プレスツアー(案内)

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実施日 : 2013年10月29日

案内:千葉県プレスツアー「植木職人、伝統の技で世界市場へ」

投稿日 : 2013年10月12日

-日本の植木が各国の富裕層を魅了-
- 東アジア諸国や欧州への輸出で復活した“日本一の植木の町” -

 

 

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 近年、日本からの植木や盆栽の輸出が増加しており、2012年の輸出高は過去最高の81億7千万円。前年比22.1%の伸びを記録している。中国、香港、台湾を始めとする東アジアや、欧州への輸出が中心だ。なかでも、輸出高で日本一を誇るのが千葉県。2012年の千葉県の植木輸出額は、前年に比べ20%増の33億8千万円。日本からの総輸出高の41%を占める。

 

 

 

 2千葉県は、専門の職人が高い技術を駆使し、木の枝振りや葉の付き具合をデザインして作り上げる「造形樹」の産地として名高い。

海外で求められているのは、まさにこの日本独特の伝統の技だ。木の生命力を奪わない絶妙の加減で、枝に刃物で切り込みを入れ、枝の伸びる方向を自在に操ってうねりを形作っていく。余分な枝や葉を取り除き、時に繊細に、時にダイナミックにラインを表現していく。「造形樹」は、生きている木を相手に作り上げる、彫刻にも似た芸術なのだ。

 特に中国市場では、経済成長を背景に、マキの木の「造形もの」が人気だ。マキの木は中国では「羅漢松」と呼ばれ、幸せを呼ぶ縁起物とされている。職人技によってうねった枝がまるで龍のように見えるとして富裕層に珍重されているのだ。千葉には中国の業者が続々と買い付けに訪れている。また、欧州でも、日本式庭園を持つ富裕層を中心に植木需要が拡大。イタリアやオランダなどではツゲやキャラなどの小・中型樹も、「Macro Bonsai」として親しまれている。

 

 

3 バブル崩壊後、日本国内では植木の需要が急激に低下した。さらに、住宅の洋風化が進み、日本庭園を持つ家が減少。「造形樹」の人気も落ちた。一時は千葉でも植木産業全体が低迷の一途を辿り、生産をやめる事業者も多く出た。しかし、近年海外からの需要が増え始め、地場産業が徐々に復活。若い世代のなかにも、後継者として植木の伝統の技を受け継ごうという人々が出て来た。「造形もの」の植木は、一朝一夕にできるものではなく、少なくとも一本完成させるまでに10年はかかる。また、市場で取引される植木の平均的な樹齢は30年~50年で、なかには樹齢数百年のものもある。植木は、世代を超えて受け継がれていく文化なのだ。

 輸出で産業が活性化したといっても、そう簡単だった訳ではない。生きている木の輸出には各国が定めた検疫条件をクリアする必要がある。千葉県では、行政と事業者が一体となり、害虫対策や、海外への長期の輸送に耐え得るための根のケアなど、ノウハウを確立してきた。

 

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✓本プレスツアーでは、日本一の植木輸出高を誇る千葉県のなかでも造形樹で有名な「日本一の植木のまち」、匝瑳市を訪問。世界で引っ張りだこの凄腕植木職人の技や、輸出量日本一の事業者を取材。さらに伝統を受け継ぐ若手の職人にも話を聞く。また、輸出の際の検疫に向けた害虫対策が現場でどのように行われているかも視察する。**********************************************************************************************************************

 

※本プレスツアーは千葉県が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。

 

 

取材内容 】

 

1.千葉県 農林水産部による概要説明  

マキ根洗・ピートモスで鉢上げ-34~輸出増加で地場産業が復活。検疫に向けた独自の害虫対策を確立~

千葉県では、行政として輸出拡大を下支えするために各国における検疫への対策を調査してきた。欧州(EU圏)では、国外から進入した線虫は自国農業に悪影響を及ぼすとして、輸入植木の検疫を厳格に実施している。過去には、輸出した植木の土から線虫が検出され、コンテナ丸ごと廃棄されたり、返送処分を受けたことも。船賃を含めて1000万円もの損害が出たケースまであったという。そこで、千葉県農林総合研究センターでは、土が付着した植木の根を専用の農薬に漬け、線虫を効果的に駆除する技術を実用化した。また、中国を始めとした多くの国では、根に土が付着したままの植木の輸入を認めていないため、その対策として、根の土を水で洗い落とし、土の代わりに世界中に流通している「ピートモス(コケ由来の園芸資材)」を根に巻き付ける技術も確立した。県は、こうしたノウハウを事業者に広め、商品性をより高めることで、地域のブランド強化につなげていく方針だ。

◎千葉県 農林水産部より、千葉県の植木産業の概要、輸出の推移、海外での販促活動について聞く。日程後半に「共種園」で実演を視察する害虫防除対策についても説明を受ける。

植木根洗1(センター概要)1-34 56'

 

 

2.石橋農園 伝統樹芸士 石橋誠さん(55歳)

~世界の人々を惹きつける職人技~

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石橋誠さん(55歳)は、千葉県匝瑳市で江戸時代から続く植木生産者の5代目当主だ。中国や欧州向けの植木の栽培も手掛けているほか、その職人としての腕を買われ、欧州にまで日本庭園の手入れに招かれたこともある。また、訪れる国々で、現地の園芸家に教えを請われることもしばしばだ。現在は、千葉県植木生産組合連合会 輸出入部会の副部会長を務めており、2012年にはオランダで開催された国際園芸博覧会「フロリアード」の日本ブースで剪定を始めとする日本伝統の技を見せるデモンストレーションを行った。今年も、ウクライナでの植木販促イベントでその技を披露。どこに行っても現地の人で人だかりができ、注目の的になる。石橋さんは、「色々な国に行って技術を評価して貰えるのは幸せなこと」と語る。様々な品種の木の性質を知り尽くしたうえで、持ち味を生かしつつ、幹や枝の形を作っていく職人の技は経験と感覚がものを言う。頭に描くイメージを基に、成長していく木を相手に、10年以上もの歳月をかけて独特の美を作りあげていく。何世代も前の先祖が植えた木を今売る、ということもある。ベテランの石橋さんでさえ、「80歳まで植木屋をやっても全ての技を習得できる訳ではない」というほど、奥の深い世界なのだ。「一本の木の価値が、職人の腕次第で決まる。必ずしも人間の思った通りの形になる訳でもない」とその醍醐味を語る。その道37年のベテランとして、石橋さんは、長年培った技や知識を地域の若い事業者に伝えている。

◎本プレスツアーでは、石橋さんの植木畑を訪れ、輸出向けに育てられている植木や、松の剪定の実演を視察する。

 

 

3.鵜殿造園 伝統樹芸士 鵜殿忠芳さん

~木と会話しながら造形施す、“千葉県植木伝統樹芸士”~

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植木産業を支える伝統的な職人技は、地域の貴重な宝だ。千葉県では、これを保存し、継承していくため、優れた技術を有する生産者を「植木伝統樹芸士」として認定している。現在、認定を受けているのは48名。そのうち「ノミ入れ」と呼ばれる、枝に切り込みを入れてねじって枝振りを形づくる技法の名手が鵜殿さんだ。植物に刃物を入れ、それでも枯れないようにする非常に難しい技だ。それぞれの木の特質への深い知識と、経験に裏打ちされた研ぎ澄まされた感覚が必要だ。鵜殿さんは、「好きでないとできない仕事。でも自分の感性を発揮できて面白い。まだ手を入れていない木を見ると、数年後にどのような形にすべきか木の方から教えてくれ、イメージが広がる。毎日木と話しながら仕事している」と話す。輸出用の植木も多く手掛け、「中国市場と欧州市場ではお客さんの好みも違う」という。元々の原木の特性を生かしつつ、その美しさを引き出す造形を施し、価値を高めている。

◎鵜殿さんの植木畑を訪れ、「ノミ入れ」の技を見ると共に、輸出用植木の栽培について聞く。

 

 

4.伝統を受け継ぐ、若手生産者

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~海外需要で後継者にも希望~

萬樹園 4代目 佐藤洋一郎さん(38歳)

・(株)観賞園緑化 6代目 佐藤芳男さん(37歳)

・石橋農園 6代目 石橋年樹さん(19歳)

少子高齢化の日本では、第一次産業の担い手が慢性的に不足している。匝瑳市の植木産業においても後継者不足が問題だ。しかし、近年の輸出増加により、業界全体が活性化し、後継者として伝統的技術を受け継ぐ若者も出てきている。ビジネスとしての光も見えきたことで、若い世代も意欲が増したのだ。1994年に19歳で家業に入った萬樹園 4代目 佐藤洋一郎(38歳)さんは、「親の期待に応えて家業を継ぐことにしたが、当時はバブルが弾けてどんどん景気が悪くなっていった。周囲の同業者の数も減っていき、25歳頃は本当に悩んだ。しかし、8年程前から中国からの需要が増え、徐々に希望が見えてきた。日本国内の市場では、職人の技が必要な「造形樹」は流行らないが、海外には欲しがっている人が沢山いる。お陰で、仕事が楽しくなった」と話す。同世代の後継者である、(株)観賞園緑化 6代目 佐藤芳男さん(37歳)も、社長である父親に代わって会社の中心的な役割を果たしている。シンガポールや中国にも植木の手入れに赴き、グローバルに活躍しているのだ。彼らは次の展開として、中国、ヨーロッパに加え、ウクライナや東南アジア市場にも目を向けているという。

◎次世代を担う、30代の若手植木職人に話を聞き、伝統を受け継いでいく想いや、今後の世界市場に向けた展望について聞く。(※3.の石橋農園に若手に集まって貰い、石橋さんへの取材と併せて話を聞く。)

 

 

5.()共種園 社長 江波戸 光一さん(34歳)

~植木の海外向け出荷量日本一の企業~
http://www.kyoshuen.com/export.html 

http://www.kyoshuen.com/ch/about.html (中国語)
10有限会社共種園は匝瑳市でもいち早く海外輸出を始めたパイオニア的存在。娘婿として家業を継いだ4代目の江波戸光一さん(34歳)が、2004年から中国向けビジネスをスタートさせ、その後、台湾、韓国、ベトナム、欧州にも植木や盆栽を輸出。現在は同社の取引の9割が海外向けを占める。2012年には平均5~6本の植木を詰め込んだコンテナ約1000個を輸出。従業員数8名ながら、海外向けの出荷量は日本一だ。輸出価格は樹齢30年で1本30万~50万円ほど。一級品になると1本1000万円を超えることもあるという。江波戸さんは、「外国にもマキの木は生えているが、日本の植木職人の伝統的な技は、他では見つからない独特のもの。日本人にとっては身近過ぎて特別に感じないものも、海外での評価は非常に高い」と語る。植物の輸出に際しては、検疫以外にも多くの知恵が必要とされる。送り出す際の日本の気候、各輸出先の温度や湿度、輸送に要する期間など、様々な条件に合わせてケアを行うのだ。欧州向けの場合は、コンテナに積んでから長い場合は35日間も水も日光もない状態で植木が運ばれることもある。その間に枯れたり傷んだりしないよう、試行錯誤の連続だという。中国との取引が特に多い江波戸さんはビジネスの場で中国語を使いこなしている。また、昨年は中国人スタッフも採用した。

◎共種園を訪れ、輸出ビジネスの現状や今後の展望について聞くと共に、検疫対策として植木の根の処理を行う様子を実際に視察する。

 

 

6.千葉県植木銘木100選

11~樹齢500年、職人一家を見守る日本一のマキの木~

千葉県では、伝統的技術で造形された品位と風格のある植木を「植木銘木100選」として認定する事業を行っており、現在、65本が銘木として登録されている。なかでもひときわ見事なのが(株)観賞園緑化が保有するマキの木。値段の付けようがないほど価値がある日本一のマキの木だ。5~6代前のご先祖様がこの地に植え、代々大切に受け継ぎ、造形を施してきたものだ。佐藤家を見守り続けるこの木は、一家の誇りだ。

◎ツアーの締めくくりに、佐藤芳男さんの案内で「日本一のマキの木」を視察する。

 

 

【 実施要領 】

 

1.日程案: 2013年10月29日(火)

09:00-10:30 (1h30m)   移動:都内→匝瑳市(90分/借り上げバス)
10:30-11:30 (60m)    千葉県/匝瑳市関係者による概要説明
11:40-12:25 (45m)    昼食
12:35-13:50 (1h15m)   石橋農園 伝統樹芸士 石橋誠さん
                     若手後継者3名:
                     ・(株)観賞園緑化 6代目 佐藤芳男さん(37歳)

                     ・萬樹園 4代目 佐藤洋一郎さん(38歳) 
                     ・石橋農園 6代目 石橋年樹さん(19歳)
14:00-14:30 (30m)    鵜殿造園 伝統樹芸士 鵜殿忠芳さん
14:40-15:25 (45m)    共種園 (有)共種園 江波戸 光一さん
15:30-16:00 (30m)    千葉県植木銘木100選/(株)観賞園緑化
16:00-17:30 (1h30m)   移動:匝瑳市→都内(90分)

(※上記は仮日程です。若干の変更が生じる可能性があります。)

 

2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費用: 1人1,500円(全行程交通費、昼食代を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。

 

4.募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5. FPCJ担当:吉田(TEL: 03-3501-3405)

 

6.備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)千葉県、FPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

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