プレスツアー(案内)

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実施日 : 2010年12月13日 - 14日

案内:群馬プレスツアー(2010年12月13-14日)

投稿日 : 2013年08月22日

~ものづくりの遺伝子を受け継ぐ群馬の可能性~

 

「ものづくり」で知られる群馬県には、長い年月を通じて蓄積され継承されてきた高度な技術の集積があり、これが同県の産業基盤となっている。明治以降の日本の近代化や工業化をリードした富岡製糸場に代表される製糸や織物業に始まり、戦前の一大航空機メーカーで知られ、スバルの富士重工業の前身でもある中島飛行機などの戦前・戦中の軍需産業。そして現在では、鋳造、鍛造、プレス加工、機械組み立てなどの製造業を中心とする全国有数の工業県となっている。また、これを背景に、産業界からの要請もあって工業教育にも力を入れてきており、群馬大学工学部などを中心に、“ものづくり立県・群馬”を支える数多くの人材を育成している。

 

ツアーでは、こうしたものづくりの遺伝子が受け継がれてきた群馬県で、その技術力や創造性、さらには豊かな自然を活かして、エネルギー問題などのグローバルな社会問題の解決を目指す産官学連携の動きや、誰にも真似できないオンリーワンの技術で不況や円高にも負けず世界に挑む中小企業の取り組みを取材する。

 

取材内容

 

1.地域の特徴を活かしたエネルギー“地産地消”(桐生市)
img4ce62a1a0c3df豊かな自然環境とその中をのどかに走る鉄道、そして自動車・電気産業の集積。これら群馬県の特徴を活かしたエネルギーの“地産地消”を目指すユニークな実証実験が、今年10月から桐生市で本格的にスタートした。自然豊かな渡良瀬渓谷の水を利用して発電(小水力発電所)した電気をリチウムイオン電池に蓄電し、「わたらせ渓谷鐵道」を使って市街地の充電ステーションに搬送。この地元産の電力を使って、電気自動車(EV)や電動アシスト自転車を走らせる。リチウムイオン電池ユニットが地元群馬の企業が製造した特注品なら、電気自動車も、地元の有力企業である富士重工の小型EV「ステラ」3台に加え、群馬大学工学部が地元企業と連携して開発した1人乗りのマイクロEV「マイクロTT2」2台が使用される。「マイクロTT2」開発の責任者である松村修二客員教授は、富士重工の技術者として活躍した経歴を持つ。群馬県は一世帯当たりの自動車普及台数が1.67台と全国3位だが、松村客員教授は、「今後高齢化が進むと、従来の軽自動車より手軽なコミュニティカーの需要が増す」と予想、電気自動車の本格的な普及には1人乗り、2人乗りのコンパクトカーの開発がカギを握ると考える。「マイクロTT2」の重量は軽自動車の4分の1程度の250kg、最高時速60km、1時間30分の充電で30kmの走行が可能。将来は1台100万円での販売を目指す。

 

この事業は、政府が打ち出した2020年の二酸化炭素排出量を1990年比で25%削減するという目標達成のため、環境省が進める「チャレンジ25地域づくり事業」として委託を受け、桐生市が実施するもの。ツアーでは、桐生市担当者及び松村客員教授からプロジェクトについて説明を受けるとともに、「わたらせ渓谷鐵道」による蓄電池の搬送、EVへの充電の様子などを視察する。

 

 

2.“群馬シルク”の再生に挑む「ミラノリブ」(桐生市)
世界有数の生糸輸出国であった日本から養蚕と製糸が消えつつある。伝統的な養蚕県である群馬県では国産繭の45%、国産生糸の80%が生産されているが、中国などからの輸入品の台頭で、純国産の絹製品は国内市場の1%未満。こうした状況に危機感を持ち、1200年の歴史を持つ“群馬シルク”の再生に立ち上がったのがミラノリブ笹口晴美社長。量産型の生産形態では繊維産業は生き残れないと考え、1998年、企画から製造販売まで一貫して手掛ける会社として「ミラノリブ」を起業、群馬産のオリジナル蚕品種「ぐんま200」にこだわり高品質なモノづくりで勝負に出た。県内の養蚕農家4軒と契約し直接繭を買い上げ、衣料品として商品化するまで一貫して管理、2003年には履歴管理(トレーサビリティー)の概念をいち早く導入し注目を集めた。また、繭玉の状態で染色する新技術を開発、これにより、見る角度によって色合いが変化するなど、独特の雰囲気を持ったシルク製品を生み出すことに成功した。2005年には、自社ブランド「CHIJILA」を設立、生産者の顔が見えるものづくり、そして消費者の声を取り入れ、その人に合ったものづくりを進める同社の挑戦が続く。

 

ツアーでは「蚕が自分を守るためにはく糸が形を変えて人間を守ってくれている。シルクほど作り手の思いが投影されるものはない」という笹口社長に話を聞くとともに、群馬シルクの製造現場を取材する。

 

 

3.“リブ編み”で世界を席巻「松井ニット技研」(桐生市)
桐生市中心部の裏路地にひっそりとたたずむ築100年以上の住宅兼工場の木造家屋。従業員わずか8人のこの町工場から、ニューヨーク近代美術館(MoMA)内のミュージアムショップで5年連続売上数量トップを誇るマルチカラーマフラーが生み出されている。明治40年(1907年)創業の松井ニット技研は、畝状に編まれた特殊な編み方“リブ編み”を得意とするニット製造業の老舗。ボリューム感がありながらも軽くて保温性にも優れる。製造工程でキズの発生率が高いため誰もやりたがらなかった仕事に根気強く取り組み、「イタリアや中国もまねできないオンリーワンの技術」(松井智司社長)を確立した。それを支えているのが、昭和30年代から使い続けている全国でも数少ない旧式の編み機だ。20数年前には全国から姿を消したという「ロースピード、ローテンション」の低速の編み機は、高速機の5分の1程度のスピードで、大量生産は望むべくもないが、ゆっくりとしたリズムで柔らかなリブ編みを実現させている。

 

国内の繊維業が衰退の一途をたどる中、松井ニット技研も2度の経営危機を経験した。最初の危機は、繊維の対米輸出が規制された70年代。売り上げのほとんどを輸出に頼っていた同社は大きな打撃を受けた。そこで、当時繊維商社に勤めていた松井社長の弟の敏夫氏(現専務)が持つネットワークを活用して、「デザイナーズブランド」のOEM(相手先ブランドによる生産)に特化する戦略に転換した。しかし90年代には、これらのブランドの生産拠点が中国や東南アジアに移り、徐々に単価の引き下げや注文数の減少に苦しめられた。そうした中、99年に工場を訪れたMoMAのデザイナーとバイヤーがその製品に感動、すぐにマフラー400本の納入が決まった。その後もとんとん拍子で注文数が伸びていき、円高の現在も拡大しているという。2005年には自社ブランド「KNITTING INN」を設立。不況もどこ吹く風、ヨーロッパの美術館や羽田・成田両空港の免税店など、納入先を年々拡大している。

 

ツアーでは、「自分たちの市場は拡大している」という松井智司社長と松井敏夫専務から、こだわりのものづくりについて話を聞くとともに、クリスマスを控えて低速編み機がフル稼働する小さな工場を取材する。

 

 

4.ウクレレの国内唯一の量産メーカー「三ツ葉楽器」(前橋市)
先行き不透明で不安な時代だからこそ、癒し系の音が多くの人に支持されているのでは。そう分析するのが、国内唯一のウクレレ量産メーカー「三ツ葉楽器」の大沢茂社長だ。戦後間もない1948年に創業した前身の「三ツ葉工芸」は、小学校の音楽授業向けの卓上木琴を主に製造していたが、需要が激減する夏休み対策として、1950年代にブームとなったウクレレを手掛けた。やがてブームも去り、家具事業への特化も考えたが、金井孝志前社長(現会長)が、宮崎県の特別支援学級でウクレレを活用した教育が行われていることを報道で知り、必要とする人たちのために生産を続けることを決意した。80年代には生産台数が年間わずか数台にまで落ち込んだこともあったが、90年代には再びブームが訪れ、2003年には月間生産台数1000台を回復。2006年に公開された映画「フラガール」の大ヒットや若手アーティストの活躍もあり、最近は1200台/月を維持している。最近は、中国、ベトナム、インドネシアなどの外国産から安価な商品が参入する中、前橋市内の工場では、十数人の職人が熟練した技で、高品質のウクレレを作り上げている。今年9月には、より多くの子供たちの手に取ってもらいたいと、ボディの厚さを3分の2に抑え軽量コンパクト化した新商品「ウスレレ」も新発売。さらに昨年は、米国、ドイツ、韓国へ500台以上を輸出、小さな町工場から世界への挑戦が始まった。

 

ツアーでは、「世の中に必要なもの、中小企業にしかできないものをこれからも作り続けていきたい」という大澤社長に話を聞くとともに、良質の音を生み出すウクレレの製造工程を取材する。

 

 

5.不況を吹き飛ばす「高崎だるま」(高崎市)
祈願のシンボルや祝儀の贈り物など縁起物として広く親しまれている「だるま」。高崎市には55件のだるま生産店があり、年間90万個を生産する日本最大のだるま産地だ。選挙につきものの“選挙だるま”も、そのほとんどが高崎で生産されているという。また、市内の少林山達磨寺で毎年1月に開催される「高崎だるま市」は24万人の人出でにぎわう。高崎だるまは200年以上の歴史がある。1783年、浅間山の噴火で天明の大飢饉が起こった際、少林山達磨寺の9代目東嶽和尚が、飢餓に苦しむ農民を救うため、張り子のだるま作りを伝授したのが始まりとされている。それ以来、養蚕農家など農家の副業としてだるま作りは継承されてきたが、120年ほど前から地元地方紙である上毛新聞の創刊により、材料の古紙の入手がしやすくなったこともあり、製造業者が増え始めたといわれている。2006年には、特許庁の商標制度で、高崎だるまは地域ブランドとして県内第1号の認定を受けた。

サッカーのワールドカップの際には、日本代表のユニフォームと同じ青いだるまも販売するなど、消費者のニーズに合わせたものづくりを行っている。日本の上質な工芸品として、欧米を中心に海外からの注文もある。最近では、JETROを通じて南米ベネズエラから1400個の注文が舞い込んだ。

 

ツアーでは、群馬県達磨製造協同組合の理事長を務める中田純一氏が経営する「大門屋」を訪問。「バブル期に比べると生産量は減っているが、かえって手間のかかるものを作ることができ、プラスの方向に進んでいる」という中田氏から、だるまに込めた思いを聞くとともに、年末の繁忙期を迎えた工房でのだるま作りの様子を取材する。

 

 

*本ツアーは、フォーリン・プレスセンターが主催、群馬県の協力により実施するものです。参加者には経費の一部を負担して頂いていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

【実施要領】

 

1.日程:2010年12月13日(月)~14日(火)

 

<第1日目:12月13日(月)>
7:40 東武線浅草駅発 特急りょうもう号3号  
9:18 新桐生駅着  貸切りバスにて移動
午前 (有)ミラノリブ
午後 桐生市エネルギー地産地消
㈱松井ニット技研
群馬県県幹部との懇談(調整中)
<第2日目:12月14日(火)>
午前:三ッ葉楽器(株)
午後:高崎だるま
15:21 JR高崎駅 新幹線あさま530号
16:12 東京駅着

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費:1人10,000円(全行程交通費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、直接参加者にご連絡します。

 

4.募集人数:先着順10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります

 

5. 参加申込:下記の申込書を記入の上、ファックス(03-3501-3622)でお送り下さい。

 

6. FPC担当者:矢野、山口(TEL: 03-3501-3405, 5251)

 

7.備考:
1) 写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
2) COP10支援実行委員会、及び当センターは、ツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

 

 

 

 

 

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