プレスツアー(案内)

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実施日 : 2016年02月17日 - 18日

案内:三重県・東紀州プレスツアー

投稿日 : 2016年01月22日

-豊かな森に包まれた熊野古道伊勢路と持続可能な林業-
-ニーズを掴んだアイデア豊かな水産業-

 

 

 

DSC00307「東紀州」は、三重県南西部の紀伊半島に位置する海と山の自然に恵まれた地域だ。東側は熊野灘に面した海岸線が南北に延び、それに沿うように世界遺産である熊野古道伊勢路(いせじ)が走っている。西側は奈良、和歌山両県と県境を接する山地で、東紀州地域の94%を森林が占める。この地域の基幹産業は林業と漁業だが、高齢化や過疎化が進み、各産業の担い手不足が課題となっている。このような中、林業においては、独自の工夫を重ね、高品質のヒノキを高価格で販売しながら、美しい森造りに努めている林業家がいる。水産業では、長期の漁師体験プログラムを活用して漁師を目指す若者を雇用し、若手漁師の育成につなげている地域の他、ブリを養殖し、顧客の要望に沿って加工、注文を受けてから短時間で国内外に届けている企業、また、離乳食作りに便利な加工を施した三重県産の魚を通信販売するアイデア溢れる企業がある。

今年5月に伊勢志摩サミットの開催を迎える三重県。本ツアーは三重県の様々な地域の魅力を探るツアーの第二弾として、東紀州を訪れ、林業や水産業の特色ある取組と世界遺産・熊野古道伊勢路を取材する。

 

※本プレスツアーは、伊勢志摩サミット三重県民会議が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。
※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

<取材内容>

 

1. 人々が感動する森林を育てる。効率的な経営で持続可能な林業の姿を示す林業家

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速水林業 代表 速水 亨(はやみ とおる)氏 (62)

日本は国土の約3分の2(2,500万ヘクタール)が森林で、森林資源が豊富であるにも拘らず、国内で消費する木材の約7割を輸入に頼っている。スギやヒノキの木材価格は約30年前のピーク時と比べると、約3分の1にまで下落しており、林業従事者も減り続けている。東紀州北部の紀北町の1,070ヘクタールの山林で、主にヒノキを生産している速水亨氏は速水林業の9代目。先代の時代は、間伐材も高額で取引され、多くの人員を投入しても林業で儲かる時代だった。当時と経営環境が全く違う今、従業員わずか14名で自らの森林と隣町の大台町にあるトヨタ自動車所有の森林をあわせて2,770ヘクタールの広大な森を管理できているのは、速水氏が省力化と生産性の向上を徹底的に追求した結果だ。機械化により作業効率を上げ、木材運搬のための作業道を通常の3倍に伸ばした。下刈り(雑草刈り)や枝打ち(枝を落とす)等の作業も最小限にし、苗木は、コストをかけずに優良なものを自前で生産するようにした。速水氏の木材は、まっすぐで、節(幹に残る枝が出た跡)が少なく、年輪が等間隔。業者が扱いやすい品質の高い木材が安定的に供給できるため、買い取り価格は他社と比べて3倍ほど高くなる場合もある

DSC00201速水氏は高く売れる木材の生産だけでなく、周辺環境と調和し、多様な生物が生息する「美しい森林」造りも信条としている。2000年には、自ら管理する森が日本で初めてFSC認証を受けた。FSC認証は国際的な森林の認証制度で、森林の管理や伐採が、環境や地域社会に配慮して行われている森に付与される。速水氏は国際基準に基づく持続可能な森林経営を日本に広めたといえる。認証を受けた森の木材を使った製品や紙にはロゴマークの使用が認められる。この制度は、違法伐採を排除する事はもちろん、消費と適切に管理された森林経営を結ぶ仕組みといえる。2012年のロンドンでは既に実績があるが、今年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックで使用される木材や紙類についても、このロゴ入りのものを用いることになっている。日本ではまだFSC認証の認知度は低いが、認証機関は2020年東京オリンピック・パラリンピックにおいても同様の体制がとられるよう、既に申し入れを行っている。

速水氏の案内で多様な植物が生息する山林を歩き、環境に配慮し、効率のよい林業が行われている現場を視察する。

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2. 世界遺産・熊野古道伊勢路

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紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」は2004年に世界遺産に登録された。紀伊半島内で、信仰の対象や修行の場となった山や寺社の他、「熊野古道」と呼ばれる、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)を参詣するための道が世界文化遺産として登録された。熊野古道は、奈良、和歌山、三重の3県にまたがっており、そのうち、三重県には伊勢神宮への参拝を終えた人々が熊野三山を訪れるときに歩いた「伊勢路」(いせじ)と呼ばれる道がある。江戸時代に伊勢神宮への参詣が盛んになると「伊勢へ七度、熊野へ三度」と言われたように海岸沿いに約170キロ続く伊勢路の往来も増えた。車や列車などの交通が発達してからは、伊勢路の利用が減り、道は一時荒廃したが、その後住民の手によって整備され、世界遺産として認められるまでになった。

 

(1) 三重県立熊野古道センター

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熊野古道センターは熊野古道伊勢路の中間点付近にあるビジターセンター。国内最大級の木造建築で、使用された木材は尾鷲ヒノキ6,500本以上に加え、熊野杉など全て三重県産で、前出の速水亨・速水林業代表の監修だ。年間10-11万人が訪れる同センターは、熊野古道の歴史、その周辺地域の文化、自然について訪問客に伝えている。聖地での巡礼を描いた霊場案内の絵画である「那智参詣曼荼羅図」とともに、同センターオリジナルである「熊野旅曼荼羅図」は、伊勢路周辺の自然景観、歴史、産業・生活、祭り・伝統などをわかりやすく紹介している。

 

(2) 松本峠

案内:熊野古道語り部友の会 中井 大弼(なかい だいすけ)氏

松本峠は、伊勢から熊野速玉神社(和歌山県)を目指し幾つもの峠を越えてきた旅人にとって伊勢路最後の峠だ。日本有数の豪雨地帯でもあり、雨水から路面を守る役割を持つ石畳が300年前の姿のまま残っている。当時、人々が石をひとつひとつ積み上げた様子を石畳の側面から見ることができるのは、伊勢路のなかでもここだけだ。

 

松本峠と窟

(3) 花の窟(いわや)神社

宮司 山川 均(やまかわ ひとし)氏

伊勢路沿いにある花の窟神社には社殿がなく、高さ45メートルの大きな岩にイザナミノミコトが祭られている。720年に成立した日本書紀には、日本を作った一人とされるイザナミノミコトが火の神カグツチノミコトを産んだときに焼かれて亡くなり、花の窟に祭られたと記されている。紀伊山地は、自然信仰を育んだ地とされるが、同神社も自然信仰を体現している。

 

熊野古道センターを訪れ、世界遺産・熊野古道伊勢路や同センターの役割について説明を受ける。その後、熊野古道語り部友の会の中井氏の案内で、石畳が続く松本峠を歩く。花の窟神社では、山川宮司より神社について説明を受ける。

 

 

 

3. ニーズを掴んだアイデア豊かな水産業

(1) やる気ある漁師を育成!山あいの漁村が運営する4週間の漁師体験プログラム

ビジョン早田(はいだ)実行委員会 会長 岩本 芳和(いわもと よしかず)氏

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尾鷲市早田町は、約20人で行う大敷(おおしき)と呼ばれる大型定置網漁が盛んな地域。1950年代に700名近かった人口も現在は約160名。高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)は約65%に達する。漁業組合長が自治会長を兼ねる早田町で、約10年前から組合長を務めるのが漁師の岩本芳和氏。町の存続をかけ、基幹産業である大敷を存続させるべく住民は知恵を出し合ってきた。2009年には、岩本氏を中心に「ビジョン早田実行委員会」が立ち上がり、三重大学や行政の協力を得て、町の活性化のため、ウェブを通じた情報発信や女性が働く場所作り等を進めている。取組の一つが4週間にわたる漁師体験・研修プログラム「早田漁師塾」。2012年から4期開講され、これまで8名が参加、そのうち3名は早田町に、2名は近隣の町に漁師として就職・定住している。

DSC00366同塾と同様のプログラムは、近隣の地域でも数日間の短期で実施されていたが、「漁師になるなら、漁村の暮らしも体験してもらわなければ意味がない」と、長期間の日程が組まれることとなった。プログラムでは、網やロープの扱い方、魚のさばき方などの基礎から、船上で網を引き揚げるような応用的な内容まで体験できる。研修終了後の面接では、早田にしっかりと定住してくれそうな漁師の卵を獲得するため、岩本氏らは、漁師をする厳しさを改めて説くことで、本気で漁師になりたい若者を雇用するのに成功している。

尾鷲漁業協同組合早田支所を訪れ、ビジョン早田実行委員会長の岩本氏より、「早田漁師塾」の説明を受ける。現在、早田で漁師として働く同塾の卒業生からは、塾生を経て、漁師となった今の想いを聞く。

 

 

(2) 自社養殖から加工、海外輸出まで!顧客のニーズに合ったブリの販売で売上高を伸ばす水産加工業者

尾鷲物産株式会社 代表取締役社長 小野 博行(おの ひろゆき)氏

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尾鷲物産株式会社は、ブリの養殖から、加工・出荷・販売までを手掛ける従業員200名の企業。2015年度は過去最高の130億円超の売上高を達成する見込みだ。元々はスーパーマーケットの水産品販売の一部門だった同社は、顧客の要望に合わせて魚を仕入れるうちに、更なる調達力をつけようと自社養殖を始めるまでになった。現在では、三重県内のブリの生産量の約9割、2,100トンあまりを生産している(2014年度)。同社は養殖ブリ生産の北限に位置し、ライバルの九州や四国の同業他社と比べ、首都圏や名古屋、大阪などの消費地に近いため、短時間で商品を顧客に届けられることから、スライス加工など、顧客が求める形態に加工して出荷できる強みがある。この強みを活かし、カマ、脂身の多いトロ、背中側など、顧客が必要な部位を・必要な時期に・必要量を加工・出荷している。おかげで、スーパーなどの取引先にとっては作業工程が減り、廃棄物も少なくて済む。このように、従来はスーパー等のバックヤードで行っていた作業を請け負う形で、人手不足の小売業界のニーズを充たしている。

DSC0031910年ほど前から商社を介して冷凍ブリを主に米国に輸出していたが、昨年7月に初めて生鮮養殖ブリの台湾への直輸出を行った。早くから海外への販路拡大を視野に入れていたため、SQFやHACCPという、食品の安全性を確保する衛生管理システムを実践している施設であることを示す国際的な認証は10年ほど前に取得済みだ。サーモン輸出を行うノルウェーの会社に社員を毎年派遣し、輸出ノウハウの取得や加工・養殖の効率化の検討にも努めている。輸出単体ではまだ採算がとれていないが、欧州市場進出に向け、今年中を目処に、加工場にて欧州の基準による審査を受け、欧州輸出に必要な認証を取得する予定だ。

現在、ブリは資源の枯渇の心配はないとされているが、生態系を維持し、持続可能な養殖業を行っていくため、数年前から始まったばかりの近畿大学が行うブリの完全養殖(養殖ブリの卵を孵化させ、飼育すること)にも協力し、陸上で飼育した稚魚を生簀で育て、商業ベースに乗せることを試みている。

尾鷲物産の加工場や生簀を訪れ、ブリの加工ラインや完全養殖を目指すブリの幼魚への餌やり、養殖ブリの取上げの様子を取材するとともに、今後のビジネス展望も聞く。

 

 

(3) 離乳食に三重県産の旬の魚を!異業種に参戦した若手地元出身者たち

株式会社ディーグリーン 代表取締役 東 城(ひがし じょう)氏

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株式会社ディーグリーンは東紀州の最北部、紀北町にあるホームページ制作会社。30代前後の社員5名中4名が、同町出身者だ。同社は、2014年にmogcook(モグック)というブランド名で、離乳食作り用に加工された魚の通信販売という、これまでになかった事業を立ち上げた。きっかけは、東京に住む同町出身の新米パパの「地元の魚を子どもに食べさせられたら」という声だった。同社は、通販という異業種への参入ではあったが、本業のウェブページ制作などで地域の魚屋や水産加工業者との取引が元々あったため、地元の協力を得て事業化できた。通販は月一回の定期配送が中心で、離乳食作りに使いやすいよう、加熱され、骨が丁寧に取り除かれた旬の魚数種類が冷凍された状態で届く。味付けはされておらず、一食分ずつ小分けになっており、地元の管理栄養士監修のレシピ付きだ。魚は地元の目利きが月に一度、三重県の旬の魚を仕入れ、業者が加工している。

DSC00193これまでにもベビーフードや骨なしの魚の切り身は通販で流通していたが、離乳食の材料用に、季節ごとの魚が一回使い切りサイズで販売されているのはモグックが初めてだ。利用者は、東京、神奈川などの首都圏や三重県内にも多く、定期利用者が150~160名、単発利用やバラ売りなどの利用者を含めると毎月合計約200名の利用者がおり、初年度の売上高は毎月70万円程度だ。同社は今後、定期利用者を1,000人に増やしたいとしている。利用者からは、魚の下処理の手間が省けるため、簡単に魚を離乳食に取り入れることができる、様々な魚を食べさせられると好評だ。代表取締役の東氏は今後、離乳食用にとどまらず、子供の成長に合わせた魚の加工品や、魚以外も含む三重県の食材を集めた通販サイトを作りたいとしている。それらの利用者を増やし、売上高を伸ばすことで自社の雇用を増やし、地域を活気づけたり、魚食文化の振興を図りたいとしている。

株式会社ディーグリーン東氏からモグックの説明を受ける。利用者の声として、紀北町在住のお母さんにインタビューをする。

 

 

4. 三重県知事インタビュー

鈴木知事写真

三重県知事 鈴木 英敬(すずき えいけい)氏

鈴木知事は2011年に初当選し、現在2期目を務めている。現在41歳。全国最年少の知事で、2012年には育休を取得したことでも話題となった。
今年5月の伊勢志摩サミット開催を受け、三重県は、同県の魅力を世界に発信し、全県を挙げて取り組むため、官民一体となって構成する「伊勢志摩サミット三重県民会議」を立ち上げた。「開催支援」、「おもてなし」、「明日へつなぐ」、「三重の発信」の4つの柱に基づき、スピード感をもって必要な取組を展開している。

三重県知事に伊勢志摩サミット開催への意気込み等を聞く。

 

 

<実施要領>

1. 日程: 2016年2月17(水)-18日(木)

[1日目]

 7:27-   9:01 新幹線のぞみ205号 品川→名古屋
 9:30- 10:19 近鉄特急 名古屋→津
10:40-12:10 バス移動(昼食含む)
12:10-14:10 速水林業
14:50-15:50 熊野古道センター
16:20-17:20 松本峠
17:30-17:45 花の窟神社
18:00-20:00 夕食懇談
  20:30頃 ホテル着
(熊野市内泊)

 

[2日目]
    7:20 ホテル発→移動
  8:20-  9:20 早田漁師塾
10:00-12:00 尾鷲物産㈱
12:30-13:15 昼食
13:30-14:30 モグック
16:00-16:45 三重県知事インタビュー(三重県庁)
17:47-18:37 近鉄特急 津→名古屋
18:54-20:33 新幹線のぞみ44号 名古屋→東京
(※上記は仮日程です。若干の変更が生じる可能性があります。)

 

2. 参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者

 

3. 参加費用: 1人13,000円(全行程交通費、宿泊費、昼食代を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。

 

4. 募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5. FPCJ担当: 横田(TEL: 03-3501-3405)

 

6. 備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJおよび伊勢志摩サミット三重県民会議はツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

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