今月の雑誌から

一覧に戻る

東芝不正会計

投稿日 : 2015年09月18日

【東芝不正会計】

 

・川端寛「東芝『不正の連鎖』を招いた真犯人」 『文藝春秋』9月号

・郷原信郎「東芝『不適切』会計 ~『問題の核心』を見事に外した第三者委員会報告書」 『世界』9月号

 

■企業と国の距離

日本を代表する総合電機メーカーである東芝が、利益の不適切な積み増しを行った決算を繰り返していたことが判明し、今年7月には歴代三社長が謝罪、辞任する事態となった。また、第三者委員会の調査をまとめた報告書が公表され、経済界の顔ともいえる経営者たちが、不適切な会計処理を直接指示してきた実態が明らかにされた。ジャーナリストの川端寛氏は、『文藝春秋』9月号の「東芝『不正の連鎖』を招いた真犯人」で、今回の問題の核心には、2006年に東芝が行った、米国の原子炉メーカー・ウェスチングハウス(WH)の買収があると指摘している。

 

当時、ウェスチングハウスの価値は2000億円から高くて3000億円と見られていたが、東芝によるWHの買収金額は54億ドル(当時の為替レートで約6600億円)。温暖化対策でのCO2削減のため世界的に原子力発電が見直され、政府主導で原発輸出促進ムードが高まっていた。その時の社長が、不適切会計の口火を切ったとされる西田厚聰元会長だった。「『2015年までに世界で三十九基の原子炉受注を計画している』。WHを買収したとき、西田は、インタビューでこう大見得を切った。……世間は、西田の決断に惜しみない拍手を送った。……『六千六百億円など安いもの』というムードがあった」。

 

その後会長に就任した西田氏は、2010年の日本経済団体連合会会長就任に意欲を見せるが、関係者のさまざまな思惑などもあり挫折する。川端氏は、「経団連会長のポストが見えてきた頃から始まった『無理』が、東芝をさらに負のスパイラルに巻き込んでいった」と分析。これに、2011年の東日本大震災、福島第一原発事故が追い打ちをかけたとする。「……福島第一原発が水素爆発を起こしたその日から、世界の原発建設計画は、そのほとんどが中止または凍結された。三十九基どころの騒ぎではなくなってしまったのである」。

 

川端氏は、その後も強気の姿勢を崩さなかった東芝の幹部には「普通の経営者の感覚」がなかったと述べ、こうした経営がまかり通ってきた背景に、東芝の「『国策企業』という顔」と、「……日本の電機産業の背骨となる巨大な利権構造」があると指摘する。つまり、東京電力などが行う電力事業は自由な料金設定で超過利潤を得ることができ、この利潤による設備投資が、東芝など総合電機メーカーの安定的な収益につながる。こうした仕組みは、「……負けても親に泣きつけばいい、という甘えの構造に陥りがち」であると説明する。

 

さらに川端氏は、国との太いパイプを持つ東芝の歴代社長たちが、退任後に財界で高い地位についてきたことにふれ、「……財界での地位など、グローバルで戦うことを余儀なくされている現在の日本企業にとって、どれほどの意味があるのだろうか。そもそも国との近すぎる距離が、経営者の判断を狂わせ、今回の不祥事の遠因となったと見ることもできる」と締めくくっている。

 

■不十分な第三者委員会報告書

第三者委員会の報告書の内容に疑問を投げかける声もある。弁護士の郷原信郎氏は、『世界』9月号に「東芝『不適切』会計~『問題の核心』を見事に外した第三者委員会報告書」を寄せ、東芝の不正会計について、「……問題の核心は、会計監査人たる監査法人」であるにも関わらず、報告書の内容は「……東芝の役職員に対する『厳しい批判の言葉』ばかりが目立ち、それに見合うだけの組織的な『不正会計』の具体的な事実がほどんど指摘されていない」と指摘している。

 

郷原氏は、2011年に発覚したオリンパスの巨額損失隠し問題と比較して、東芝の不正会計の本質を解説している。刑事事件に発展したオリンパス問題は「……簿外に損失を隠蔽した不正会計の問題であり、『経営者が嘘をついている』と疑ってかからないと発見できない」。一方で、東芝のケースは「……日常的な会計処理の問題であり、監査法人として通常行うべき監査が行われていれば……何がしかの問題が指摘できていたはずである」という。したがって、東芝の不正会計では、「……監査法人が、会計処理の適正さをどのように評価・判断したのか、それに関して、東芝の役職員がどのように関わり、そのような資料を監査法人に提出したのか」が大きなポイントになる。

 

しかし、報告書について、郷原氏は、「監査法人に関する問題が調査の対象から除外され、東芝側からの監査法人への対応も極めて不十分にしか言及されていない。結局のところ、『不正』の核心部分が殆ど見えないという結果になっている」と指摘。報告書が不十分である以上、歴代三社長が辞任しても根本的な解決にはならないとして、「……近い将来、より大きな問題が表面化する恐れもある。監査法人に関する問題も含め、徹底した調査を行うことが不可欠である」と警鐘を鳴らしている。

 

 ※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信