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2016年国際情勢の展望

投稿日 : 2016年02月25日

・山内昌之、宮家邦彦ほか「2016世界は大激変する」『文藝春秋』2月号

・宮家邦彦×佐藤優「甦る帝国主義に備えよ」『Voice』2月号

 

APTOPIX Turkey G-20■ パワーポリティクスの回帰

 

国際社会の混乱と緊張感はさらに高まっている。専門家たちは、国際秩序の枠組みそのものが大がかりな変化をしたとみている。

 

明治大学特任教授の山内昌之氏は、「いま、ポスト冷戦期が終焉を迎えて、新たな冷戦型の対立構造への移行、つまり第二次冷戦に入った」と述べる。「トルコとの対立、イランとの関係強化によって、米ロ間の緊張が高まっている」とし、その歴史的な転換点になったのが、「……プーチンが実行した二〇〇八年のグルジア侵攻(南オセチア紛争)、そして二〇一四年のクリミア併合とウクライナ紛争でした」と分析している(写真:代表撮影/AP/アフロ)。

 

これに対し、立命館大学客員教授の宮家邦彦氏は「ポスト冷戦期が終わり、大きなパワーシフトが起きていることには間違いありません」と山内氏に同調しつつ、「……ナショナリズムや排外主義的な動きが高まることで、民族主義と民族主義のぶつかり合い、むしろ第一次世界大戦前のようなパワーポリティクスに回帰しているのではないか」との見方を示す。このような国際情勢下で、今年サミット開催国となる日本がとるべき方策として、「世界的に大きなパワーシフトが起きる中で、普遍的な価値を共有する勝ち組に寄りそうことこそ、日本のとるべき生き残り戦略だ」と述べる。

 

また、山内氏は「日本外交には、理念や理想が過剰になる傾向がある」として、2015年のユネスコの記憶遺産などをめぐる「外交当局の失態」について、「……文化外交を日本の安全保障や歴史認識をめぐる国益の最前線として考える見方が希薄だった」と指摘。さらに、日本国民は、安全保障上の脅威が迫っていても楽観的に考えがちだとし、「……私たちも、フランスで起きたような現実のテロの危険性や、他国による主権侵害のリスクを直視しなければいけません」と警鐘を鳴らしている。

 

帝国主義と普遍的価値の重要性

 

宮家邦彦氏と、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏は、Voice』2月号「甦る帝国主義に備えよ」のなかで、この国際情勢を「帝国主義」と定義している。佐藤氏はヨーロッパで頻発するイスラムテロについて、「IS(イスラム国)は唯一神アッラーの法の下、カリフが指導する単一のイスラム帝国を本気で建設しようとしている。その人びとが、ついに西側諸国に対する『世界イスラム革命戦争』を始めたということです」との解釈を示している。

 

また宮家氏は、ISを生み出した中東の不安定化について、米国オバマ政権の「非介入主義」が要因の一つとしたうえで、アフガニスタンとイラクから米国の戦闘部隊のほとんどが撤退した結果、「……逆に中東では独裁政権の崩壊による不安定化が恒常化しつつある」と分析。この混乱に乗じて、「……中東にあるかつての帝国が復活してきました。イラン、トルコ、ロシアが帝国的な動きを見せている。そして最終的にはイラン、トルコが[混乱する中東を]自国の帝国の一部にしていくのではないか」との仮説を述べている。

 

また、日本の今後の立ち位置について宮家氏は、「新しいパラダイムでは間違いなく普遍的価値が重視されます。だからこそ、われわれは伝統的概念を普遍的価値として世界に説明できるものにブラッシュアップしていかなければならない。そうすれば日本は国際社会で生き残ることができるでしょう」と主張。これによって、中国、韓国との関係も劇的に変わるだろうと締めくくっている。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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