均衡ある発展』」に寄与したとされている。しかし、屋山氏は「角さんが今の日本を想定して、国土づくりに励んだと石原氏は見ているようだが、私にはそういう理想家だったとはとうてい思えない」と否定するとともに、「公共事業を声高に叫び、それを元にこしらえたカネで子分を増やし、権力に近付いた田中角栄の時代は完全に終わるべくして終わったのである」と、田中政治の本質は“金権政治”であったと指摘した。

 

・石原慎太郎「角さんと飲んだビール」『文藝春秋』5月号

角栄の生涯を一人称で書いた『天才』が45万部のベストセラーとなっている作家の石原慎太郎氏は、自ら「田中角栄の金権政治に対し、一番初めに弓を引いた人間でした」というように、糾弾の急先鋒であった。

 

その石原氏は、田中元首相について、「現代の日本を誰が作ったのかといえば、間違いなく田中角栄です」と述べ、「角さんほど先見性に富んだ政治家は存在しなかった」と評価を180度変えている。その理由として、「今にして思えば、金権政治は当時の自民党に長年横たわってきた体質」「決してエスタブリッシュでない人間が、……総理総裁になるためには、金権の原理を活用するしかなかったのもまた事実」と説明している。

 

・鳩山邦夫、朝賀昭、増山榮太郎、御厨貴 「日本には田中角栄が必要だ 秘話満載座談会」『文藝春秋』5月号

東大名誉教授の御厨貴氏は、「高速道路や新幹線、地方空港など、経済成長の仕上げとなる社会資本の整備が、田中政治の最大の功績」と評価したうえで、最近の角栄ブームが「永田町の人材難」の反映であると指摘している。また、元秘書の朝賀昭氏は、「田中政治の『功罪』の罪として、必ずロッキード事件や金権政治批判が挙げられますが、僕はやはり後継者を育てて、きちんと道筋をつけなかったことの方が政治家として罪深い」と回顧している。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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