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米中関係

投稿日 : 2016年02月01日

 

・櫻井よしこ「中華帝国主義からアジアを守るリーダーたれ」『正論』1月号

・マイケル・ピルズベリー「米中の秘密協力体制を問い質せ」『Voice』1月号

・及川正也「米中首脳会談は〈新冷戦〉の始まりか」『外交』34

・矢板明夫「外洋拡張路線の挫折」『Voice』1月号

 

U.S. President Barack Obama meets Chinese President Xi Jinping in California■  米中関係の奇妙な距離感

世界は大きな変革期にある。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、『正論』1月号「中華帝国主義からアジアを守るリーダーたれ」で、米国が世界を治める「パックス・アメリカーナ」の時代が終わり、中国が覇権を握ろうとしている今の国際社会の変化を「世界の秩序が変わるような地殻変動」と表現する。両国が導く国際社会の方向について、「一つは国際法を尊重し平和を基調にしながら世界を維持する方向。もう一つは国際法を無視し、力によって膨張していく方向」と分析し、「このどちらかを選ぶのか、世界は大きな岐路に立っていますが、答えはおのずと、明らかです」と論じる。しかし、櫻井氏は、お互いに相いれない価値観を持つはずの米国と中国が「……全面的な正面衝突を避けるのみならず、互いに遠慮しているかのように見える」と疑問を投げかけ、この「奇妙な関係」について、南シナ海をめぐる航行の自由に対する立場などから冷静に分析している。また、櫻井氏は、「大きく捉えれば米国が再びかつてのような強力なリーダーシップを喜んで発揮する国に戻ることは、なかなか期待できない」としたうえで、「だからこそ、日本がアジアの大国として声を上げていくべき」だと日本の進むべき方向性について提言している。(写真:ロイター/アフロ)

 

■  米国の希望的観測

米中の不透明な関係に、米国の中から疑惑の目を向ける論者もいる。ハドソン研究所中国戦略センター所長・米国防省顧問のマイケル・ピルズベリー氏は、「米中の秘密協力体制を問い質せ」『Voice』1月号で、共産党の中国は建国以来、米国を超える世界覇権を目指しており、この「100年マラソン」と呼ばれる中国の野望に加担してきたのは他ならぬ米国だったと主張している。同氏は、この主張について、「……中国が米国を意図して騙したのではありません。われわれは、『中国は将来必ず民主化の道を辿るだろう』と勝手に思い込み、あらゆる約束を交わしてきました。しかし、これは、われわれの希望的観測に基づいた間違った前提なのです。だいいち『自分たちは民主化する』と、中国は公式の場で一度も言及していません」と説明。この希望的観測のもと、米ソ対立期に米国が中国と手を組んだ「十二の秘密協力プログラム」があったとし、特に米国のベトナム撤退が視野に入った時期から、米国が対ソ牽制勢力として中国を利用した事例を挙げている。同氏は、このプログラムの成功がその後の米中関係の土台になったとし、「こうした強固な土台があるのに、米中が対立し紛争を起こすわけがありません」「米国政府は今後も中国への協力姿勢を継続すると思います…両者の友好関係は揺るぎないのです」と論じている。同氏はこうした独自の分析をふまえ、中国と向き合う日本への示唆として、「……対中政策の要となるような民主主義を推進する財団」を創るべきだとの見解を示している。

 

■  ひとまずの冷却期間

毎日新聞北米支局長の及川正也氏は、『外交』34号「米中首脳会談は『新冷戦』の始まりか」で、米中は「……『航行の自由作戦』を経て、両国はひとまず冷却期間に入った」との見方を示す。及川氏は、米中関係の行方について、米国が2015年10月に「『国際法に反して度を越した主権の主張をした国への対抗手段』(米国防総省高官)」として南シナ海で決行した軍事作戦「航行の自由作戦」と、その一か月前に行われた米中首脳会談をふまえて分析。中国側のスタンスについては、「『新型大国関係』の表看板の裏で習主席は、南沙問題で事態がエスカレートするのを本音では嫌いつつ、ナショナリズムに直結する主権の争いでは一歩も引けないというバランスをどう取るかに腐心しているといわれる」と説明。一方、米国側については、「……『ポスト・オバマ』を争う大統領選を一年後に控え、対中政策をめぐっても議論が本格化している。民主党最有力候補のヒラリー・クリントン前国務長官は人権問題などで対中強硬派と目され、共和党では対中貿易赤字などを背景に中国バッシングを繰り出す実業家のドナルド・トランプ氏が人気を集めている。『次期大統領はいずれの政党でもオバマ政権の対中政策よりも厳しくなる』(日本政府関係者)との見方が支配的だ」と述べている。

 

■  日米分断の失敗

米中の関係について、オバマ大統領が尖閣諸島について「尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象である」と明言したことをターニングポイントとみる人もいる。産経新聞中国総局特派員の矢板明夫氏は、Voice』1月号「外洋拡張路線の挫折」で、習主席ら対日強硬派が、この発言に大きな衝撃を受けたとする中国の外交関係者の証言を紹介し、その理由について「習政権がそれまで、歴史問題などでの“対日共闘”を米国に呼びかけるなど大きな外交課題として取り組んできた『日米分断』がまったく奏効しなかったことが明らかになったためだ」と分析。オバマ氏の発言以降、習政権による日本批判は尖閣問題から歴史認識問題へ、東シナ海から南シナ海へと移っていたとしている。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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