プレスツアー(案内)

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実施日 : 2012年02月29日 - 03月01日

案内:震災1年 宮城県沿岸部プレスツアー(2012年2月29日~3月1日)

投稿日 : 2013年08月22日

~市民生活とコミュニティの復興に向けて~

 

昨年3月11日の東日本大震災から間もなく1年が経過する。津波による壊滅的な被害を受けた太平洋沿岸地域では、今も災害の爪痕が生々しく残る。被災地の多くの住民が仮設住宅などでの不自由な生活を余儀なくされる中、日本各地及び世界各国からの支援を受けながら、徐々に生活基盤の回復やコミュニティの再生に向けた動きが進みつつある。ツアーでは、震災後1年を迎える宮城県の沿岸地域を訪れ、市民生活や地域コミュニティ、またそれらと密接に関係する自然環境の復興状況と今後の課題を探る。

 

<ツアー取材先>

 

1.海岸林再生を通じた地域再生と被災農家の生計支援(名取市)
公益財団法人オイスカ ホームページ
オイスカ 海岸林再生プロジェクト ホームページ

 

東日本大震災で発生した巨大津波は太平洋沿岸の海岸林を根こそぎ押し流した。千葉県以北の総延長230キロに及ぶ海岸林の70%にあたる160キロが流出。浸水被害を受けた海岸林は約3,660ヘクタールに達し、最も被害が深刻な宮城県がその約半分の1,753ヘクタールを占める。仙台平野一帯では、約400年前の伊達正宗の時代から整備された海岸林は、荒廃地を豊かな農地に変え、飛砂や塩害、強風、高潮などから市民の生活を守ってきた。また海岸林は、津波の流速を緩和させる減災機能も確認されている。今回の津波でも、海岸の砂に盛り土をしたうえで植林されたエリアは、しっかりと根を張った海岸林が波を受け止め、住宅地などに押し寄せる時間を遅らせたという。一方、根こそぎ流された樹木が住宅を破壊するケースもあった。

 

長い年月が必要な海岸林の再生に向けて、公益財団法人オイスカを中心とした10年プロジェクトが動き始めた。国内外からの寄付金によって、宮城県名取市沿岸で50万本(約100ヘクタールに相当)のクロマツの苗木の生産を計画しており、今年3月下旬には、オイスカが市内に確保した農地での試験栽培がスタートする。苗木の育成は被災した地元農家が行うことで収入を得られる仕組みを作り、農家の生計支援にもつなげる意向だ。こうした動きに呼応して、宮城県と林野庁でも、植林したクロマツの根が深く張るように盛り土をする方針を決め、2012年度から一部で工事が始まる見通しだ。

 

ツアーでは、オイスカ関係者の案内で、今も津波が樹木をなぎ倒した跡が生々しく残る名取市北釜地区を視察するとともに、3月下旬からの苗木生産が始まる農地での準備状況を取材する。さらに、苗木の生産に取り組もうとしている地元被災者から、海岸林再生と生活再建への思いや今後の課題について話を聞く。

 

2.恒久的復興住宅の早期建設による「東北地方の美しい『村』再生プロジェクト」(石巻市)
工学院大学 ホームページ
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今回の震災で住居を失い避難者となった市民の数は34万人に上る。こうした避難者の多くは、応急的な仮設住宅での厳しい生活を余儀なくされているが、何年か後には本格的な生活再建のため、再び恒久住宅への移転が待っている。そうした中、石巻市郊外の小さな集落で、仮設ではなく恒久的な復興住宅が震災から一年を待たずに完成し、注目を集めている。

 

「恒久復興住宅プロジェクト(K-engine Project)」と呼ばれるこの取り組みは、工学院大学建築学部の後藤治教授を中心とした同大学が、有限会社熊谷産業(熊谷秋雄代表取締役)など石巻市の企業グループと連携して震災からわずか一月後の昨年4月に立ち上げた。政府の支援に頼らず民間からの寄付を原資とし、地元を中心に国産の木材を使用、美しい木造の恒久住宅を伝統工法で地域の工務店が安く速く建設し、地域性豊かな「東北の美しい村」を再生しようという試みだ。建設地として太平洋が見える海抜40メートル以上の高台を確保、同大学の125周年事業として6月に工事が始まった。震災8ヵ月後の11月には4棟が完成し入村式が行われた。2月末を目途に共同棟1棟を含む全11棟が完成予定で、“村”の管理運営は新たに設立されたNPOが担う。

 

仮設住宅以外の選択肢もあり得たことを知ってもらいたいとの思いは各地に伝わり、被災地で同様の復興住宅建設を希望する声が上がっているほか、遠く岐阜県の自治体が震災対策の検討のため視察に訪れたという。

 

ツアーでは、完成間もない復興住宅を訪問、共同棟内で後藤工学院大学教授や熊谷産業の熊谷社長から、恒久復興住宅にかける思いや建築上の特徴などについて話を伺うほか、住宅での生活を始めた被災者の方々からも震災後の生活再建の現状と課題についてインタビューする。

 

3.「東北の女性に笑顔と収入を!」-小さな手仕事を創って被災地を世界とつなぐ EAST LOOP プロジェクト(石巻市)
EAST LOOPプロジェクト ホームページ
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「仮設住宅でもどこででも、ゆっくりと自分のペースで参加できる手仕事をつくり、被災した人々に少しでも元気になってほしい」。そんな思いで始まったEAST LOOPプロジェクトが、被災地と全国、そして世界をつなごうとしている。

 

津波の甚大な被害を受けた岩手県の陸前高田市、釜石市、大槌町、宮城県の東松島市、石巻市の女性たち120人が参加するこのプロジェクトは、家庭でできる編み物でカラフルなハートのブローチなどのアクセサリーを作ってもらい、全国そして世界で販売していこうという試みで、商品本体価格の約50%が生産者の収入となる。各地のデパートなどで販売されており、昨年11月までの売り上げは約1万点で1100万円。

 

プロジェクトを主催するのは、2006年から大阪でフェアトレード事業を展開する株式会社福市を経営している高津玉枝さん。途上国での現金収入の側面にフォーカスされがちなフェアトレードだが、高津さんは現地に行くたびに「仕事」が生産者の生きる力につながっていることを痛感したという。今回のプロジェクトでも、震災の被災者が「仕事」を通じで現金収入を得るだけでなく、社会とつながることで自分自身の存在価値を感じて元気も出る。また「編む」という行為が精神的な安定にも役立つとも言われており、心のケアにもつながっているという。また、見知らぬ人どうしが隣り合わせで暮らす仮設住宅では、コミュニティの形成にも役立っているとのこと。

 

今回のツアーで訪問する宮城県では、石巻市と東松島市で二つのグループが活動している。石巻市ではNPO石巻復興支援ネットワークによるコーディネートの下、仮設住宅に入居する20人程度の女性が参加している。また東松島市では、地域活性化を目指すお母さんたちの組織が中心となって、仮設住宅に住む被災者も含めて16人が参加。ツアーでは、石巻市の大規模な仮設団地を訪問し、プロジェクトを主催する高津玉枝さんや現地でコーディネートを行っているNPO関係者から説明を受ける。また、実際にプロジェクトに参加している女性たちから生活再建への思いを聞くとともに、作業風景を取材する。

 

4.被災者を支えた峠の宿 追分温泉(石巻市)

 

東日本大震災の大津波は、石巻市を流れる北上川を河口から約50キロの地点までさかのぼり、河口とその河岸の集落を次々と飲み込んだ。その北上川から10分ほど山を登ったところに峠の一軒宿「追分温泉」がある。創業は1948年、現在のオーナー、横山宗一さんは3代目。建物は昔の校舎を思わせる素朴な「木造りの宿」だ。震災当日は満室だったが全てキャンセル、代わりにその夜から避難してきた地元の人々を受け入れてきた。幸い施設自体に損傷はなく、非常用に用意していた10台以上の石油ストーブや以前宿で使用していたランプが活躍した。「地元の人が安心して避難生活を送ることができる場所に徹するため」10月半ばまで休業、一時は80人ほどの被災者が避難生活を送っていた。11月からは通常営業を再開したが、現在も客室の3割程度は復興支援関係者に提供している。

 

15年前に「木造りの宿」に改築した際にデザインを担当したのが、地元の建築士渋谷修治さんだ。津波で被災して現在は仮設住宅で暮らす渋谷さんは、地元ではミュージシャンとしても知られる。その渋谷さんが20年前に作った歌「君が愛したふるさと」が、震災後の今の状況を言い当てた曲としてYouTubeなどで話題を集めている。

 

ツアーでは追分温泉に宿泊し、横山さんと渋谷さんからふるさと再生への思いをお話し頂くとともに、心にしみる演奏を聴かせて頂く。

 

(注)追分温泉での宿泊は、原則として2人1部屋の利用となります。また各部屋にトイレ、バスはありません。また、インターネット接続も利用できません。携帯電話はドコモのみ利用可能です。予めご了承のうえ、お申し込みください。

 

*本ツアーは当センターと公益財団法人オイスカ、工学院大学との共催で実施するものです。参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

<実施要領>

 

1.日程案
1日目(2月29日(水)):
7:56 東京駅発(はやて103号)
9:37 仙台駅着
10:30-15:00 オイスカ海岸林再生プロジェクト
17:00 追分温泉着
18:30-19:30 夕食
19:30-20:30 追分温泉の取り組み等紹介
(追分温泉泊)

 

2日目(3月1日(木)):
08:30 追分温泉発
09:00-13:00 恒久復興住宅
14:00-16:20 East Loop プロジェクト
19:26 仙台駅発(はやて38号)
21:08 東京駅着

 

(注)被災地へのツアーのため、天候や関係者の都合等により、日程が変更となる可能性がありますので、ご了承ください。

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費用:1人13,000円(全行程交通費、宿泊費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。

 

4.募集人数:先着順15名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が15名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5.FPCJ担当:矢野(TEL: 03-3501-3405)

 

6.備考:
(1)写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
(2)フォーリン・プレスセンター、オイスカ、工学院大学はツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

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