今月の雑誌から

一覧に戻る

加速する高齢社会

投稿日 : 2015年07月24日

<今月取り上げた月刊誌>

 『外交』(Vol.31)

『正論』『中央公論』『文藝春秋』(いずれも7月号)

 ◆ 2015年7月 ◆ 

3. 加速する高齢社会 

( 1. 日米同盟と、アジアの中での日本のあり方/2. ドイツから見た日本の歴史問題)

 

 

3. 加速する高齢社会

◆  「提言・東京圏高齢化危機回避戦略」 日本創生会議・首都圏問題検討分科会 [中央公論]

◆  「2025年『老人大国』への警告」森健氏  [文藝春秋]

 

 dd428b261a0401155665062fc44dbe7c_s■  「東京圏」の医療・介護が危ない

日本では多くの課題が山積しているが、その最たるものとして、高齢社会問題と、都市と地方との格差が挙げられる。都市と地方の格差は、すなわち東京への一極集中問題である。この2つの問題が、10年後、同時に顕在化するという指摘がなされた。元総務大臣で東京大学大学院客員教授の増田寛也氏と、有識者が組織する日本創成会議・首都圏問題検討分科会は、『中央公論』7月号に掲載した「提言・東京圏高齢化危機回避戦略」のなかで、「東京圏が今後急速に高齢化し、それに伴い医療・介護や住まいの問題が深刻化するおそれが高い」と警鐘を鳴らしている。

 

提言によると、2020年以降、これまで比較的「若い地域」であった東京圏の高齢化率が26%を超え、50年代には地方圏と同じ水準になるという。こうした人口構造の変化の過程で、東京圏では、2025年までに入院需要が20%増加、介護需要も東京周辺の3県で約50%増加する。この結果、首都圏では医療機関や介護施設の不足が深刻化し、また80万~90万人の医療・介護関係者の新規確保が必要になるという。こうした状況が、地方から首都圏への医療・介護人材の流出を招き、地方における医療インフラの維持を一層困難にする。そして、これがさらなる地方から首都圏への人口移動を招き、地方社会の崩壊の一因になるとの主張だ。

 

提言では、こうした問題への対策として、ICTやロボットの活用、空き家の活用、医療や介護に必要となる資格の見直しによる人材の多様化のほか、高齢者の希望に沿った地方への移住促進などを挙げている。

 

しかし、地方移住の促進については、東京への一極集中の背景に、東京の地方に対する経済面や雇用面、文化・生活面などでの優位性があることから、この根本的な社会的格差の問題解決が前提であるように思える。「医療介護態勢が整っている地方」として紹介された地方自治体の困惑も伝えられ、提言の波紋が広がっている。

 

b995658d958e43c05747a79052f911fa_s■  高まる看護師の必要性

『文藝春秋』7月号でも、ジャーナリストの森健氏のレポート2025年『老人大国』への警告」で、来る高齢社会の問題を取り上げている。森氏は、東京大学において高齢社会を横断的に研究している高齢社会総合研究機構(IOG)による調査や、自らの取材をもとに、「医療でも『治す医療から支える医療へ』という意識転換が指摘されている。基本的に加齢が原因になっている疾患に対して、治療は万能ではない。むしろ、安寧な老い先に対して、生活の質を落とさないような医療や看護を提供できるかが課題になっているのだ」と指摘。こうした流れのなかで、看護師の必要性が一層高まることを強調する。「……訪問看護ステーションや複合型サービスのような拠点につねに看護師がいて、病気があっても安らかに楽しく過ごせる方法を助言したり、健康に関しての支援を行ったりする。つまり、看護師は病院の中にいるだけでなく、社会に出て、あちこちに存在する。そんな役割になっていくのではないかと思います」。

 

政策とは、まず当事者にとって必要なことは何かを徹底的に調べ、その上で政策的に対応すべきものに対応するものである。森氏のレポートは、高齢社会において高齢者の目線から「本当に必要なこと」を示している。

 

 ※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信